2018年11月。機能的な財布をラインナップするエムピウから、二つ折り財布、『ピアストラ』が発売されました。しばらく使ってみたのでご紹介しましょう。
特徴は以下のとおり。
- 厚み15mm。スリム二つ折り財布
- 外側にカードを収納できる
- コインの収納量は少なめ
- オイルレザー、ミネルバ・リスシオを使用
- 色ツヤの変化するエイジングを楽しめる
本ページでは、ピアストラの使い勝手、特徴、メリット・デメリットを分かりやすく解説します。
目次
スペック
ブランド | エムピウ |
---|---|
商品名 | ピアストラ |
用途 |
|
収納力 | ★★☆☆☆ |
お札入れの数 | 1 |
お札の枚数 | 10 |
コインの枚数 | 15 |
カードの枚数 | 5 | 寸法 | W100 × H105 × D15mm | 重量 | 60g |
素材 | 牛革(ミネルバリスシオ) |
カタチ・構造
二つ折り財布にカテゴライズされる財布。サイズは、一般的な二つ折り財布と同じくらい。
「小さな財布」と比べると決してコンパクトではない。けれども、オーソドックスな二つ折り財布よりずっと薄い。重なる革が少ないからでしょう。公証スペックでは15mmですが、ギュッと押さえればもっとスリムになります。
革はエムピウの定番、ミネルバ・リスシオ(後述)。
バックには切れ込みがある。カードを収納するポケットです。
財布を留めるボタンなどはありません。フラップがパタンと重なっているだけ。フラップを縦に開きます。
上部がコインポケット。下部がカード。この構造はピアストラがオリジナルだと思う。
カードポケット。重ねて入れるデザイン。ストラッチョと似ています。
カードポケットの上に、コインポケット。フラップがユニークです。
コインポケットの後ろに、フリースペースがひとつ。
フリースペースの後ろが、お札入れです。
使い勝手
お札
お札を差し込んで収納します。あおり構造になっていて、ガバっと開くため入れやすい。お札の下半分は隠れますが、上半分は丸見え。フラップがお札を覆うため、向かいの人には見えないけれど、周りからは見えてしまう。ここは好みが分かれるかも。
取り出しもカンタン。お札がパラリと開くから選別しやすい。
収納スペースは、リスシオの裏面(床面)。スムースに床処理されています。線維の毛羽立ちが抑えられて、つるりとしているため、お札が引っかかることはありません。ただし、表面(銀面)と比べるとスムースさは劣ります。
さて、見た目です。
ミネルバ・リスシオは、染料を浸透させることで着色されています。革の部位によって繊維密度が異なるため、浸透度合いにも違いがでる。結果、色合いもまばらになります。見た目はちょっと好みが分かれるでしょう。個体差もあります。ちなみに、使い込むと色味が深くなるため、目立たなくなるはず。
ストラッチョ スペリオーレのように、革の表面を使った方がスムースだし、見た目も上質になります(当然、価格もアップする)。なお、エムピウは、「内装も表革が使われたモデル」はストラッチョでしかラインナップしていません(「ピアストラ スペリオーレ」は出ないかもしれない)。
お札0枚でも、フラップが少し開いてしまう。これは革が「真っ直ぐな状態」に戻ろうとするから。使っていくと革に「折り癖」がついて、きちんと閉じるようになります。
収納は10枚がMax。もう少し収納できるけど、ボタンで留めることができないため、お札の収納量が多いほど勝手に開いてしまう。
10枚以上のお札を入れることが多いなら、オーソドックスな長財布、ラウンドファスナー長財布をセレクトした方が、快適でしょう。
サブポケット
お札の収納スペースとの間に、仕切りがあります。
縦にカードを入れるとこれくらい。けっこう深さがあります。レシートなどを挟めます。
完全に閉じ込める構造ではありません(財布を閉じても、右側が空いている)。あくまでも一時的に「挟んでおく」ためのポケットかな。貴重品は入れない方がよいかもしれません。
コイン
まずは、収納してみましょう。
傘のようにかぶさったフラップを指でめくると、収納スペースがお目見え。ポケットの両サイドが縫製されていて、マチはありません。
マチのないデザインは、本作のウリである「薄さ」を優先するためでしょう(このコンセプトはストラッチョと同じでしょう)。
折りマチ構造にすることで、コインがたくさん入るし、見やすく、取り出しやすくなる。けれども、厚くなってしまうのです。
ポケットの底が浅く、ガバっと開くわけじゃない。だから、たくさんのコインを一度に収納することはできません。2,3枚を、隙間に収めていくイメージ。新品のときは、ピタッと革が張り付いているため、入れにくいと感じるでしょう。しかし、ミネルバは使い込むことで、多少伸びます。使いやすくなっていくはず。
携帯性と使いやすさを考えると、10枚くらいが良いですね。なお、お会計で「お釣りが出ないようにコインを計算して出す」なら、自然と10枚前後をキープできます。
さて、コインの取り出しです。
「コインの厚み」によって、収納スペースが広げられた状態になります。指でヒョイとつまんで取り出す感じ。ある程度コインが入っている方がポケットが開いた状態になるため使いやすいです(1円玉一枚だけだと、取り出しにくい)。
コインポケットがV字状にカッティングされているのも使いやすさのポイント。ポケットが浅くなることで、コインが見える状態になり、取り出しやすくなる。機能的です。
指を離すと、自然とコインスペースを覆うように、フラップが倒れてくる。
両サイドにも隙間がないから、逆さまにしたときにもコインは落ちません。
ただし、「外側のフラップ」が完全に留める構造になっていないので・・・、
たとえば、カバンの中で逆さまになり、フラップが開く。このとき、コインがたくさん入っていればコインの重さでコインが溢れるかもしれない。コインのかぶせが「何かで押される」ことがあれば、コインが溢れるかもしれない。
フラップを「ボタンで留めるデザイン」にもできたはず。
そうしなかったのは、ピアストラが「ケツポケを想定した財布」だからです(後述)。
ケツポケするなら、「逆さま」にはならない。だから、コインが溢れることはありえないのです。言い換えると、カバンの中に入れて持ち歩くなら、ピアストラが最適かを再検討したほうが良いかもしれません。(ミッレフォッリエでいいんじゃない?など)。
カード
ピアストラには、カードポケットが2つあります。
外装のポケット
Suicaなどの電子決済用カードを入れておくとタッチ決済できて便利。
外側のカードポケットは斬新ですね。エムピウでは初物。
これまで、エムピウのアイテムには、一枚革でぐるりと覆ったものばかりで、外側にカードポケットが付いた財布はありませんでした。手にしたときに「革の質感を最大限楽しめること」を大切にしているためでしょう。
つまり、ピアストラは機能性に舵を切った財布なのです。
クレジットカードを入れておけば、ここから出してお会計終了。財布を開く必要がないため、お会計が非常にスムーズです。ただし、奥まで差し込むとほぼ完全に隠れてしまうため、出し入れしやすいとはいえません。少し頭を出すように差し込む度合いを調整すればいいかな。
内装のポケット
マチのないポケットに重ねて入れます。つまり、「カードの仕分け、使い分け」は得意ではない。最小スペースで持ち歩くためのデザインです。最初は3枚でジャストサイズ。使っているとミネルバは伸びるため、5枚くらいはいけそう。エムピウの公称スペックも5枚ですね。
財布の下部に穴があって、カードの端っこが見えるのですが、出し入れのしやすさなど、機能的な効果はありません。
カードがまとめて入っているため、「たくさんのカードの中から使いたい一枚を選別する」ことが難しい。お会計のときは、あらかじめカードを準備しておかないと、まごつくかもしれません。2枚目より後ろのカードをピンポイントで取り出すのは難しいのです。
では、どうやって取り出すのか?
いったんすべてのカードを、少しだけ引き出します。ピアストラの本体はグイっと曲げやすい。少し本体を曲げると、カードが取り出しやすくなります。もしくは「指の背」でコインポケットの部分を押すといい。
いったん、すべて抜き出す。この中から選定します。
もっとも奥のカード、あるいは1枚だけ収納している場合(そんな用途はないだろうけど)を取り出すときも、本体を少し傾ける必要があります。コインポケットの縫い目にぶつかることがあり、スムーズに出し入れすることができないからです。
「よく使うカード」ほど、手前に入れましょう。その方が使いやすいです。
まとめ。
薄さを優先したデザインです。たくさんのカードを使い分けることは難しい。よく使うカードを外側のポケットに。その次によく使うカードを内装のポケットの手前に収めておく。つまり、よく使うカードが2枚くらいの人に最適です。
特徴
ケツポケするための財布
ケツポケは、圧迫により型崩れしやすくなる。また、汗が移りやすい。汗には水、塩、アンモニアと革にダメージを与える成分が含まれているため、ほぼすべてのブランドは、ケツポケを推奨していません。
しかし、ピアストラは、以下を公証しています。
【Piastra】はイタリア語で「板・プレート」の意味を持ち、パンツの後ろポケットに入れるための「薄い財布」です。
このコンセプトに惹かれました。
ミネルバリスシオは、ハリの強い革ではありません。ブッテーロやコードバンと比べると柔らかい。だから、ケツポケをし続けると必ずカタチが変化する。このキリッとしたルックスがどのように変化するのか、楽しみですね。
ミネルバリスシオを使用
ピアストラの素材は、イタリアのオイルレザー、ミネルバリスシオ。エムピウの定番です。
※ピアストラは、ミネルバリスシオのみのラインナップ。ミッレフォッリエやストラッチョでは、ブッテーロを使ったモデルもあるのですが、ピアストラにはありません。
選んだ色は、prugna(プルーニャ)。ダークトーンの紫。どことなく妖艶さもある。微細な凹凸が見えるのだけど、指で触れても凹凸は分からない。極めてスムースな革です。
マットで面白味がないように見えるかもしれない。しかし、明るい空間では色の濃淡が見える。染料で仕上げの革ならではの自然な風合いを感じられます。
人によって感覚の違いはあると思うけど、私には香りが強く感じる。ただ、しばらくすると香りが飛ぶので、苦手でも大丈夫です。
色ツヤの変化を楽しめる
スムースでマット。
面白みのない表情だと感じるかもしれませんが、これは最初だけ。
グングンとエイジングが進みアジのある顔に変わっていきます。
別の色ですが、ミネルバのオルテンシア。新品のとき。マットな質感。
2年後。艶が出て、色味も深くなっています。
豊富なカラーラインナップ
(写真は公式サイトから引用させていただいてます。)
- black
- prugna(本ページで紹介)
- castagno
- ortensia
- bone
- oliva
- LI.red
すべてミネルバリスシオです。
black、ortensiaなどは、ゾンゾでもラインナップされているし、エムピウ以外でもよく使われる定番カラーです。が、他は珍しい。
ミネルバの色のネーミングはいつ見ても面白い。prugnaはイタリア語でプラムを意味します。
ortensiaは、アジサイですね。紫、青と名付けないのは、ロット差による色ブレがあり、均一な色味が出せないからかもしれません(ortensiaは4製品ほど買ってきたのだけど、それぞれ「青の濃さ」が違う)。
リスシオの色合いは、「今このページを見ているディスプレイ」や、革のロット差もあるため、正確にお伝えすることが難しいです。東京にお住まいなら蔵前の店舗に行ってみるのがオススメです。全カラー置いてあります。
エイジングによる「色の変化」も楽しみたいなら、ブラック以外をセレクトしましょう。
ブラックはツヤは出ますが、色の変化は楽しみにくいと思います。わずかに変化しているのでしょうが私は体感できませんでした。
仕上げ
縫製はミシン。革の色と同じ糸が使われています。プルーニャには紫の糸。色のトーンをあわせることで、糸が主張せず、革が主役になります。負荷のかかるところは、きちんと返し縫いがされています。
表面は革だけ。一切ステッチがない。フラップ部は一枚革だから、そもそも縫う必要がないのです。ちょっと新鮮。
コバは磨き仕上げ。ミネルバ本来の色を残しつつ、光沢があります。塗料は使われていないため、「塗料はがれ」が起きません。長く使えそうです。
あとがき
これまでにエムピウがラインナップしていた二つ折り財布、フェルマにはコインを収納することができませんでした。スリムだけど、オールインワンの財布にはなれない。コインケースを別に持つ必要がありました。
ピアストラは、お札、カード、コイン、これらすべてを収納できるスリムな財布です。
イタリアの美しい皮革を使った二つ折り財布の中では、極めて安価です。
初めての革財布、エジングを楽しみたい人にもおすすめです。
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