日本の革工房エムピウ。機能性の高いユニークな財布を作り続ける、お気に入りのブランドです。
そのエムピウから2015年に発表された『ストラッチョ(straccio)』は、エムピウの中で最小の財布です。
まずは特徴をピックアップしてみましょう。
- 日本最小クラスの財布
- コインが使いやすい
- オールレザー
- 丈夫で、何年も使える
- 色・ツヤが変化するエイジングを楽しめる
- 安価
- メイドインジャパン
本ページでは50以上の「小さい財布」を使ってきた経験を活かし、ストラッチョの使い勝手、特徴、メリット・デメリットをわかりやすく解説します。
小さな財布をお探しの方は、ぜひ参考にしてみてください。
2018年3月。ストラッチョゴートモデルの制作終了が発表されました。一部店舗でのみゴートモデルが販売されています。
2021年8月。ストラッチョゴート2としてリニューアルされました。
スペック
ブランド | エムピウ |
---|---|
商品名 | ストラッチョ |
収納力 | ★★☆☆☆ |
お札入れの数 | 1 |
お札の枚数 | 10 |
コインの枚数 | 15 |
カードの枚数 | 5 | サイズ | W102×D68×H15mm | 重さ | 30g |
素材 | タンニンなめしゴート(山羊) |
参考
2022年、ストラッチョは様々な革でラインナップされています。
- ゴート2
- ミネルバリスシオ
- ブッテーロ
- スペリオーレ
モデルによる違いは、革と機能、仕立ての美しさです。スペリオーレは機能も優れています。詳細は以下のページをご参照ください。
動画
ストラッチョの使い方が分かるように、動画にしてみました(動画はブッテーロモデル)。
ブッテーロとスペリオーレの違いの解説です。
全モデルの質感を比べてみました。
とてもコンパクト。必要最低限の財布
「これだけでもひと通り使えるよね」という、最低限・最小限の財布。エムピウのデザイナー、村上氏が考えたストラッチョのコンセプトです。
ストラッチョは、カードサイズ大。日本でもっとも小さな財布の1つです。
商品名のストラッチョは「端切れ・ぼろ切れ」転じて「存在感が希薄な」といった意味。「気軽に持ち歩ける」を目指した財布です。
ストラッチョに最適なシチュエーションは、以下のとおり。
- 登山
- バーベキュー
- 社内での自販機
- ちょっとした買い出し
こういった用途では「財布のすべての機能」は必要ないはず。たくさんの収納よりも「身軽になれること」の方が、ずっと大事です。ストラッチョは「身軽さ」「気軽さ」といったライフスタイルを実感できる財布です。
カタチ・構造
ストラッチョは一般的な財布とは異なる、ユニークな財布です。本章ではカタチ・構造について解説します。
とてもコンパクトで、手にスッポリと収まるほどのサイズ感。いわゆる「小さい財布」にカテゴライズされるお財布です。
山羊革(ゴート)で作られたボディは、しなやかで柔らかく、手に馴染む感触。
ぐにゃりと曲がる質感は新鮮。触っていて気持ちの良い素材です。ニギニギするとカタチが変わるのですが、天然素材である革のハリはしっかりとあって、握るのを止めると元のカタチに戻ります。
ストラッチョはさまざまな革でラインナップされていますが、どの革でもカタチや構造、サイズは同じです。革によって、表情、質感、コシの強さ、エイジングなどが異なるのですが、ここは好みで選ぶとよいでしょう。(赤いストラッチョは、ブッテーロモデルです)
お金やカードを入れてもコロンとした丸みのあるフォルムになる。横からみるとフラットなパーツの上にカーブが生まれているのがわかりますね。
シングルホックで留まるデザイン。カーブを描く部位を上にして開きます。
カーブの部分に指を添える。
パチンと、開けやすいです。
ストラッチョは「カードが使いやすい財布」です。なぜなら、財布を開くとカードだけが取り出せる状態になるからです。
コイン、お札を使うときは、この状態からもう一段階開きます。ストラッチョは、三つ折り構造の財布なのです。
コインポケットの奥手には、お札の収納スペースがあります。
使い勝手
カード
財布を開くと、カードがすぐに目に入ります。
カードポケットは1つだけ。まとめて入れる、シンプルなつくりです。
厚めのカードでも5枚ほど収納できます。最初は少しキツイと感じますが、革が少しずつ馴染むため、スームズに出し入れできるようになります。
ストラッチョに限らず、ほとんどの「小さい財布」は、たくさんのカードを収納することはできません。どれも5枚ほどです。
ちなみに、コインポケット(後述)にもカードを収納できます。コインを持ち歩かないなら、「お札も入る、小さなカードケース」としての使い方もできます。
コインポケット
コインが使いやすいです。ポケットが開きやすくてコインを入れやすい。
コインポケットには「受け皿」となるフラップが付いていて、財布を折りたたむことで、コインがこぼれ落ちないようになります(ボタンで完全密封する構造ではない)。
コインの出口を地面に向けて財布をオープンすると、当然コインは落ちてしまいます。ただ、これはあまり気にしなくてよいでしょう。財布を開けるときにはコインポケットが上を向くようにデザインされているからです。私はトータル3年以上使っていますが、コインを落としたことはありません。
コインポケットには、100円玉を15枚ほど収納できます。ストラッチョ以外の「小さい財布」と比べると、収納力に優れています(例えば、小さい財布abrAsusは10枚ほどです)。
ただし、たくさん収納するのはオススメできません。マチのないポケットですから、コインが多いと選別が難しい(使い勝手は悪くなってしまう)。
また、コインが増えると、財布は重く、大きくなってしまいます。ストラッチョの醍醐味は、小さくて軽くて、快適なこと。これを実感したいなら、たくさんのコインを詰め込まないほうが良いでしょう(お会計時に、小銭を出してコインを減らす)。
ちなみに、小銭入れには、カードを入れることも可能です。コインを入れないなら、プラス2,3枚のカードを持ち歩くことができます。
お札入れ
ほとんどの「小さい財布」は、お札を手折りして入れることになります。折りたたむのも、伸ばすのも時間がかかるため、お金を使うシーンで煩わしく感じるかもしれません。
一方、ストラッチョはお札をそのまま差し込んで、くるりと留めるだけ。わざわざ、お札を折らなくても収納できるので、とてもスムーズです。
ガバッと開くため、取り出しやす行く、入れやすいです。
さて、ストラッチョの札入れは「革の裏面」になっています。少しザラつきのある質感で、お札を留めるストッパーの役割を果たします。ガバッと開いたときにお札が飛んだり、落ちたりしません。安心感がある。一方で、触り心地のなめらかさ、お札の滑りの良さ、高級感は「革の表面」が使われた財布に及びません。
革を張り合わせると「革の表面」の財布もあります。ただし、手間がかかるため値段もアップします。ストラッチョはシンプルな構造にすることで、1万円以下のプライスを実現できる。あえて革張りしないデザインなのです。(写真は「小さい財布abrAsus」。革が貼られています)
なお、「ストラッチョ スペリオーレモデル」は内側にもすべて「革の表面」が使われた贅沢仕様です。高級感や機能性(お札の出し入れのしやすさ)を求めるなら、スペリオーレを選んだほうが良いです。
小さくて、高級感のある財布をお探しなら、スペリオーレモデル。あるいは、小さい財布abrAsusやハンモックウォレットコンパクトをセレクトした方が、幸せになれるはずです(お値段も上がってしまうのですが)。
最大収納したときの使い勝手
ストラッチョの公式スペックは、カード5枚、お札10枚、コイン15枚です。これらを収納しても小さくまとまるのがストラッチョの凄いところ。
当たり前ですが、たくさん収納すると大きく、重くなります。
コインをたくさん入れると中央が膨らみますが、
カード収納側はフラットなまま。
横からみると、少しカタチが崩れてしまいますね。
これは見た目の変化であり、使い勝手には影響しません。
参考:エムピウ ゾンゾ(zonzo)との比較
エムピウは「お札、コイン、カードを収納できる小さい財布」、「ゾンゾ」もラインナップしています。ストラッチョの収納力は、エムピウのゾンゾと同じ。
では、ストラッチョとゾンゾは、何が違うのか?
ストラッチョとゾンゾとの違いを解説します。
ゾンゾはミネルバ・リスシオという革を、内側のパーツにも贅沢に使っています。高級感・質感ともにストラッチョよりも圧倒的に上です(お値段もゾンゾが高価)。
ゾンゾはファスナータイプですから、よりしっかりと持ち歩きたい人向けです。財布をカバンの中にてきとうに入れても、落としても、ファスナーで閉じられているので中身が飛び出すことはありません。ただし、ファスナーを開け閉めするのが、面倒に感じる方もいるでしょう。
一方、ストラッチョはボタン1つで留める財布。ファスナーよりも開け締めがかんたんですから、ストラッチョの方がよりスピーディーにお金やカードにアクセスできます。サイズは少し小さく、重さもゾンゾの1/3ほどです。
まとめると、ストラッチョは、ゾンゾよりも気軽に持ち歩けて、サッと使える財布ということです。
特徴
柔らかく小さなボディは、どんなポケットでも快適
ストラッチョが発売されたのは、2015年。既にSUPERCLASSICの小さい財布abrAsusなどがあったわけです。
そんな中、どうして小さい財布を、新しく作ったのでしょうか?
エムピウが作るものは、既存のものとどこか違うはずです。
ストラッチョ ゴートモデルの特徴は、財布の素材にあります。グニャグニャと、とてもやわらかいのです。
これによって、どういうメリットがあるのでしょうか?
このサイズの財布だと、後ろポケットだけでなく、前ポケットにも入れることができます。
ポケットにモノを入れたとき、座ったときに、つっぱり感や、ポケットから出すときの引っ掛かりを感じることがあるはず。これがけっこう、ストレスです。
「ぐにゃりと曲がるボディ」によって、この不快感がグッと減るのです。
これはストラッチョゴートモデルだけの醍醐味です。(他の小さい財布は、ストラッチョのような柔らかい素材ではありません)。
一般的に、財布はお金やカードをしっかりと固定させる必要があるため、カッチリとした素材で作られています。一方、ストラッチョはカードやコインの硬さによって、カッチリとしたフォルムに変わります。
シンプルなデザイン
お金とカードを、ひとまとめにできること。この機能を、もっともシンプルに仕上げたのがストラッチョです。
余計な装飾は一切ありません。革の表情をダイレクトに楽しめる。天然素材の美しさが映えるようにデザインされています。
エムピウのブランドロゴさえ、目立ちません。内側に、ひっそりと型押しであしらわれているだけ。優れた製品には、ブランド名もいらないのかもしれません。
豊富なカラーラインナップ
エムピウの財布はカラーリングの多さも特徴です。ストラッチョも6色のカラー展開をしています。
ストラッチョのデメリット
薄い素材とシンプルすぎるつくりは、高級な財布には見えません。素材が悪いわけではなくて、コンパクトさと相まって、そう感じてしまうんですね。ストラッチョを知らない人が見ると、財布さえ見えないでしょう。
もっとも、このチープさは、ストラッチョのコンセプトを考えるとしっくりきます。安価なプライスも相まって、多少乱雑に扱ってもよい気持ちになる。だからガシガシ使える。気軽に持ち歩くのにふさわしい財布なのです。
エイジングを楽しめる革
素材は、タンニンなめしゴート(山羊)。
タンニンでなめされた革は、時間がたつと色味が深くなっていきます。
使い込むほどツヤが増し、色が深くなる「育つ革」です。エイジングを楽しみたい人にとってオススメの素材です。
逆に言うと、新品のときの色合いがずっと続くわけではありません。
革の変化を楽しみたい人にこそ、オススメできるアイテムなのです。
参考:革のエイジングとは何か。
リーズナブルな価格
価格は4,500円(税抜き)。
ストラッチョと同様の収納力をもつ「小さな財布」は、他にもあります。上質な小さい財布をピックアップは以下ですね。
これらに比べると、ストラッチョは手が出やすいお値段です。
ストラッチョ、各モデルの違い
ストラッチョは複数のモデルがラインナップされており、それぞれ素材、機能が異なります。全モデルを使用してきたユーザの視点でそれぞれの違いをご紹介します。あなたにぴったりのストラッチョを選んでください。
まとめ
定番のモデルの特徴をまとめます。
素材 | 機能 | 重さ(※) | 価格 | クオリティ | |
---|---|---|---|---|---|
ゴート/ ゴート2 |
山羊革 染料・顔料 タンニンなめし |
★★ | 30g | 5,500円 | ★ |
リスシオ | 牛革 染料 タンニンなめし |
★★ | 45g | 88,00円 | ★★ |
ブッテーロ | 牛革 染料 タンニンなめし |
★★ | 45g | 88,00円 | ★★ |
スペリオーレ | 牛革 染料 タンニンなめし |
★★★ | 40g | 14,300円 | ★★★ |
※重さは公式スペックから引用。個体差があります。たとえば私のゴート2は31g、リスシオは39g。
ゴートモデル
もっとも安価なのがゴートモデルです(本ページで紹介しているもの)。グニグニとやわらかな質感の触り心地を楽しめる唯一のモデル。
発色が良く、シボも均等で綺麗ですね。使っているうちにストラッチョが曲がってシワになることもありますが、ゴートは最初からシボがあるためシワが目立たないです。
ミネルバリスシオ/ブッテーロ
イタリアのオイルレザー、ミネルバ・リスシオを使ったモデルと、ブッテーロを使ったモデルです。
black・red・blueの3色がブッテーロ。
その他のカラーがミネルバリスシオです。
どちらも、ゴートモデルより、ハリが増してカッチリとした質感。
どちらもたっぷりとオイルを含んだ革で、色の深まりとツヤを楽しむことができます。特にミネルバリスシオは、グングンとエイジングが進む(1ヶ月の使用で明らかに変化します)。半年ほどで見違えるほどの表情に変わっていきます。もっともエイジングが早く進みます。
ブッテーロは、ミネルバよりもさらにハリのある素材です。ちなみに、ストラッチョだけでなく、10年以上愛用している大好きな革。
以下は300日以上経過したストラッチョ ブッテーロのred。ミネルバよりエイジングはゆっくりめ。ツヤが出てますね。色も深まっています。なお、色の変化を楽しみたいならblackは避けましょう(ツヤは出ますが、色の変化はわかりにくい)。
透明感も生まれてくる。なお、使い込んだブッテーロは、新品のミネルバリスシオモデルよりもハリが強く残っています。
では、ミネルバリスシオとブッテーロ、どちらを選べば良いのか?
質感でチョイスするならブッテーロモデルを。柔らかい革が好きならミネルバリスシオを。かっちりとした革が好きならブッテーロを選ぶことをおすすめします。
ストラッチョ スペリオーレ
2018年4月に発表されたモデル。他モデルより高価ですが、美観・機能がもっとも優れています。機能面では、お札、カード、コインが他モデルよりも使いやすいです。
素材はミネルバリスシオ。イタリアのオイルレザーです。
まず、より上質な仕立てになっています。少しご紹介しましょう。
スペリオーレ以外のモデルは「革の裏面」を使っているため、毛羽立っています。お札が引っかかる感じ。
スペリオーレでは、革の表面が貼られました。お札の滑りがよくなっています。
カードポケットも改善されています。ポケットに直接ホックがつけられているため、カードを入れるときに引っかかることがあります。
すペリオーレは、小さなフラップにホックが付けられています(カードポケットの中にホックの金具がない)。カードが入れやすくなっています。
コバもスペリオーレだけは、塗料を塗って仕上げられています。より上品な仕上がり。(左がミネルバリスシオ、右がスペリオーレ)
スペリオーレ(superiore)とは、イタリア語で「上質、上位」を意味します。その名のとおり、他のモデルより、機能性がアップし、高級感にあふれたモデルです。
手間をかけたぶん、高価になっています。お値段とのトレードオフですね。
ストラッチョ クロコ型押しモデル
牛革に型押しすることで、クロコ柄をあしらったものです。凹凸が生み出すエキゾチックな表情を楽しみたい方におすすめです。藤巻百貨店限定のモデルで、数量限定です。
ストラッチョ クロコダイル
蔵前の店舗にて「クロコダイル」を使ったストラッチョが販売されています。数量限定。最高価格のストラッチョです。
ストラッチョ コードバン
蔵前の店舗にて「コードバン」を使ったストラッチョが販売されています。こちらも数量限定だそう。
美しいパッケージ
エムピウのパッケージは、何年も変わっていません。
クシャッとしたシワ模様が入った、シンプルな黒い箱。カッチリとした紙でできていて、マットでサラリとした質感。
ストラッチョのためにデザインされたパッケージは、とてもコンパクト。ストラッチョがスッポリと収まるサイズ感です。
パッケージはそこそこの高級感と、特別感があります。捨てずに、ずっと持っていたくなるはずです。
まとめ
ストラッチョは日本最小クラスの財布です。
小ささと、気軽に扱える価格からレジャーなどでサブとして使うシーンでも最適。リーズナブルな価格だからこそ、ラフに扱えるのもストラッチョのメリットかもしれません。
ここで1つ、使い方の提案をしてみます。
ストラッチョに入れるのは免許証、Suicaとコインだけ。必要最低限を入れておいて、メインの財布と一緒に持ち歩くのもおすすめです。軽くてコンパクトですから、気軽に持ち歩ける。フル機能が必要なら2つを持ち歩き、ちょっとした買物ならストラッチョだけで事足りるはずです。
参考リンク
もっとエムピウの財布が見たい方はこちらもどうぞ。
ユニークなエムピウの財布をまとめた記事です。