はじめてブッテーロを手に入れたのは2008年のこと。今でもブッテーロの製品を選んでしまうほど大好きな革です。
本ページでは、10年以上ブッテーロを愛用している革マニアの視点で、ブッテーロの特長、メリット・デメリット、エイジングなどについて分かりやすく解説します。
ブッテーロの革製品を検討している方は、参考にしてみてください。
動画
さまざまなカラーのブッテーロ。表情、エイジングなどをご紹介しています。
タンナー
ブッテーロを作るワルピエ社は、イタリア トスカーナ地方のタンナーです。製法はタンニンなめし、かつ、染料仕上げ。革本来の風合いを活かした革を得意としています。
ワルピエ社のメジャーな革は3種類です。
- ブッテーロ:ハリのあるスムースな革
- マレンマ:ブッテーロより多くのオイルを含んだ革
- ドラーロ:ブッテーロに型押しを施した革
中でもブッテーロとマレンマはよく使われていますね。マレンマの表情、エイジングがわかるように動画にしています。ご興味があればぜひ。
ブッテーロの特徴
表情
新品のときから光沢があります。微細なシボのある肌目が、光を乱反射するため。
明るい空間でみると薄っすらと透明感もある。カーブした部分に光が当たると上質さがよくわかります。
光沢はあるけど、ツヤ・テリはほとんどない。マットな表情です。
革の裏面も、ほんのりと色が乗っています。革の中まで染料を浸透させて着色する、芯通し染めです。
光が当たると濃淡がハッキリと分かる。奥行きのある透明感と繊細な表情も楽しめます。
濃淡をともなう表情は、染料で仕上げている証。「薄化粧」ゆえに、皮の風合いを活かすことができます。
言い換えると、素肌を隠しきれない革です。部位としては肩(ショルダー)で、首周りにはトラもある。もちろん、キズも。「生きていたときの証」が残る革です。
好き嫌いが分かれるところですが、ブッテーロでは避けられません。
トラやキズは嫌がる人もいますからね・・・。
大きなブックカバーでも均整な表情。これはたまたまキズのない部位を使ってくれたのでしょう。
ブッテーロの製品は20以上持っているのだけど、デスクマットや手帳などの「面積が大きい製品」では、トラが目立ちます。トラやキズのある、ワイルドな表情を楽しみたいなら、大きな面を使った製品をチョイスした方が良いでしょう。
こちらは、均一な色合いの個体。レッドとブルーは、いくつか購入してきたのだけど、透明感の少ない(表情に奥行きがない)個体がいくつかありました。ただ、どのブッテーロも使い込むことで光沢が生まれました。
触り心地
表面のシボは微細で、指でふれても凹凸を感じることはできません。極めてスムースで、サラサラとした触り心地です。滑りがいい。
後述しますが、「エイジング」によって触り心地も変化する。
最初はスルスルとした触り心地が、少しキュッするようになります。
ハリ感
ブッテーロは牛のショルダーです。お腹の革に比べるとハリ・コシが強い。
他の革と比べると・・・、ミネルバよりは、ハリが強い。ただし、コードバン、サドルプルアップ、ブライドルレザーよりは柔らかいかな。ただ、部位によって硬さが変わるので一概には言えません。
ブッテーロは成牛の肩(ショルダー)の部位ですから、面積が大きい(100cm×100cm以上あります)。そして、ショルダーの中でも部位によってハリ・コシに違いがある(カッチリと硬い部位もあれば、柔らかな箇所もある)。部位によって繊維密度、繊維の向き異なるからです。つまり、ブッテーロの部位によって製品の硬さが異なります(同じブランドの、同じブッテーロ製品を購入してもハリ・コシに違いがある)。
固めのハリ感がお好きなら、ブッテーロを気にいるはずです。
製品のハリは、革だけで決まるわけではなくて、製品の構造によるところが大きい。たとえば、1mmほどに薄くしたブッテーロはこんなにもグニャリと曲がる。
ブッテーロの元の厚みは3mm以上あります。このままでは製品にはできませんから、ほとんどの場合薄くスライスされます。厚みのあるブッテーロの製品はハリが強いし、薄いアイテムなら「それなり」です(冒頭のとおりミネルバよりは硬い)。
キズ付きやすさ
キズは付きやすいです。スムースな表面のため、目立ちやすい。
ポケットやカバンに入れたりすると、取り出すときに爪で引っ掻くこともある。すると写真のようなキズはすぐにつく。しかし、使いこんでいくと少しずつ目立たなくなっていきます。染料とオイルが移動し、キズを覆うからです。
香り
ブッテーロの香りは、皆さんがイメージする「革の香り」そのもの。
革の香りは、染料とオイル、なめし剤などで決まります(ミネルバや、ホーウィンシェルコードバンはそれぞれ違う香りがする)。
個体差などによる違いはほとんどありません。革の香りって、好き嫌いが分かれると思うのですが、ブッテーロなら万人に受け入れられるでしょう。
ブッテーロの香りは「ちょうどいい」と思います。パッケージを開けたときの、革の香りがキツくなくて、ずっとクンクンしていられるくらい(ちなみに、新品のミネルバだとちょっとキツイ)。
なお、使っていくと香りは収まっていきます。
2年ものと、10年ものでは、ほぼ同じ香りの強度。それぞれ同じ系統の香りが残ります。
価格
ブッテーロはイタリアの染料仕上げ、タンニンなめし革のなかでは高価です。
ブッテーロを使った、似た財布があり、値段が異なるとします。では、安価な方を買えばよいのでしょうか?
高価なブッテーロの財布は「一枚のブッテーロで、最高の部位だけを使用(切り出す)」しているかもしれません。あるいは、コバやステッチなど、細部の美しい仕上げを追求しているかもしれません。
製品のクオリティを求めるなら、信頼のおけるブランドを選びましょう。
カラーバリエーション
ブッテーロのカラーバリエーションはとても豊富。10色以上あります。
私が所有するのは、以下です。参考にサイト内のレビューへリンクを張っておきます。ブッテーロの色合いや、エイジングなどの参考にしてみてください。
- ナチュラル
- イエロー(点と線 usuha2)
- ブラック
- ブラウン(ル・ボナー デスクマットのレビュー)
- キャメル(小さい財布abrAsusのレビュー)
- ブルー (エムピウ ミッレフォッリエ2のレビュー)
- レッド (エムピウ ストラッチョ ブッテーロのレビュー)
- ワイン
- パープル
- グリーン (ブックカバーのレビュー)
どれも魅力的で、No1を決めることはできません。
ワイン、パープルは上品で美しい。ただ、あまり採用されませんね。
ブラックはビジネスユースなら定番のカラー。
ツヤは出るけど、色の変化はほとんどわからない。「ブッテーロの変化」を楽しみたいなら、ブラック以外がおすすめです。
ナチュラルはもっとも淡い色。もっともエイジング(色・ツヤの変化)を楽しめる色です。ただ、汚れも目立ちやすいので玄人向けかもしれません。
イエローやキャメルのような淡い色だと、ナチュラルほど汚れを気にせず、かつエイジングも顕著ですね。
なお、ブッテーロは色ブレがあります。ブッテーロのブルーを使った製品をいくつか購入してきましたが、すべて微妙に異なっていました。淡い色から濃い色まで、個体差があります。
10年以上にわたって、安定して生産される
ブッテーロ以外にも著名な革はたくさんある。
でも、10年以上にわたり、安定した品質で、安定した量を生産できる革は少ない。
たとえば、コードバンは生産されない年があったし、ものすごく値上げされている。シュランケンカーフも値上げされていますね。タンナーが廃業することで、手に入らなくなる革もあります。
ブッテーロは値上げも少ないから、製品価格が上昇しにくい。数年後に買い換えるときに、値段が急激に上がることもない。
ブッテーロのエイジング
タンニンなめし、かつ染料仕上げのブッテーロは、エイジングすることで、様々な変化を見せてくれます。
では、どのように変化していくのか。私物のブッテーロで解説していきます。
色は深まっていく
パープルやブラウンは部位によって色の濃淡がありました。ブッテーロにはロット差があるのです。
のっぺりとした(均等な)色合いのものもあります。
のっぺりした色合いでも、使っていくと色に深みが生まれる。
こちらは、新品と2年ほど経過したもの(実用は60日ほどかな)。グッと深みが増していますよね。
染料とオイルが混じり、タンニンが変化することで、ブルーはもともと濃い色だけど、さらに深まる。
ミネルバと比べると、変化は控えめ。変化のスピードもゆっくりです。
以下の動画を再生すると、10年経過したブッテーロのエイジング度合いがわかってもらえると思います。色はブルー、かなり深く変化しました。
ツヤが現れる
使い込むことで、表面のシボが平滑化され、よりスムースな表情になっていく。
結果、ツヤ・光沢が楽しめる革に変化します。
ブッテーロはオイルを含む革です。圧迫されることによって、革の中のオイルが表面に出てくる。また、手で触れることで油分が均一に広がる。つまり、スムースな表情に、オイルコーティングされた状態になる。
表面に「指」が写っているのが伝わるでしょうか。これ、影じゃないんです。鏡のよう、といったら大げさだけど、指の色まで写り込んでいます。
こちらは3,900時間ほど触っている、ブラウン。艶がすごい。ちなみに、ワックスやクリームは一切使っていません。
以下の写真は、キャメルが1年以上使ったもの。ブルーやグリーンと比べると、表面がオイルコーティングされているため、より光る。
以下はほぼ新品と、10年ものとの比較。
ほぼ新品の方は、繊細な光沢。10年ものは重く、鈍い光を放ちます。
ハリ・コシは少し弱まる
新品のときのハリ感は少し弱まってしまいます。
とはいえ、10年ほど経ったブッテーロ(ミッレフォッリエ)でも、グニャリと曲がるほどではない。新品のミネルバよりはハリが残っています。
ただ、これは私の買った製品、用途での結果です。
薄く漉かれたブッテーロではどうなるかはわからないし、丁寧に扱えばハリはほとんど変わらないかもしれない。
ブッテーロを取り扱うブランド
ブッテーロを採用するブランドをご紹介しましょう。
エムピウ
イタリアのレザーを中心とする製品をラインナップするエムピウ。ブッテーロは青と黒がよくつかわれていますね。
レビュー:エムピウ ミッレフォッリエ
SUPER CLASSIC
小さい財布、薄い財布といえばSUPER CLASSICがラインナップするabrAsusシリーズでしょう。ブッテーロモデルは高級ラインです。
カラーラインナップも豊富ですが、はじめてのブッテーロでエイジングを楽しみたいならキャメルをおすすめ。色・ツヤの変化をもっとも楽しめるカラーです。
レビュー:小さい財布 abrAsus
レビュー:薄い財布abrAsus
sot
内装、外装にもブッテーロを使った贅沢な財布をラインナップしています。
あとがき
色、表情、エイジング。ブッテーロにはたくさんの魅力があります。だからこそ、日本有数の革工房が採用を続けるわけです。