日本の革工房 LAST CROPS(ラストクロップス)。
厚みのある革で仕立てた、無骨で力強いアイテムを得意とするブランドです。
そのラストクロップスの財布、『カスケード(CASCADE)』を購入してみました。
本ページでは、使い勝手や特徴、メリット・デメリットについてご紹介します。
まずは、特徴をピックアップ。
- 二つ折り財布
- 丈夫だから、型くずれしない
- 内装も、すべて革で作られている
- 革の「カタマリ感」を味わえるデザイン
人と被らない二つ折り財布をお探しであれば、検討の価値ある逸品だと思います。
ぜひ参考にしてみてください。
スペック
ブランド | LAST CROPS |
---|---|
商品名 | カスケード(CASCADE) |
収納力 | ★★★☆☆ |
お札入れの数 | 1 |
お札の枚数 | 10 |
コインの枚数 | 15 |
カードの枚数 | 5 | サイズ | W100 × H105 × D35mm | 重さ | - |
素材 | 新喜皮革コードバン×サドルプルアップ |
使い勝手
LAST CROPSの財布は、ユニークなものが多い。カスケードのカタチは二つ折り財布に近いのだけど、少し違うのです。本体をフラップで留めるデザインになっています。
使うときには「フラップの開け締め」が必要になります。オーソドックスな二つ折りと比べると、使い始めるまでに1アクション余計に必要なわけです。
オーソドックスな二つ折り財布とは、「かぶせぶた」タイプのこと。「財布を留める構造」がないため、開いてすぐに使える。利便性に優れたオーソドックスなデザインです。
ただし、このタイプにはデメリットもあります。
たくさんのお金を詰め込むと、どうしても財布が膨らんでしまう。財布のカタチがカチッと定まっていないためルックスも悪いですし、歪みによって負担がかかり続けているわけです。だから、型崩れが起きやすい。
カスケードはフラップで留めることによって、たくさん詰めこんでもカチッと閉まり、本体がブレない。だから負担がかからず、長くキレイなカタチを保つことができるわけです。堅牢性をプラスしているんですね。
ちなみに、LAST CROPSは、いくつか「フラップで留める」タイプの財布をラインナップしているのだけど、カスケードはもっとも「フラップが長い」モデル。
数あるラストクロップスの中から、カスケードをセレクトしたのは、この「一般的ではないルックス」に惹かれるものがあったからです。エッジの効いたデザインは、どこに置いても映えますね。
さて、それでは使い勝手に迫ってみましょう。
サイズは、オーソドックスなものより少し大きめ。ボリュームもあるため、男性の手でやっとつかめるくらい。
しっかりと留められたフラップは、中央を弾くようにすると、パチパチンとダブルホックが小気味良く鳴り、開かれます。
フラップを開くと、こんな感じ。
さらに開くことで、中のアイテムを使えます。
全体はこんな感じ。
お札
カスケードの札入れは、ガバッと開きます。
内装もゴージャス。革の裏面は見えず、ちゃんと表革が貼られています。安物の革財布では、ここにシャンタンなどの化学繊維が使われています。こういった普段目にしないパーツにも、LAST CROPSのコダワリが見て取れます。このつくりの丁寧さでは日本の革工房の中でも、トップクラスですね(その分高価ですが・・・)。
革の表面が使われるメリットは、ルックスの良さだけではありません。滑りが良いため、お札の出し入れがスムースなのです。だから気持ちよく使えるんですね。
つくりも独特です。片方が縫製されていません。だから、ガバッと開いて、見やすく、取り出しやすく、入れやすい。
カード
段上のポケットが4つ。
一般的なカードより少し長い、クオカードを入れても、少し余裕のある幅です。
薄いカードなら2枚重ねで収納できますが、クレジットカードのようにエンボスのある厚いカードは1枚にした方がよいです。閉じにくくなるからです。
最上段は、カードが隠れてしまいます。持ち歩くけれど普段使わないカード、たとえば免許証や保険証などを入れるのに最適です。
コインポケットの上部も、スリットになっていて、カードを挿入できます。
1ポケット1枚なら、合計5枚。
これは好みが分かれるポイントでしょう。一般的な二つ折り財布と比べると、収納は少ないのです。もしこれで足りないなら、札入れに収納するしかないでしょう。ただし、ポケットが深いため、納まりはよくありません。
コイン
ボタン付きのフラップで、普段は閉じられた状態。ここだけ見るとWILDSWANSのタングにそっくりです。
こちらはシングルボタン。コインポケットの内装も革張りされています。スゴイ。
中は折り込みマチですね。
ハッキリ言って使い勝手は、良くない。
コインを使うとき、マチを広げて、開口部が上を向くようにしないとコインが使えないわけですが(これは一般的な財布も同じです。)
このとき、コインポケットのフラップ、カードポケット、さらに財布を留めるフラップが連なるため、とにかく「縦に長くなる」のです。
コインポケットの上に、いくつかのパーツがそびえ立ち、それらが倒れてくるのを支えなくてはいけない。
財布を留めるフラップを短くするだけで、使い勝手が格段に上がると思うのです。ただ、カスケードが発売されてから5年以上経った今でも、このフラップデザインは変わっていません。
なぜLAST CROPSは、「使い勝手」を改良しないのか。
それは、大きなフラップデザインこそが、カスケードの特徴だからでしょう。
上質な革を惜しげなく使うことによる、圧倒的な迫力。「所有欲を満たすプロダクト」であることを「ウリ」にしているのだと思います。(カスケードに限らず、LAST CROPSのプロダクトは使いやすさよりも、ルックスや所有欲を満たすところに舵を切っている気がします)
言い換えると、コインの使いやすさを求めるなら、カスケードをセレクトするべきではないのです。
特徴
コードバンの贅沢なつくり
外装は、姫路市のタンナー、新喜皮革のコードバン。
世界的にも定評がある最高級皮革です。個人的には、より高価なホーウィン社のコードバンと比べても、遜色ない名革だと思います。
参考:ホーウィン社と新喜皮革のコードバン。どちらが優れているのか。
スムースレザーの中では、最も高価な革なのだけど、それを一枚革でぐるりと仕立てているのがカスケードのすごいところ。ブランドロゴを含めて、コードバンの外装には飾りがない。「素材そのもの」が最高だから、必要ないのです。
LAST CROPSに限らず、「余計な装飾がない」ことは上質な財布を見極めるためのポイント。素材と仕立ての良さで勝負するしかないからです。派手ではないし、ブランドであることを誇示するマークもない。それでも強く惹かれるのは、ズバ抜けた品質のプロダクトである証です。ゴテゴテとした装飾でごまかす必要はないのです。
革財布が高い理由は、天然素材である「革」のサイズに個体差があるから。ソリッドなカタチの財布も、素材となる革のカタチはイビツです。そこから財布のパーツを切り取ることになります。
コードバンは年々希少になっているだけでなく、革の面積が小さくなっているため、カスケードのように「大きな一枚革」を切り取ることができる個体がそもそも少ないのです。非常に贅沢な財布です。(カスケードのコードバンモデルは定番として売られていないは、作ることができないからでしょう)
ヌラリとした光沢感は、バツグンの滑らかさとオイルでコーティングされている証。実は本作は購入後、一年以上経ってのレビューです。その間、たまに手に取るくらいで、ほぼノーメンテナンスだったのですが、輝きは色あせていません。新規皮革のコードバンのメンテナンスフリーさは、驚くべきところです。
革のカタマリ感がずば抜けている
一枚の革がちゃんと厚みがある。だから、財布全体で見たときに、非常にボリューム感のあるプロダクトになるのです。
2000年代後半から、小ささや薄さをウリにした財布が出てきましたね。
カスケードは、そういったトレンドとは真逆です。コンパクトで携帯性に優れた財布が欲しいなら、本作をセレクトするべきではないのです。
革マニアが満足できるように、上質な革をトコトン贅沢に使用。さらに、革の銀面を張り合わせた仕立てになっているから、美しい表情だけが目に入る。厚みがあるからこそ、革のカタマリ感が堪能できるわけですね。
コードバンの使いやすい財布なら、他にいくらでもあります。本作は道具としての財布ではなく、コードバンの味わいを堪能する財布なのです。
美しいコバ
財布本体を守る、コバの仕上げも素晴らしい。
革の断面を切り落とすだけでなく、ちゃんと丸みが出るように磨かれている。手間のかかった仕上げです。
あらゆるコバが、美しく仕上げられています。
あとがき
革の上質感を、トコトン味わえること。
強固で、型崩れせず、ずっと使えること。
カスケードの特徴は、これらに尽きると思います。
もっと使いやすい財布もある。もっと小さくて携帯性にすぐれたものもある。
そういった機能性よりも、上質な革のプロダクトとして堪能したい。そんな人にふさわしい財布なのです。