点と線のコンパクト財布、『usuha3』をご紹介しましょう。
usuhaの正式ナンバリングです。usuha2からのアップデートを期待してしまいますね。
ではusuha3は、usuha2より優れた財布なのでしょうか?
本ページではusuha3を使ってみての、使い勝手、特徴、メリット・デメリットについて分かりやすく解説します。
usuha3の特徴
- 最小クラスの二つ折り財布
- お札が使いやすい
- 高級レザー、レーデルオガワ社のコードバンを使用
- コードバンだけで作られた財布
スペック
ブランド | 点と線 |
---|---|
商品名 | usuha3 |
収納力 | ★★★☆☆ |
お札入れの数 | 1 |
お札の枚数 | 10 |
コインの枚数 | 15 |
カードの枚数 | 5 | サイズ | W88×H85×H13mm | 重さ | 27g |
素材 | レーデルオガワ社コードバン |
本ページのusuha3は、革工房「点と線」さんから試供いただいたサンプルです。製品版は変更が加えられる可能性があるとのこと。ご承知おきの上、参考になさってください。
※クラウドファンディングでの販売は終了しています。今後一般販売されるかもしれません。
カタチ、構造
手のひらに収まるサイズ感。いわゆる「小さい財布」にカテゴライズされる財布です。
二つ折り財布では最小クラス。三つ折りと比べると、ストラッチョやabrAsusの方が小さいです。ただし、usuha3の方が薄い。
素材はレーデルオガワ社のコードバン(詳細は後述)。カラーはワインを選びました。
usuha3は薄くスライスしたコードバンを使っています。さらに革の重なりも少ない。
コードバン製品は30以上所有していますが、それらと比べてusuha3はもっとも薄い。パーツによって厚みが異なりますが、外装は0.6〜0.7mmほど。とても華奢に感じます。収納していない状態ではフラップが自立せず倒れます。ここは好みが分かれるところでしょう。固さ、丈夫さを求めるなら、usuha3は合わないかもしれません。
なお、お札を数枚入れるとハリが生まれます。フラップが倒れにくくなります。
以下は指で抑えていないフォルム。コードバンは固く、ハリがあるため、ボテッと膨らみます。ただ、使っているうちにペタンと薄くなっていくはず。
見た目はusuha2とは大きく異なります。
usuha2は箱型のフォルムを堪能できる財布です。造形的な美しさがありました。
一方、usuha3は「薄さ」を優先したデザイン。箱型ではなくなりました。カタチのユニークさが無くなったように感じます。usuha2やusuha-miniをお持ちでしたら、はかなり違う印象を持つはず。好みが分かれるところでしょう。
サイズはusuha2より小さく、薄くなっています。
そして、非常に軽量です。usuha2も小さくて軽く、優れた携帯性がありました。usuha3はさらに軽く、小さくなりました。最小、最軽量の二つ折り財布といえます。
小さな革のフラップがあります。
反対側には差し込む穴
フラップを差し込んで、留めるデザインです。usuha3は薄さを優先しているため、ホックやファスナーを採用しなかったのでしょう。
開くときは、フラップ側を上げるだけで良い。スルッと抜けて開きます。スムーズです。
閉じるときは、ボディを握ることで、usuha3は「くの字」に曲がります。つまり、コードバンを曲げる必要がある。これは気になる人もいるはずです
フラップに取り付けれた留め具を、穴に差し込むようにコントロールします。思ったとおりに、ハマらないことがあります。
なお、フラップを持って、差し込むように留めると、フラップ側にシワが入るため、これは避けた方が良いでしょう。
usuha2の方が、革を「いたわって」閉めることができるし、閉じやすいです(開けやすさはusuha3の方が良い)。usuha3は素材と仕立ての都合で、採用できなかったのかもしれません。
さて、内部の構造です。
下部がカードポケット。
その上部がコインポケット。
奥手がお札の収納スペースです。
使い勝手
カード、お札、コインの使い勝手を解説しましょう。
usuha2とどちらが優れるのか?
結論から言うと、お札の出し入れのしやすさと、開きやすさはusuha3が優れます。
カードの出し入れはusuha2の方が快適です。
カード
usuha3はプラスチックのカード5枚を収納できます。エンボスの有無や、カードの厚みによって、多少枚数は前後するでしょう。なお、クオカードや、名刺サイズのカードは収納できません。
カードを普通に入れようとしても、入り口の方が小さいため入りません。
カードポケット上部のコインポケットを握ることで、カード収納部が開き、出し入れできるギミックになっています。
収納するとコインポケットのサイドでカードがロックされ、閉じ込められます。傾けても、振っても、カバンの中で逆さになってもカードが出てくることがありません。
abrAsusなどは、カードの収納枚数を固定化してカードが抜けないように調整する必要がありました。カードを4枚→1枚と収納量をへらすと、傾けたときに抜け落ちることもありました。usuha3なら1枚でもカードが抜けることがありません。
その代わり、取り出すときに「握る」アクションが必要です。
引き出すときは、ギュッとポケットを押し込む。ポケットがカードのフチに乗り上がります。
これでカードを引き出すことができます。このギミックはusuha3がオリジナルでしょう。指を添えやすいように切り取られたカーブラインも機能的です。
なお、カードを出し入れするときに指でプッシュすると、ボディ背面のコードバンも曲げることになります。この操作に限りませんが、usuha3は全体的にコードバンに負荷をかけるアクションが多いです。高価ですから気になる人もいるでしょう。使っているうちにカタチが変わるため、気にならなくなるかもしれませんが、新品のルックスを保ちたいならusuha3は合わないかもしれません。
出し入れするたびに、コードバンとカードが擦れます。ここも気になる人は気になるかな。コードバンのフチが染料で黒く塗られているのだけど、色が落ちてくるかもしれません。
カードを取り出すときは、扇形にも開けるそうです。ただ、選びやすいとは感じません。複数枚から選択するときは、カードをずらして選んだ方使いやすいです。よく使うカードは1枚目か、再背面にしておきましょう。狙って取り出せます。
収納するときは、取り出していないカードが収納されているため、カードを差し込みやすいです。
usuha3を閉じた状態で、コインポケットをプッシュするとカードを選ぶことができます。カード決済するなら、クレジットカードを出してお会計することもできますね。こちらはusuha2のほうが取り出しやすいと感じました。
まとめます。
usuha3でカードのギミックが変更されたわけですが、usuha2の方が快適に使えます。また、収納量はusuha2が上です。usuha3はカード5枚までですので、6枚以上持ち歩きたいなら、usuha2を選びましょう。
コイン
カードポケットの上部に位置します。小さなフラップが前後に付いていて、傾けたときにコインが落ちにくいようになっています。収納量は15枚ほどが使いやすいと感じるMaxです。もう少し入るけど、使いにくくなります。
カードポケット側に、大きく穴が空いています。コインは落ちません。また、内装はコードバンの裏面が剥き出しで、見た目がイマイチに感じる人もいるでしょう。ただ、これにより薄く、柔軟に稼働できるメリットがあります。
usuha2は内側にも「革の表面」が使われていて、美観が良かった。耐久性においても優れています。usuha3では薄さと柔軟性に舵を切ったということでしょうか。使い勝手と美観のトレードオフだと思いますが、好みが分かれるかもしれません。
フラップで覆われるため、usuha3を開いたときはコインが見えないのですが、両サイドを握ることでガバッと開きます。
コードバンの裏面は染色されていないため、コインが見やすい。ポケットがぐにゃりと動いて出し入れしやすい。使いやすいです。
お札
usuha2より使いやすくなりました。仕切りが1枚減ったため、お札が大きく見えるようになりました。
指の添えやすさもUp。スライドして出し入れしやすいです。
usuha3は、お札を手前に一旦取り出すことができるようになりました。お札が立つため、数えやすくなります。
この使い方ですと、お札を曲げて、フラップに差し込む必要があります。
コードバンの裏面はスムースとは言えません。繊細に起毛している程度ですが(革の表面と比べて)お札の滑りが良いとは言えません。なお、コードバンの裏面はダメージを受けやすいです。ひっかきキズで毛羽立ちができると、スムーズな出し入れに影響を与えるかもしれません。ここは使い込んでみて検証したいと思います。
似たような構造の財布は、他にもあります。それらと比べて、usuha3は入れやすいです。
最大収納時の使い勝手
カード5枚、お札10枚、コイン15枚を入れてみました。これが使いやすいと感じる上限です。これ以上入れると、閉めるのが難しくなるし、さらに膨らみます。
収納すると、フォルムはボテッとします。薄く持ち歩きたいなら、少量に抑えた方が良いでしょう。
特徴
薄い財布
usuha2も薄かったですが、usuha3はさらに薄い。
usuha2ではカードを収納しなくても、カード収納スペースの厚みが生じていました。つまり、カード3枚でも、7枚でも、ほぼ同じ厚みだったわけです。
usuha3は、カードの収納枚数が少ないほど、薄くなります。上限は5枚ですが、より薄く持ち歩きたいなら、3枚などに厳選すると良いでしょう。
なお、小銭やお札を入れると、コードバンが曲がり、財布は膨らみます。つまり、収納したときには厚くなりますので、
小さい財布
二つ折り財布では最小クラスです。usuha2よりも小さい。usuha2でも十分に小さいと思いましたが、さらにコンパクトを求める人は、usuha3を気に入ると思います。
軽い財布
わずか27g。本作より小さな「ストラッチョ」や「小さい財布abrAsus」よりも軽いです。ポケットに入っていることに気づかずにそのまま洗濯機に突っ込まないように気をつけたほうが良いレベルです。
高級皮革 レーデルオガワコードバンだけで作られた財布
本作の素材は「コードバン」です。コードバンとは馬のお尻の皮に含まれる、コードバン層を削り出して作った、希少な革です。
コードバンは、さまざまな革製造会社(タンナー)が作っているのですが、本作ではレーデルオガワ社のコードバンが採用されています。
バツグンの光沢を放つ、特別な革。革マニアにとっての一つのゴールだと思います。
「コードバンらしさ」を感じられるのは屈曲した部分です。usuha3はコードバンの美しさを十分すぎるほどに堪能できます。
微細、かつ繊細な光沢、奥行きのある透明感が魅力です。
ホーウィン社のシェルコードバンと比べると、ムラが目立たたず、均整な美しさがあるといえます。ここはどちらが好みかは分かれるところでしょう。
レーデルオガワのコードバンは、本来の厚みが1.0〜2.0mmほどです。この厚みでは扱いにくい財布になるため、usuha3では薄くスライスしたコードバンが使われています。部位によって厚みが異なりますが、外装は1mm未満です。
このため、華奢な手触りに感じます。グニグニと動くフォルム。
丈夫さ、堅牢さ、カッチリ感がなく、これまでコードバン財布を使ってきた人ほど、その違いに気づくはずです。カタチもすぐに変わっていきます。
革財布は使いこむことでカタチが歪んだり「アタリ」が出ます。ここに光が当たることで独特の光沢を作り出してくれます。usuha3でも楽しめるのではないでしょうか。
メンテナンスにはレーデルオガワ社からコードバン専用ワックスが出ています。油分を補給する効果もバッチリですし、なにより気軽に使えます。おすすめ。ちなみにこのワックスは、レーデルオガワだけでなく、ホーウイン社や新喜皮革のコードバンでも使えます。すごくおすすめ。
usuha3は、コードバンの裏側が丸見えです。裏面の表情は一定ではないため、表面の美しさとのコントラストが際立ちます。ここに高級感は感じられませんでした。
一般的に、3万円を超える財布では裏側が見えないように作られています(革が貼られている)。そういった財布を使ってきたならイマイチに感じるかもしれません。usuha3が裏面が見えるように作っているのは「薄さ」を優先するためでしょう。革を貼ると厚くなるし、さらに高価になります。
コインポケットにはシマウマのようなラインが走っています。コードバンの部位によっても、個体によっても違います。コインポケットに限らず、コードバンの裏面は均等な見た目にはなりません。好みが分かれるでしょう。
裏面は処理がされておらず、多少毛羽立ちがあります(個体差があるはず)。きめ細やかで、シルキースエードのようです。手触りが良い。淡い色のため汚れが目立つでしょう。新品の美しさを保つことはできないはずです。
ほとんどのコードバン財布は、内装にコードバン以外の革を使うことが多いです。理由はコストです(コードバンは高級レザーと言われるイタリア、フランスなどの革と比べて5,6倍します)。usuha3はサイズの割に高いと感じるかもしれませんが、その理由はコードバンが高価だからです。見えないところ(カードやコインポケットの裏側)にもコードバンを使っているため、コードバンマニアにはたまらない財布だと思います。
ちなみに、LAST CROPSやココマイスター、GANZOなども「フルコードバンの財布」を作っています。コードバンだけの財布を作るブランドは個人工房を除くと10程度しかなく、そのほとんどが4万円を超えます。
エイジングを楽しめる
レーデルオガワのオイルコードバンはタンニンなめし、染料仕上げの革です。使っていると色、艶が変化します。
usuha3のカラーラインナップは全5色。色の変化を楽しみたいなら、ブラック以外が良いでしょう。
- ブラック
- ネイビー
- ワイン(本ページで紹介のカラー)
- ガーネット
- グリーン
クオリティ
3万8千円の財布に求めるクオリティがあるはずです。人によって判断基準は違うと思いますが、同価格帯の財布と比べるともう少し頑張ってほしいと感じるところもありました。
※冒頭でお伝えしたとおり、サンプルです。仕上げを探っているとのことです。
コバ
革のフチをコバといいます。コバは黒く塗られています。隙間が少し見える感じ。
角が立っています(面取りされていない)。手当たりが気になるかもしれません。
革の裏面は塗料がにじみやすく、染色が難しいところです。あまりはみ出さず、キレイに塗られています。汗や雨で濡れると染料が浸透してにじむかもしれないです。
ステッチ
ミシン縫いです。コードバンの色より濃い糸色で、糸が目立ちます。
ステッチが曲がっているところがあります。ここは頑張ってほしいですね・・・。
捻引き
財布のフチに走る、細いラインを「捻(ねん)」といいます。
usuha3の捻は財布のフチ、ギリギリを攻めていますね。とても細い捻で、カーブまで美しく引かれています。繊細な印象に仕上がっていて、高級感があります。
あとがき
小さくて、薄いコードバン財布が欲しいなら、usuha3は検討の価値ある一品です。フルコードバンで、ここまでコンパクトなものは存在しません。