WILDSWANS(ワイルドスワンズ)は、上質な革製品をつくる日本の革工房です。「大きくて無骨な財布」が多いのですが、その中でも『パーム(PALM)』はコンパクトな財布。
特徴は以下のとおり。
- コンパクトなサイズ
- コイン、お札、カードを分けて収納できる
- エイジングを楽しめる、上質な革
- 10年使える丈夫なつくり
- ジャパンメイドの美しい仕上げ
本ページではパームの使い勝手、特徴、メリットやデメリットについて、分かりやすく解説します。コンパクトで上質な財布を探しているなら、おすすめの一品。ぜひ参考にしてみてください。
スペック
ブランド | WILDSWANS |
---|---|
商品名 | PALM(パーム) |
収納力 | ★★★☆☆ |
お札入れの数 | 1 |
お札の枚数 | 10 |
コインの枚数 | 15 |
カードの枚数 | 7 | サイズ | H86 x W100 x D25 mm | 重さ | - |
素材 | 牛革(サドルプルアップ) |
本ページで解説するのは、サドルプルアップのパームです。
異なる素材のパームは、以下のリンク先で解説しています。
動画
構造、使い方、サイズ感やエイジングなどを動画にしてみました。
使い勝手
パームはWILDSWANSの中で、「お札を手折りせずに収納できる」もっとも小さな財布です(お札を手折りしてよければ、タングの方が小さい)。
とはいえ、今日では「小さな財布」はたくさんあります。ストラッチョや小さい財布abrAsusと比べると、パームは極小とは言えません。
それでも、一般的な二つ折り財布よりはコンパクト。片手に収まるサイズです。
一枚革でぐるりと覆うように作られたボディは、丸みのある流線型。手に馴染み、吸いつくように収まります。PALM(パーム)とは「手のひら」を意味するのですが、このバツグンのフィット感から来ているのかもしれません。
WILDSWANSの代表的な財布と並べてみました。左から、コインケースのタング、パーム、二つ折り財布のグラウンダーです。
タング以上、グラウンダー未満のコンパクトなサイズ。この小さなボディに、お札、カード、コインをひとまとめにできるのがパームの特徴です。
わずかに描いたカーブは美しいだけでなく、指を添えやすいデザイン。慣れるとノールックで開くことができます。
財布はダブルホックで留めるつくり。
2つのボタンが「パチパチン」と小気味良い音を立てて財布が開きます。
お札
財布を開くと、右側のお札入れにアクセスできます。内側には革が張られています。贅沢なつくりですね。これ、「革の伸び止め」の効果があります。長く使えるデザイン。
千円札、五千円札ならスムーズです。ただし、一万円札は入れやすいとは感じられません。ギリギリ入るサイズ感です。
まだまだ革のハリがある状態ですから、少し突っかかりを感じます。ただ、革が馴染んでくれば、入れやすくなるようです。実際、店頭で1年使い込まれたパームをお借りして、お札を入れてみると、入れやすく感じました。→サドルプルアップやコードバンのパームを1年以上使用しましたが、お札がスムーズに入るほどには変化しませんでした。
WILDSWANSのブログから引用させてもらいますと、
PALMは「小銭入れが付いた財布」と言うより、「札入れが付いた小銭入れ」という考え方
とのこと。
収納スペースを大きくすることもできたはず。あえてサイズを小さくすることで、身軽になれることを大切にしているわけです。(財布が大きくなる理由は、一万円札が大きいからです。ドルやユーロはもっと小さいため、財布も小さくできる。)
タングと違いは、お札を「折ってから入れる」、「出すときに伸ばす」といった所作が不要なこと。お札を快適に使えるキモです。私は3万円以上のお金を持ち歩くことが、ほとんどありません。私のように、たくさんのお札を入れない人にとっては、パームの収納量は十分です。
なお、札入れを広げることでコインポケットをさらに深くなるため、コインが使いにくくなる。サイズアップの仕様変更はされないかもしれません。
コイン
こちらがコインポケット。
中にはWILDSWANSの意匠である、仕切りがあります。この仕切りの内側にカードを入れることができます(後述)。仕切りの前にコインを入れます。コインだけを入れるなら(カードを入れないなら)、15枚ほど収納できます。カード3枚くらいを入れるなら、コインは10枚が収まりが良い。
タングと比べるとポケットが少し深いため、コインの使いやすさで比べるとタングの方が使いやすいです。とはいえ、一般的な二つ折り財布と比べるとあまり変わらないので、使いにくいとは思わないでしょう。財布も小さいですし、ほとんどの人は快適に使えると思います。
なお、パームには、コインポケットを留めるものはありません。財布を開いて、すぐにコインを使えますから、「コインポケットのフタを開ける」アクションが不要です。
ただし、たくさんのコインが入ったまま、横にして開くと、こぼれ落ちてしまいます。これはすぐに慣れますので、あまり気にする必要はありません(そもそも横にして開かないので…)。
財布を縦に開いたとき、札入れが右側にくるようにデザインされています。私は右利きですから、コインもお札も取り出しやすく感じます。
正直なところ、左利きの人にはおすすめできません。使いにくいと感じるはずです。左利きの方が、WILDSWANSの財布をセレクトするなら、タングかグラウンダーをおすすめします。(左右対称ですから、利き手は関係ありません。)
カード
カードを入れることができるスペースは、3つあります。
背面のカードポケット
ボディの背面のポケット。もっとも使い勝手の良いポケットです。
メインのクレジットカードを入れておけば、ここから出してお会計が完了します。私はレシートを溜め込まないため、お会計後はカードを仕舞うだけ。この一連の流れを、財布を開かなくてもできますから、実にスマートです。
初めは少しキツイ。でも馴染んでくるので、クレジットカードのように厚みのあるカードでも2枚は収納できるようになります。ただし、カードは重ねて入れるつくりですから、何枚ものカードを使い分けるのは難しい。2枚以上入れるとカードを選別する手間が増えるため、使い勝手を損なうことになる。やっぱり1枚の収納が使いやすいです。
ポケットがゆるくなってカードが落ちるかも。と、心配かもしれませんが大丈夫。ケツポケで酷使し、1年以上使ってます。背面のカードポケットは300回以上出し入れしているはず。きっちりと締まる堅牢さを保持していて、カードが抜け落ちることはありません。
これは、カートポケットが伸びないように作られているからです。このポケット、内側に革が織り込まれています。だからポケットが(革が)伸びてゆるんだりしない。
中のカードポケット
革の切れ込みがあり、そこに滑り込ませるようにして、カードを入れることができます。こちら、薄いカードなら2枚ほど入ります。正直、あまり出し入れしやすいとは言えません。使わないけれど、持ち歩きたいカード。例えば、免許証や保険証などを入れるのに最適なスペースだと思います。
ボタン直下にもスリットがあるため、カードを挟むことができる。ただし、NGです。
ホックと干渉してカードが折れたりするようです。WILDSWANSさんも避けてくださいと言っていました。もし使うなら、レシートなどの紙を一時的に挟んでおくくらいの用途ですかね。
コインポケットの中のカードポケット
ベロの内側にカードをはさみこむ造り。WILDSWANSの代表的な意匠です。コインとカードを一緒に入れるのは、好き嫌いが分かれるかもしれません。
コインがぶつかりあうことで、微細な金属粉が出ます(これは防げません。)。カードを汚したくない人は入れないほうが良いかもしれません。トータル400日以上使っています。中に入れるカードは同じ。結論としては、カードが汚れることはありません。
コインを何枚入れるかによってカードの収納枚数が変わります。コイン10枚ほどなら、カードは3-4枚ほどとお考えください。
まとめます。
パームは3つのカードポケットを持っていて、収納できる枚数は7枚ほどです。(コインの枚数を少なくするならもう少し入ります)
使い勝手のまとめ
小さなサイズだからこそ、取り回しが良く、どんなポケットにもスッキリと収納できるのです。WILDSWANSはたくさんの財布をラインナップしているのですが、「コイン、お札、カード」をひとまとめにできるもの、さらに「使いやすさ」を求めるなら、パームがもっともバランスの取れた1品だと思います。
タングだと「お札を折る」手間が必要ですし、グラウンダーでは少し大きい。そんな方にとって、パームはNo1です。
特徴
パームは「たくさん入る大容量の財布」とは、コンセプトが異なる財布です。
小さなボディには、WILDSWANSらしさ、機能美がギュッと詰まった逸品です。ここでは、その特徴をご紹介します。
美しいコバ
革を断裁したままの面は、毛羽立ちがあり、触り心地がよくありません。また、さまざまなモノと触れることが多いため、もっともダメージを受けやすい部位です。
切りっぱなしの状態は、こんな感じになるわけです。
この面の仕上げを、コバ処理といいます。
WILDSWANSのアイテムは、コバの美しい仕上げに定評があります。
革を削って、磨いて。
これを繰り返すことで、手当たりが優しくなり、美しく輝くコバが生まれます。
本ページでご紹介しているナチュラルカラーは、コバに色が付いていません。
使い込むことで木目のような、迫力のある風合いが生まれるでしょう。
目に見えるところ、すべてが美しく仕上げられています。面取りしてあるので、触れていて気持ちいいです。ギュッと握っても痛くないんですね。
参考までに、他カラーのコバを紹介します。
ナチュラル以外のカラーでは、コバに着色されています。こちらはブラックのグラウンダーのコバ。迫力がありますね。
こちらは、ホーウィンシェルコードバンのバーボン。ボディカラーとのコントラストが、コバの迫力を際立たせていますね。
10年使える、サドルプルアップレザー
パームの素材は、WILDSWANSが得意とするサドルプルアップレザーが使われています。
サドルプルアップは、ベルギーのタンナー、マシュア社の定番レザー。厚みがあり、最初はとてもカッチリとした印象。自立するほどです。
次第に馴染んできて、しなやかさが生まれます。(とはいえ、ぐにゃりと曲がるほどにはなりません。)
参考までに、私が一年ほど使っている、サドルプルアップのグランダーがこちら。
ケツポケして使っていたのですが、しっかりと立つ、堅牢さが見て取れます。型くずれしたり、ぐにゃりと曲がったりするような、ヤワな素材ではないんですね。
10年以上使われた、WILDSWANSの財布が公式サイトで公開されています。丈夫さの裏付けとして十分でしょう。
革のエイジングを楽しめる
こちらはサドルプルアップのチョコ。ケツポケで使っていたものです。最初はマットでしたが艶が出ます。
カタチも変化します。お札の伸び止めのパーツが段差になるため、表面にパーツの跡が出ていますね。ここは好みが分かれるかもしれません。パームに限らず、WILDSWANSの財布ではアタリが出がちですね。
豊富なカラーリング
サドルプルアップは、いくつかのカラーバリエーションがあります。
サドルプルアップの色あい、表情がわかるように動画にしてみました。どれも魅力的ですから、お気に入りが見つかるのではないでしょうか。
ちなみに、本ページで紹介しているカラーは、ナチュラル。キメ細かな表情が美しく、革の風合いをたっぷり感じられます。
WILDSWANSの(というかサドルプルアップの)、ナチュラルは、かなり白に近い色合いです。
下の写真は、他の財布のヌメ革との比較。ナチュラルがいかに白いかお分かりいただけるかと思います。
淡いカラーですから、正直なところ汚れが目立つでしょう。アメ色に育てるには根気が必要ですから、玄人向けのカラーといえます。
選べる素材
2017年 4月から、定番素材としてフルグレインブライドルレザーモデルがラインナップされました。
ハリはこちらの方が強く感じます。より「革のカタマリ感」を堪能したいなら、フルグレインモデルを選んだほうが満足度が高いと思います。
フルグレインの特徴。サドルアップとフルグレインを使い比べてみての感想などはこちらをご参照ください。
参考:WILDSWANSのフルグレインブライドルレザーとは何か?
どちらも素晴らしい皮革です。気に入った方をセレクトして間違いありません。
無料の公式メンテナンス
革も丈夫ですが、WILDSWANSはアフターメンテナンスを受け付けてくれます。
店舗は銀座と京都のみですが、郵送でメンテナンスサービスを受けることができます。送るときの送料は自己負担ですが、返送時の送料はWILDSWANS持ちとのこと。
コバを磨いたり、クリームで加脂するなどのメンテナンスをしてくれます。お近くの人は是非足を運んでみてください。メンテナンスの方法をいろいろとレクチャーしてくれるので、とてもためになります。
「長く使ってもらう」を大切にしていることが、サービスにも表れていますね。
あとがき
WILDSWANSの財布は厚みのある革で作られていますから、大きく厚みのあるものが多いのです。そういった中で、コンパクトで使いやすいものを求めるなら、パームが最適です。もっと言うと、パーム以外の選択肢は無いように思います。
一万円札ギリギリに仕上げたデザインは、とてもコンパクトな仕上がり。たくさんを詰め込むことはできませんが、だからこそ、身軽に気軽に出かけられるはずです。
ランチや、ちょっとした買い出し。国内の旅行。
こういったシーンにおいて、たくさんの収納は必要なくて、気軽に歩き回れることの方がずっと大事だと思います。そんなシーンに最適な財布が、パームなんですね。
参考リンク
WILDSWANSの財布は、オリジナリティ溢れるものばかり。その定番アイテムをまとめてみました。はじめてのWILDSWANSなら、こちらを見てからのセレクトでも遅くはないはずです。
=>WILDSWANS定番財布のまとめ