読書体験をグッと高めてくれる革のブックカバーは、大好きな革製品のひとつ。すでに5個ほど持っているのだけど、またひとつ仲間が増えました。
イタリアのオイルレザー、ブッテーロを使ったブックカバーです。
四六判のブックカバー
四六判(しろくばん)のサイズのブックカバーです。
本はそれぞれサイズが違う。
役立つ、仕事に使える本のほとんどが、まずは四六判で販売されます。一年後に文庫本になるかもしれないけれど、その保証もないし、早く読みたい本もあるわけです。
つまり、このサイズのブックカバーを買うのは必然でした。
「本のサイズ」は面倒な規格です。
本を2冊並べてみました。
左は、194mmx138mm。四六判より微妙に大きい。サイズ名称は不明。
右は、188mm×127mm。これが四六判。
厳密な四六判サイズではなく、少し大きめの本が収納できるブックカバーを選ぶと、どちらも収納できてコスパが良い。ただし、四六判を収納すると少し余裕が生まれるため、ジャストフィットにはならない。気になる人は気になるかもしれません。
本作は少し大きめ。だから、少し大きな本も入る。
文庫本サイズのブックカバーより、四六判サイズのブックカバーが圧倒的に少ない。これは、上述のようなバラバラなサイズによる作りにくさ、売りにくさも要因のひとつでしょう。
作られていないから、気に入ったものが見つからない。
コードバン、ブッテーロ、シュランケンカーフなどの、上質な革が使われたブックカバーは、残念ながら市販されていません。
ということで、本作は革職人にオーダーしました。革やステッチの色を決めるだけのパターンオーダー。今日では数多くの工房、職人さんがインターネットでオーダーを受け付けているため、カンタンにオーダーできます。
なお、革製品全般に言えることだけど、革を使う量に比例して価格は上がる。文庫本や新書本のブックカバーに比べると、四六判は高くなってしまいます。
デザイン
オーソドックスなブックカバーです。余計な装飾は一切ありません。
背表紙側に折り込んで入れるタイプ。本の厚みが多少違っても大丈夫です。
ブックカバーは何時間も手に持つアイテムだから、触ったときの感触はとても大事です。
ブッテーロは滑らかな表面で、サラリとした質感。手触りがよく気持ち良い。ここは好みが分かれるところかな。シボ革がお好きな人は、合わないかもしれない。
滑りが良すぎる気もするけれど、使い込むことでフィット感は高まります。
なぜならエイジングする革だから。手触りはサラリから、キュッとするようにフィット感が変化していきます。
ブッテーロのブックカバー
ブッテーロの表情には個体差があるのだけど、今回のブックカバーは均整なルックス。
色の濃淡もほとんどなく、トラやキズも見当たらない。
裏面。芯通し染のため、淡く色が乗っている。
ブッテーロはハリのある革なので、ブックカバーの素材としてはどうなのか。と、思っていました。柔らかい革のほうが、本に沿ってしなやかに曲がると考えていたからです。しかし、それは杞憂でした。
1mmほどに薄く漉かれたブッテーロは、グニャリと曲がる。どんな本にも、しなやかにフィットする。
それでいて、わずかにハリがある。私の好きなブッテーロの質感が、キチンと残っている。
ニヤリと笑ってしまった。
革製品に触れるときはいつだってそうなのだけど、「はじめての体験」がとにかく楽しい。作品ごとに違った顔、特徴を楽しませてくれるからです。
ブッテーロのプロダクトは10個ほど持っているのだけど、本作においては「ブッテーロはハリが強いもの」というイメージをぶち壊してくれた。もちろん、良い意味でです。
さて、ブッテーロのグリーンは初めて。繊細な美しさです。
グリーンというと、「LINE」のテーマカラーようなポップな色をイメージするかもしれないけれど、ブッテーロのグリーンは全然違う。若葉というより、深い森。
私は、かなり上品に感じます。ちょっとカジュアルには使いづらいかもしれない。
大人のグリーン。魅惑のグリーン。
ブッテーロはスムースな革なのだけど、表面をアップで見ると微細なシボがある。
このシボが光を乱反射することで光沢を生み出してくれる。
特にカーブ部の光沢が目立ちます。
革製品の「カーブした部位」が大好きなのは、表情の変化が顕著だからです。
微細なシボが生み出す光沢は、精細な美しさがある。
光量によってガラリと表情を変えてくれる。
明るい空間では彩度が際立つ。
暗い空間では深みが増す。もなんとも言えない雰囲気です。
繊細な美しさは、はかない。
ブッテーロは簡単にキズが付いてしまうため、この表情を楽しめるのも今だけなのです。
ブックカバーは、机にポンと置いたり、カバンの中で他のアイテムと擦れ合ったりするため、キズは絶対に避けられない。
ただ、ブッテーロはタンニンなめし、染料仕上げの革だから、色ツヤの変化を楽しめる。いわゆるエイジングです。キズができても、そのキズも含めて変化を楽しむことができる。
繊細で深みのあるグリーンが、どのように変化していくのか。実に楽しみです。これは後日紹介できればと。