WILDSWANSの新定番フルグレインブライドルレザーとは何か?フルグレインとサドルアップとの違いの紹介

サドルアップとフルグレイン

WILDSWANSのアイテムで使われる定番の革といえば、マシュア社のサドルアップです。

WILDSWANSのポリシーは「丈夫で長持ちする道具作り」であり、10年以上使っても破れることがなく、長く愛用できる丈夫な素材として「サドルアップ」は最適な素材です。

そのWILDSWANSが、2016年に定番の皮革としてセレクトしたのが「フルグレインブライドルレザー」です。タングやグラウンダーといったWILDSWANSの代表作の素材として選んだわけです。
結果として、WILDSWANSの定番アイテムは「サドルアップ」と「フルグレインブライドルレザー」の2つの革からセレクトできるようになりました。

さて、本ページでは、2つのことをご紹介します。

  1. フルグレインブライドルレザーの特徴について
  2. フルグレインブライドルレザーとサドルアップの違いについて

私自身、すでに「サドルアップ」のグラウンダーを持っているのですが、フルグレインブライドルレザーのグラウンダーも購入してみました。

つまり、「サドルアップ」と「フルグレインブライドルレザー」で、同じタイプの財布を手に入れたわけです。そこで本ページでは、両者を使ってみて感じたことや、その違いをご紹介します。

ブライドルレザーの財布を検討されている方や、「サドルアップ」と「フルグレインブライドルレザー」どちらが良いか?とお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。

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ブライドルレザーについて

「フルグレインブライドルレザー」の前に、「ブライドルレザー」の特徴についてカンタンにご紹介します。

ブライドルレザーの特徴

まずは、一般的なブライドルレザーの特徴についてご紹介します。
ザッとあげると以下のような特徴を持った革です。

・ハリやコシが強く、固くて丈夫な革
・エイジングが楽しめる
・半年以上かけて作られる、そこそこ希少で高価な革

「ブライドル」と名付けられているとおり、もともとは馬具の素材として用いられてきました。
例えば人と馬をつなぐ「たずな」などですね。命綱となる道具ですから、一般的な皮革のアイテムよりもしなやかさや、「絶対に壊れない丈夫さ」を求められてきました。

こういった馬具の素材として使われるわけですから、もっとも重視されたのが堅牢性です(かたくて丈夫であること)。

ブライドルレザーは長い時間をかけて、タンニンでなめされます。その後、ミツロウなどのワックスを革の芯まで染み込ませています。これによって、一般的な革と比べて、ダントツの耐久性・耐水性を誇る革に仕上げているわけです。

カッチリとした表情のとおり、とても固くてハリのある質感です。
個人的には、力強さ、実直さといった印象を受ける皮革です。メンズアイテムの素材として好まれるのは、こういった特徴を持っているからかもしれません。

もっと知りたい方はこちらもご参照ください。

参考:英国発祥。ブライドルレザーのホントのところ

ブライドルレザーをつくるタンナー

英国発祥の革だけあって、イギリスではブライドルレザーを作るタンナーがひしめいしています。例えば以下のタンナーが有名ですね。

それぞれ独自の製法でブライドルレザーを作っていて、それぞれ違いがあるわけです。タンナーが異なれば、革の表情や色合い、ハリ・コシに違いが生まれるんですね。

フルグレインブライドルレザーとは何か

「フルグレインブライドルレザー」は、イギリスの老舗タンナー、ベイカー社(J&F J Baker)の代表的な皮革です。ここでは、フルグレインブライドルレザーだからこその特徴についてご紹介します。

世界トップレベルの堅牢なブライドルレザー

かたくて丈夫なこと。これはどのブライドルレザーでもいえることです。
数あるブライドルレザーの中でも、フルグレインブライドルレザーの堅牢さは抜きん出ていて、世界屈指の最高品質と言われています。

この秘密を、ベイカー社の「フルグレイン」の製法から読み解いてみましょう。

オークバークを使ったなめし

ベイカー社自身が、「art of oak bark tanning」と謳っています。
堅牢性の秘密の1つは、この「オークバーク(Oak bark)」を使ったなめしにあります。

さて、オークバークとは何でしょうか?
みんなの皮革用語辞典」によると、以下の説明があります。

楢(なら)や樫(かし)の樹皮を使用した、植物性のタンニンなめし(鞣し)剤。樹皮だけでなく、木や実、葉などにもタンニンを多く含むことから、ヨーロッパでは代表的ななめし剤として活用されてきた。
現在は、樹木の減少により、なめし剤として利用されることは少なくなってきている。

イギリスには、ブライドルレザーを作るタンナーが多くありますが、オーク樹皮から抽出したタンニン成分を使って、ブライドルレザーを作るのは、ベイカー社のみです。

革を作る工場には「ピット槽」がいくつもあり、それぞれに濃度が違う「オークバークから抽出したタンニンなめし剤」が満たされています。

異なるピット槽に、革を移し替えながら漬け込む作業、いわゆる「ピット槽なめし」を続けるのですが、この作業は12ヶ月にも及びます。%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2017-01-08-16-30-09

このビット層なめしを使った革づくりは、2000年前から続くと言われていているクラシカルな製法で、ヨーロッパの古くからあるタンナーの多くがこの手法を採っています。
このときに使う「タンニンなめし剤」の原料が「オークバーク」というのがベイカー社の特徴です。結果として、天然素材を原料としつつ、丈夫でハリのある革に仕上がるとのことです。

銀面をそのまま活かす仕上げ

動物の皮は、なめしを行うことで、製品として使える「革」になります。この段階で、色をつけたりオイルを追加したりといった「仕上げ」を行います。(この仕上げを行わない革が、いわゆる「ヌメ革」と呼ばれるものですね。)

この「仕上げ」にも堅牢性を生み出すポイントが隠されています。

革の表面(毛の付いていた側)のことを銀面といいます。

革の仕上げでは、銀面をこすって・削っての作業を経て、革に着色・加脂していくのが一般的です。銀面には動物が生きていたときに付いた、キズや毛穴があるため、銀面をスムースにした方が、色やオイルを浸透させやすいからです。

一方、フルグレインブライドルレザーでは、この「こすって・けずって」の作業は行われません。「フルグレイン(Full-Grain)」という名前はここから来ています。「Grain」とは銀面のこと。銀面をありのままに活かした革だということです。

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出典:ベイカー社公式サイト

事実、ベイカー社は以下のように説明しています。

Hand finished by expert Curriers using our own blend of natural oils and greases.

ちなみに「Curriers(カリアー)」とは革を仕上げる職人のこと。ベイカー社は機会化が進んだ今日でも、職人によるハンドメイドでの染色と加脂を行っているわけです。

そもそも動物の皮膚(スキン)には、あらゆる外敵要因から身を守るのに最適な「素の強度・しなやかさ・ハリ」があるわけです。それをそのまま活かすことで、右に並ぶものがない屈強なブライドルレザーに仕上げているんですね。

丈夫な部位のみを使う

牛の原皮はさまざまな部位に分けられます。部位ごとに特徴があって、フルグレインにふさわしいパーツのみを使っています。

ベイカー社 部位

この部位の中で、ベイカー社が「フルグレイン」で仕上げているのは、ShouderとButtのみです。
牛の肩と背中のスキンですね。四足歩行する牛にとって、もっとも筋肉の可動が多い部位ですから、厚みがあるのにしなやかで、それでいて強度のあるスキンなわけです。


ちなみに、オークバークを使ったベイカー社の革は、その堅牢性の高さから靴の素材としてもトップレベルの品質を誇っています。

牛のベンズ(背中)の革はギュッと線維が詰まった部位で、ソールベンズ(Sole Bends)としてラインナップされています。その名のとおり、靴のインソールやアウトソール(底)に使われています。
世界最高峰と言われる英国靴のビスポーク(テーラメイド)で採用され続けていることは、その耐久性の裏付けとして十分でしょう。他の皮革と比べてダントツに「ソールが減らない」として定評があります。

日本でもビスポーク靴職人にオーダーするときに、ベイカー社のソールベンズを使うことができるようになりました。ただ、入荷量が少なく高価な革ですから、ソールをベイカー社のものにするだけでプラス1万円になります。

圧倒的な迫力の表情

荒々しいまでの力強さを感じる、独特の表情は、フルグレインブライドルゆえの魅力の1つです。

ベイカー社オリジナルブレンドの天然オイルを使って磨き上げることでで、荒々しく、力強い表情を持ったブライドルレザーに仕上がっています。

牛の部位の中で、ブライドルレザーとして使われるのは、肩と背の部分だけ。

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出典:ベイカー社

いくつかカラーがラインナップされているのですが、「オークバークを使ったフルグレインの革」として提供されるカラーは3つだけ。

  • London colour(ロンドンカラー)
  • Dark starin(ダークステイン)
  • Black

どれも魅力的ですが、迫力で選ぶならダークステインがNo1だと思います。

自然な風合いと迫力は、銀面をこすらずに染色されたフルグレインだからこそでしょう。ところどころに見受けられるムラ感が、独特の荒々しさと迫力を生み出しています。


ベイカー社は創業1860年の老舗で、今日においても家族経営を続ける小さなタンナーです。

牛の原皮、オークバーク、オイルなど、革を作るためのすべての原料は、地元で調達したものだそう。地産地消でフルグレインのブライドルレザーを作り、世界のトップメゾンで愛用される革を作り続けているわけです。

伝統的な技法で作られるフルグレインブライドルレザーは、他のタンナーには真似できないブライドルレザーなんですね。

サドルアップとフルグレインブライドルレザーの違い

サドルアップとフルグレイン

サドルアップとフルグレインブライドルレザーは、どちらもWILDSWANS定番の皮革となりました。ここでは、両者を使い比べてみて気づいた、特徴や違いについてご紹介します。

カラー

サドルアップもフルグレインもどちらも染料で仕上げられているようですが、その色合いはまったく異なります。

サドルアップは、均一な色味ですね。滑らかな銀面に均等に染色されているように思います。

一方、フルグレインは染色のムラ感が残った仕上がりですね。

ですから、「キレイな表情=ムラがない表情」とお考えなら、サドルアップの方が気にいると思います。一方、荒々しい表情や迫力を楽しみたいなら、フルグレインを選んだ方が幸せになれると思います。

ちなみに、私がセレクトしたのはどちらともブラックです。
革の色合いの変化という点において、エイジングはほとんど見られないわけですが、ツヤがあがったときの引き締まった雰囲気を楽しみたいからですね。

ハリ

どちらも指で押すとピンとした跳ね返りを感じます。どちらもしっかりとしたハリのある質感ですね。(例えばミネルバボックスと比べると、ハリや硬さは段違いです。)

個人的にはフルグレインブライドルレザーの方が、一段と強いハリを感じます。

私は財布をヒップポケットに入れたりするので、ハリの強さをとても重視しています。ハリの弱い財布は、カンタンに曲がってしまいますし、そのクセがついてしまうと、残念ながら元に戻ることはありません。つまりハリの弱い財布ほど「型くずれ」しやすいわけです。
(フルグレインに限りませんが、ヒップポケットに入れるなら、固くてハリのある財布をセレクトした方が、長く美しく扱えるということです)

過去にグラウンダーのレビューで紹介しましたが、ヒップポケットに入れる使い方で、サドルアップの堅牢性は目を見張るものがあると感じています。そのサドルアップよりもハリの強さを感じるわけですから、「丈夫さ」といった点では、サドルアップ以上なのかなと思います。

ちなみに、こんな感じでしっかりと財布が立ちます。

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左:サドルアップ、右:フルグレイン

グラウンダーをギュッと握ると、「ギュイギュイ」と革の鳴く音がします。これはタンニンなめしで作られた革の特徴です。革の線維がギュッと詰まった丈夫な革であることを裏付けといえます。

比べてみるとフルグレインの方が強く鳴きます。恐らく、フルグレインの方が線維密度の高い仕上がりになっているのでしょう。個人的には育つ革が好きなので、私と同じくタンニンなめしの革が好きな方なら、この音がたまらないはずです。

ちなみに、トーマスウェア社のブライドルレザーと比べてみると、以下のように感じます。

フルグレインブライドルレザーの方が、よりしなやか。
トーマスウェア社のブライドルレザーの方が、ハリが強く、カッチリとした質感。

つまり、フルグレインブライドルレザーは、ブライドルだからこそのハリ感としなやかさを持ちつつ、硬すぎない質感に仕上がっているわけです。

厚み

店頭で新品を触ってみての感想ですが、厚みについてはほとんど同じように感じます。

ちなみに、1年以上使ったサドルアップと、3ヶ月ほど利用のフルグレインを比べてみると面白いです。

サドルアップがこちら。

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フルグレインがこちら。dsc06088

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左:サドルアップ。右:フルグレイン

年季が違う両者を比べるのはフェアではありません。ここで言いたいことは、最初厚みのあるサドルアップやフルグレインブライドルレザーも、使い込むことでスリムになっていくということです。

ツヤ感

どちらもスムースな表情の革で、最初はマットな質感です。

サドルアップの方は、使い込むことで、ギラリとしたツヤがあがってきます。
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一方フルグレインはまだ2ヶ月ほどですが、こんな表情です。
ブルームはほとんど無くなり、うっすらとしたツヤが出てきた段階です。
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フルグレインブライドルレザーのエイジング

ブライドルレザーでは、ブルームが馴染むことによって、表情に艶やかな光沢が生まれてきます。
では、フルグレインブライドルレザーではどうなっていくのでしょうか。
WILDSWANS公式で公開された写真を引用させていただき、いくつかご紹介します。

ロンドンカラーのエイジング

3ヶ月の変化とのことです。

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ダークステインのエイジング

こちらも3ヶ月での変化。
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最初の状態で見受けられた色のムラ感が、シームレスに均されています。とはいえ、わずかに残った濃淡が見受けられます。とても魅力的な風合いだと思います。

ブラックのエイジング

新品時がこちら。
ちょうどカメラが壊れていて写真が取れなかったので、公式サイトから引用させていただきます。black0

私がセレクトしたグラウンダーでは、ブライドルレザーの特徴である「ブルーム」は、写真のものよりも控えめでした。ブルームの元となるオイル成分が革の芯まで浸透していて、表面には出づらいのかもしれません。(それともそういう個体だった?)詳細は分かりませんが、いずれにせよブルームは無くなっていくものなので、気にせず使ってみました。

さて、今回はサドルアップとは違ってカバンの中に入れるようにして持ち歩いていました。

で、こちらが3ヶ月ほどの変化。
表面を覆っていたブルームが無くなって、艶やかで濡れたような光沢がうっすらと出てきました。フルグレインブライドルレザー エイジング3

内装はまだ少し、ブルームが残った感じですね。

フルグレインブライドルレザー エイジング2

フルグレインだからでしょうか。
極小のシボが緻密に並んだような表情が出てきました。フルグレインブライドルレザー エイジング1

ブルームが財布に馴染むことで、サドルアップとは違った微細な光沢が出ているように思います。まだまだ使ってみますので、しばらくしたらご紹介できるかと。

あとがき

WILDSWANSが採用した、フルグレインブライドルレザー。
英国のタンナーが作り続ける「ブライドルレザー」とは異なる魅力があることを、分かっていただけたでしょうか。

英国の気品と粗暴が相まった独特の表情は、唯一無二の美しさと迫力を醸し出してくれます。
丈夫であることはもちろん、美しいエイジングも含めて、長く使うアイテムにふさわしい素材だと思います。

WILDSWANSのフルグレインブライドルレザーの財布を見てみる

参考記事

フルグレインブライドルレザーと並んで、WILDSWANSが定番とする革、サドルアップ。そのサドルアップを使った定番の財布の特徴をご紹介しています。
ここで挙げる財布のほとんどがフルグレインブライドルレザーでもラインナップされています。どれを買おうかな?と検討されている方は、ぜひチェックしてみてください。
WILDSWANSの定番財布のまとめ