コードバンはもっとも好きな皮革。レーデルオガワ社のコードバンもその一つです。
本ページでは、40以上のコードバン製品を使ってきたコードバンマニアの目線で、レーデルオガワコードバンの特徴、メリット・デメリットについて分かりやすく解説します。
レーデルオガワ社について
レーデルオガワ社は千葉県にある「コードバンの仕上げ屋さん」です。
コードバンの原皮に油分を加え、コードバン層を削り出し、染色をする「コードバンを専門」とする唯一無二の企業です。
参考:レーデルオガワ公式サイト
さまざまなブランドが「国産コードバン」の製品を販売していますね。新喜皮革社またはレーデルオガワ社のコードバンが使われていることが多いかな。特に高島屋などの高級デパートで取り扱いのある革財布は、ほとんどが新喜皮革かレーデルオガワです。
表情
コードバン特有の光沢がある。光のベールをまとった表情が魅力のひとつ。奥行きのある透明感が楽しめる。サラリとした手触りとあいまって、均整な美しさを感じる皮革です。
牛側だと革の裏面まで染色されていたりします。芯通し染と呼ばれる、染色技法です。
一方、レーデルオガワのコードバンの裏面は、染色されていません。コードバンの表面だけを染色しているからです。ほぼすべてのコードバン製品では、この表面が製品の顔になります。
レーデルオガワは「アニリン染」という染色を得意としています。薄っすらと濃淡があるのは、表層に近い部位だけ染め上げているからでしょう。
ホーウィン社のコードバンは、濃淡があるし、新品のときから薄っすらとキズも付いていることもある。レーデルオガワのコードバンはキズも少なく、整った美しさです。
小さな製品でさえ上質さを隠しきれない。暗い空間でも、わずかな光をうけてコードバンの特徴である光沢を見せてくれます。コードバン以外の革とは格段にルックスが違う。
明るい空間だと濃淡が見える。これもいいんですよ。
一般的な「革」とは異なり、銀面でも床面でもない。皮と肉の中間にあるシェル層を削り出し、スムースに加工し、アニリン仕上げを施した表情は、バツグンの光沢を放ちます。
鏡面のように外界を映し出すほどになめからな肌。
指のカタチ・色までハッキリと分かる。コードバンの楽しみのひとつです。
レーデルオガワの得意とする「アニリン染」とは、水に溶ける染料を利用した染色技法です。透明感とコードバンの風合い(濃淡、ムラ感など)を同時に楽しめるのは、コードバンの内部に染料を浸透させているからではないかと思います(コードバンの表面に色を乗せるというよりは、繊維に浸透しているイメージ)。
革の風合いを残しつつ、毛穴(ピンホール)がほとんど見当たらないのはレーデルオガワの技術力の高さを物語っています。
触り心地
ホーウィン社よりオイル感は控えめ。サラッとしたさわり心地です。ここは好みが分かれるかな。オイルレザーっぽさが好きなら、ホーウィン社が気にいるかもしれません。
質感
硬い。ハリ・コシが強い。
油分を含んだ革とはいえ、ぎゅっと握ったり圧をかけると染料が移動する(プルアップ現象が起きる)のですが、マレンマやミネルバほど色の変化が顕著ではない。また、オイルが浮き出るような変化も感じられません。
レーデルオガワのコードバンは、概ね2mm以下です(数十枚、触らせてもらいましたが2mmを超えるものはなかった)。
部位によって1.2〜1.8mmと厚みが異なります。お尻と腰のどちらに近いかによって、コードバン層の厚みが違うのでしょう。コードバンは副産物。天然の素材なのです。他社のコードバンと厚みに違いがあるわけではありません。しかし、ホーウィン社やイタリアのコードバンと比べると、同じ厚みでもレーデルオガワ社のコードバンが硬い。
ちなみに、厚みが変われば、ハリ感も変わる。1.8mmくらいある部位は曲げることも困難なほど硬い。この厚みのまま製品に使われることはほとんどありません。製品に最適な厚みにスライスされます。
ハリ・コシを重視するなら、レーデルオガワをセレクトしたほうが良いでしょう。ただ、「コードバンだけで作られる製品」はほとんどありませんので気にしすぎることは無いかな(three2fourやLASTCROPSのように「1枚革のコードバン」で仕立てるブランドは珍しい)。(写真はthree2fourのPOCKET)
市場の製品は、コードバン×他の革の組み合わせによって、作られることがほとんど。硬い革と組み合わせた製品が、もっともハリ・コシを楽しめるでしょう。ブランドでいうと、WILDSWANSなどが硬めの革(イングリッシュブライドル、ブッテーロなど)を使っています。
カラーバリエーション
20色以上あります。いくつかご紹介しましょう。
青
ここまで紹介してきた色です。レーデルオガワの青は鮮やかです。
このコードバンのブルーもたくさん見せてもらいましたが、一枚ずつ色味が微妙に異なるし、一枚の中でも濃淡がある。このページを見ているパソコン(スマホ)によっても色味が違って見えるはず。でも、どの個体も、品のある鮮やかな青なんですよ。薄い青、濃い青が上品に集まっている。
ホーウィン社シェルコードバンの青系統だとネイビーがあります。レーデルオガワの方が、ずっと淡く、透明感がありますね。
赤系
赤茶というのかな。ホーウィン社コードバンの#8よりも淡い。深みのあるワイン。これもいい。大好きな色です。
明るい空間では淡い色合いを楽しめる。
濃淡があっても繊細な印象を受けるのは、表面のきめ細やかさのおかげでしょう。
あと、緑も綺麗です。こちらもホーウィン社のシェルコードバンよりも、ずっと鮮やかなグリーン。
Crevaleathcoやthree2fourで使っているのを見たことがありますが、極めて珍しい。
香り
独特の香りがします。
ホーウィン コードバンの香ばしい香りではないです。
イタリアのミネルバやブッテーロのようなツンとする匂いではない。苦手に感じる人はいないでしょう。香りは強くなく、鼻を近づけないと分からないほどです。
この点では、革の香りマニア(いるのかな?)には物足りないかもしれない。
耐性
水
シミになりやすいです。
キズ
傷はつきます。ただ、表面にハリがありカッチリしているため、柔らかな革に比べるとそもそもキズがつきにくいですね。
メンテナンス方法
硬いブラシでガシガシこすると、薄っすらとキズが付きます。私の場合、いつものコロニルのブラシ(馬の毛)で払う程度。
油分を含んでいるため、特にオイル追加とかはいらないです。頻繁なメンテナンスは、むしろハリ・コシが落ちるので避けたほうがよいと思います。
なお、レーデルオガワ社から、コードバン専用のワックスが販売されています。こちらは非常にメンテナンスがしやすい。ベタつきが少ないため、手で塗って終わりでもよいくらい。ホーウィン社、新喜皮革社のコードバンでも使えます。
保管方法
デパートで並んでいるレーデルオガワのコードバン財布では、色が抜けたような変化を見たことがあります。財布の裏面は色が変化してないため、蛍光灯の影響によって色が飛んでいるということです。デパートの場合は商品が映えるように蛍光灯が棚のすぐ上にあるので色が抜けやすいのかもしれません。自宅で保管するときも、なるべく暗所においたほうが良いでしょう。
エイジング
色・ツヤの変化はします。タンニン革ですし、染料が使われていますからね。いわゆる「エイジング」が好きな人は楽しめるでしょう。
なお、どのように変化するかは利用方法によります。私は上記の財布を使って数ヶ月、ほぼポケットに入れていますが、ツヤがしっかりと保たれていました。
いずれにしても、新品のときのルックスはずっと続くわけではありません。キズ付き、シミもできるでしょう。使ったなりに変化する革です。
カタチも変化します。たとえば、アイテムを入れたとき。
カードによって膨らんだ部位がぷっくりとする。フラットだったコードバンに、立体的なフォルムが現れる。そこにもレーデルオガワコードバンの光沢が生まれるのです。傾斜する部位の光沢は、とても美しいですね。
あとがき
レーデルオガワのコードバンは特別です。さまざまなコードバンのなかでもとりわけ整った色目、肌目。色むらがすくなく、均一なコードバンがお好きなら、レーデルオガワのコードバンが気に入ると思います。