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SYRINX HITOE《単》長財布のレビュー。薄くて、美しいL字ファスナー長財布

ユニークで機能的なレザープロダクトをラインナップする、日本の新鋭ブランド、SYRINX。

SYRINXの1stリリースアイテム、『厚い革の 薄い財布 HITOE《単》長財布』を紹介しましょう。

使い勝手だけでなく、メリット・デメリットにも鋭く迫ります。

まずは特徴をピックアップ。

  • L字ファスナーの長財布
  • コインが使いやすい
  • 
スリムだから、快適に持ち運べる
  • イタリアンオイルレザーを、贅沢に使用
  • 色・ツヤが変化する、エイジングを楽しめる
  • メイドインジャパンの、美しく丁寧な仕上げ

スリムでカッコいい革財布をお探しなら、おすすめの一品です。
参考にしてみてください。

スペック

ブランドSYRINX
商品名HITOE《単》長財布
収納力★★★☆☆
お札入れの数2
お札の枚数30
コインの枚数15
カードの枚数10
サイズW180 × H99 × D12mm
重さ115g
素材牛革(エルバマット)

動画

使い方をまとめてみました。

使い勝手

HITOE長財布は、「L字ファスナー長財布」にカテゴライズされます。

参考:L字ファスナー長財布のまとめ

長財布にはいくつかの「カタチ」があります。メジャーなタイプは「かぶせ蓋」や「ラウンドファスナー」ですね。それらと比べると、L字ファスナー長財布はスリムでコンパクト。持ち運びに適した、スタイリッシュなタイプです。

HITOE長財布は、片手で持てるくらいのサイズ感。一般的なL字ファスナー長財布よりも少し短くて、少し高さがあります。

本作の特徴のひとつは、極めて薄いこと。測る場所にもよるのだけど、何も入れていない状態だと、わずか10〜12mmほどしかありません。

素材はイタリア産のオイルレザー、「エルバマット」(詳細は後述)。濃淡のある色彩が美しいです。

外装は、一枚革を折った仕立て。つなぎ目がないから、手にしたときのアタリが優しく、サラリとした手触りが気持ちいい。毎日手に取るアイテムだから、大事なポイントです。
折り目の中心がぷっくらとしているのは、革のハリがあるから。数日使うと、スリムになります。

引き手には、ボディと同じカラーのエルバマットが使われています。細く裁断してループに通したつくり。

革の床面(裏面)が見えるルックスは、好みが分かるかもしれません。

床面を見せないように、両張りしたデザインの方が高級感があります。ただし、手間がかかるため、財布のお値段も上がってしまいます。(安くて高級感のある仕上げは存在しません。どこまで求めるかですね。)

ファスナーはYKKの最高級、エクセラ。ひとつひとつの歯が研磨された美しいパーツです。立体的なフォルムは、光を受ける角度が変わると輝いて見える。リッチな感覚になれるので、満足感はピカイチです。

エクセラのカラーラインナップは豊富にあるのですが、本作ではアンティークなメタルカラーですね。

HITOE長財布では革の色に合わせてファスナーを変えているようです。革の美しさを邪魔しないデザインが素晴らしい。(画像は、公式サイトから拝借。)

エクセラは何年使っても刃こぼれがなく、ファスナーのかみ合わせがずれることもありません。耐久性にも優れたパーツです。非常にgoodですね。アパレルブランドの財布では採用されない、最高品質のファスナーです。

財布を開くときには、毛羽立ちのある面が親指にかかるため、ファスナーを引きやすい。革の繊維が手に付くかもしれませんが、これは使い始めだけなので、あまり気にする必要はありません。ファスナートップの長さもちょうど良くて、掴みやすい。

開閉はスムーズです。本作以外にもエクセラを使った財布をいくつか持っているのだけど、それぞれスムーズさに違いがありました。もしかしたら個体差があるのかもしれません。ちょっと固いと感じても大丈夫。エクセラは使い込むことでなめらかになっていくからです。

開くと、こんな感じ。左右対称です。片側は、マチがないタイプ。薄さを優先させたつくりですね。

中央に仕切りがあるデザインは、一般的なL字ファスナー長財布と同じように見えるかもしれません。

しかし、実際には違う。

HITOE長財布だけの、使いやすく、ユニークなデザインが採用されています。

アイテムの使い勝手を見ていきましょう。

カード

財布中央の仕切りにカードポケットがあります。仕切りの奥(マチが無くて、開かない方)です。ラウンドカットされているため、カードが少し見えます。

指を添えて、サッと抜き出すことができる。機能的でgoodです。

カードは縦に、出し入れます。

カードスロットが1つだけなのは、「スリムさを優先したから」でしょう。もっともカードをスリムに収納できるように、「重ねて入れるだけ」のデザインを採用しているのです。(カードポケットが増えることは、仕切りが増えることを意味します。もちろん、財布が厚くなる。)

収納力はかなり高く、10枚のカードを収納できます。

マチはないのだけれど、幅に余裕があるため、想像以上に入ります。ただし、10枚入れてみるとキツイ。かなりテンションがかかるため、クオカードのような薄いカードを端っこに入れると、少し歪曲してしまう。

この状態からは、力を入れないとカードを抜き出せません。ただ、これは最初だけだと思います。革は馴染んでくるため、もう少し余裕が生まれるはず。

さて、個人的には、たくさんのカードを収納するのはおすすめできません

理由は2つあります。

ひとつは、カードが少ない方がスリムになるから
HITOE長財布をチョイスするのは「財布を快適に携帯したいから」ではないでしょうか。当たり前ですが、カードを重ねた分、厚くなってしまいます(カードが少ないほど、スリムなボディを保つことができる)。

もうひとつは、カードが少ないほうが使いやすいから。ポケットが1つだから、複数のカードの中から、「使いたい1枚を素早くセレクトすること」は苦手です。真ん中のカードを使いたいときには、いったん全て取り出して、選別する必要があります。5,6枚くらいが、面倒にならない限度でしょうか。

正直なところ、「たくさんのカードをまんべんなく使う」なら、カードポケットがズラリと並ぶ、「かぶせ蓋の長財布」をチョイスしたほうが使いやすいはずです。(ただし、本作よりも分厚くなるし、見た目や使い勝手も変わってしまうわけで、本作のようなユニークさを楽しむことはできません。)

HITOE長財布のカードポケットは、カード5〜6枚の人に最適。最高の使い勝手を実感できるはずです。

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コイン

仕切りにある、もうひとつのポケットがコインの収納スペース。これが、とても使いやすい。

コインポケットの下部がステッチされています。
コインポケットが浅いから、コインが底に沈みこまない。見やすく、取り出しやすい。このデザインは、日本の革工房でも数社しか採用していません。

ちなみに、コインポケットの下部には、カギを収納することもできるとのこと。ハッキリ言って出し入れしにくいため、キーケースとしての実用性は使い物になりません。予備のカギを入れておく。といった使い方ならアリだと思いますが。

さて、コイン12枚を入れてみましょう。

ポケットが浅いため、コインが見やすく、取り出しやすい。結果として小銭が増えず、財布をスリムに保てる。必要最低限だけのコインを使いやすいようにデザインされています。実に機能的です。

言い方を変えると、使い手を選びます

マチがないからガバっと開くことはできないし、浅いからたくさんのコインは入らない。使いやすさとスリムさのバランスを考えると、15枚がMAXです。というか、それ以上は溢れてしまう。

面倒だからと、ついついお札で払ってしまい、小銭が増える人には向かないでしょう(お札で払ってしまう理由が「コインが使いにくいから」ならば、HITOE長財布は最適です)。

コインポケットに閉じ口は無いのだけど、ファスナーとの距離が一円玉未満だから、カバンの中で逆さまになってもコインが飛び出すこともありません。良く考えられたデザインです。

お札

仕切りの両サイドが、お札の収納スペース。

  • 千円札と一万円札
  • 日本円と外貨
  • 日本円と商品券

など、種類の異なるアイテムを分けて入れられるので、やはり2層あると便利です。

高さがあるため、パスポートや通帳も収納できる。iPhoneだって収納できます。ちょっとランチに出かけるくらいなら、HITOE長財布だけで十分です。

内装は裏張りされていなくて、一枚革の裏面(床面)が見えます。このルックスは好みが分かれるかもしれません。両張りした方が高級感が増すからです。ただし、一般的な床面と比べるとかなり美しい。染料がしっかりと乗っているため、外装と同じ色合いなのです。

本作の名前、「HITOE《単》」とは、「ただ1つの」という意味です。一枚革で仕立てることでスリムにできるし、製作コストを下げることもできます。裏面の表情も含めて楽しんでほしいのかもしれません。

ちなみに、コインポケットの床面は毛羽立った状態。スムース加工されていませんが。

お札スペースの床面は、わりかしスムース。手触りがよくお札の滑りも良いです。

手間をかけるべきところは、「使いやすくなるところ」なのでしょう。とても良いプロダクトだと思います。

特徴

イタリアのオイルレザー、エルバマットを使用

本作の素材、エルバマットについて紹介しましょう。

製造元は、イタリアのトスカーナ地方に居を構える「テンペスティ社(TEMPESTI)」。100年以上にわたって革作りを続ける老舗タンナーの代表的な革が、エルバマットです。

エルバマットは、非常に手間のかかる、ヴァケッタ製法で作られています。
タンニン濃度の異なる、なめし剤が入ったプール(ピット層)をいくつも準備し、他のプールへと移し変えながら、少しずつ革を作り上げるトスカーナ伝統の製法ですね。
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ヨーロッパには数千のタンナーがあるのですが、ヴァケッタ製法で革作りをするタンナーはわずか1%ほどしかありません。時間とコスト、場所が必要だからです。

カラーも豊富です。イタリアの皮革らしく、ビビッドな色合いが並びます。(画像は、公式サイトより拝借)

エルバマットには色の違いだけでなく、2つのタイプがあります。

「AGAVE」は、スムースタイプ。
表面を毛羽立たせて仕上げた革が「TEXAS AGAVE」(本ページでご紹介しているカラー)。

明るい空間で見ると、微細な表情がよくわかります。

染料を浸透させる仕上げのため、革の風合いがしっかりと残っています。革の部位によって、厚み、繊維密度が違うため、均一な色合いに仕上げるのが難しいのでしょう。濃淡のある表情が、本当にカッコいい。

逆に言うと、ビビッドで均一な色合いを長く楽しみたいならば、本作をチョイスするべきではありません(革の表面に、顔料を塗って仕上げた革製品の方がいいでしょう)。

エイジングを楽しめる

エルバマットは、エイジングを楽しむことができる革です。

オイルをたっぷりと含んだ革ですし、手の油分が財布に移るため、オイル追加のメンテナンスは必要ありません。むしろ、ハリ感が失われてしまうのでおすすめしません。普通に使うだけで、色ツヤの変化を味わうことができます。

エイジング具合は、本ページ最後にご紹介しています。

「TEXAS AGAVE」の質感について

毛羽立ちがあるといっても、1mmも起毛していません。スエードやベロアとは違った触り心地。ふわふわというよりも、微細なサラリ感。オイルをたっぷりと含んでいるからかもしれませんが、新品のときから、しっとりとしています。

イタリアの起毛レザーといえば、バダラッシカルロ社のブエブロがあります。

比べてみると、エルバマットはもっと優しい手触りです。ルックスも、エルバマットの方がラグジュアリな印象。

裏張りされていない一枚革ですが、ハリ・コシはあります。ミネルバ以上、ブッテーロ未満といったところでしょうか。

ハリ感は上質さを感じるポイントのひとつです。スリムなプロダクトに仕上げるだけなら、革を薄くスライスすればよい。けれども、所有欲を満たすためには、カチッとした佇まいも必要なのです。そのために、本作では、2mmほどの一枚革を使っているのでしょう。

今日では、「革財布」を名乗りながら、内装にシャンタンなど「革以外の素材」を使ったものもあります。そういったものとは明らかに違う。HITOE長財布は革とファスナーだけで仕立てられた、「本物の革財布」なのです。

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たくさん入れても、薄い

薄さをウリにする財布はたくさんあります。本作の真髄は、アイテムを入れたあとも薄いこと。

以下で実験してみましょう。

  • お札20枚
  • コイン12枚
  • カード10枚(プラスチックカード8枚。薄いクオカード3枚)

before

after。当たり前ですが、詰めこんだ分、ふっくらとします。

厚みは増すのだけど、お札、カード、コインが均等に配置されるから、一箇所がぷっくらと膨らんだりしません。全体的に、シュッとしたフォルムが保たれます。

わずか18mmほどしかありません。

極めて薄い。これに尽きます。

一般的な長財布では、空っぽの状態で18〜24mmくらいの厚みがある。だから、さまざまなポケットでスペースを取ってしまう。しかし、HITOE長財布なら、アイテムを入れても20mm未満なのです。このスリムさは、紛れもなくトップクラスです。

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細部の美しい仕上げ

本作は、岡山県の職人さんが仕立てているとのこと。日本製だけあって、丁寧に作られています。細部の仕立てを、紐解いてみましょう。

コバ

光沢のあるコバです。染料を使わない素磨きでしょう。革の色を邪魔しないため、エルバマットの美しさに集中できます。革が上質なタンニン革だからできる仕上げです。

なめらかなコバは触れていて気持ち良いです。

一方、ファスナーラインのコバは、光沢感がない。繊維が見えちゃってますね。

ステッチ

ストレートかつ均等にステッチされています。カーブラインも美しいですね。

ダメージを受けやすいポイントは、しっかりと補強されています。長く使うためのキモです。

ラウンドカット

手に当たる部位が、丸みを帯びたフォルムなのは、上質さの証です。ひと手間かけることで、触れたときの手触りが優しくなるからです。見た目も良くなる。

やはり、日本の職人によって仕上げられた財布は、細部まで美しい。満足感が高いですね。

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簡素なパッケージ

パッケージは非常にシンプルです。中央にあしらわれたブランドロゴがかっこいい。

中には、カードが封入されています。HITOE長財布は、一般的なL字ファスナー財布とは少し違うわけですが、まわりくどい説明は書かれていません。絵だけです。

財布はキズが付かないよう、不織布に大切にくるまれているのですが・・・。ひとつ残念だったのは、「ヴァケッタ製法の証明カード」が不織布の中に入っていたこと。

新品のときから引っかかれたキズが付いていたのは、このためかもしれません。

タンニンなめし革なので、エイジングによってキズは目立たなくなる。だから気にする必要はないのだけど。

キレイな表情は新品のときしか楽しめないわけですし、ワクワクして開けたときにキズが付いていると残念です。箱を開けた人が喜んでくれること。これもまたデザインのひとつでしょう。

説明カードと同じように、不織布の外側に入れておけば、綺麗な表情を保てるはず。ぜひカイゼンしてほしいポイントです。

※2018/09/03追記。SYRINXよりご連絡いただきました。今後の出荷分は、証明書を不織布の外に封入するとのことです。証明カードによってキズが付くことはないでしょう。

エイジング

3週間後

新品のときは、淡い色合いが垣間見える表情。

少し青みが深まったように変化しました。

薄っすらとキズが付いているのは、気づかないうちに引っ掻いたりしてしまうから。素の表情を活かす「染料仕上げの革」では避けられません。

しかし、あまり気にする必要はありません。なぜならキズは目立たなくならからです。

以下は「新品のときから付いていた」と言ったキズ。

これが、まったく見えなくなりました。

オイルレザーの面白いところですね。圧迫やコスレによって、革の内部に浸透している染料やオイルが移動します(プルアップ現象)。結果、キズが目立たなくなる。

全体的に、濃淡がよりハッキリと出てきました。

ぷっくりとした厚みが収まり、よりスタイリッシュに。ハリは十分に残っています。

人によって使い方は様々ですから、すべてが同じように変化するわけではありません。その違いもまたアジなのです。

あとがき

HITOE長財布は、一般的なL字ファスナーとは違います。

独特のデザインは、建築家であるSYRINX代表の佐藤宏尚氏によるもの。使いやすさとスリムさ、そして美しいルックスも相まった、所有欲が満たされる一品です。

最後に特徴をまとめましょう。

  • 薄くて軽いから、持ち運びに最適
  • シンプルで使いやすいから、長く愛用できる
  • 美しく仕上げられているから、満足感が高い
  • 上質な皮革を使っているから、所有欲を満たすことができる

これだけの特徴を持ちつつ、1万円台で購入できるL字ファスナー長財布は、他にありません。

おすすめの一品です。