腕時計の革ベルトには、2種類の購入方法があります。
- 市販品を買う
- オーダーメイドで作る
本ページでは、両者を手に入れてきたユーザの視点で、
それぞれの特徴、メリット・デメリットを分かりやすく解説します。
市販品とオーダーとの比較
オーダーで指定できることは以下のとおり。
市販品 | オーダー | |
---|---|---|
革の選択 | できない | できる |
色の選択 | できない | できる |
長さの指定 | できない | できる |
厚みの指定 | できない | 2mm〜4mmくらいで調整できる工房もある。 |
穴の位置・数の変更 | できない | 位置、数を変更できる |
結果として、以下のような違いが生まれます。
市販品 | オーダー | |
---|---|---|
フィット感 | 腕の細い人はフィットしない | フィットする |
見た目 | 野暮ったいかも | スッキリ |
手に入るまでの期間 | 在庫があればすぐに | 3週間〜1年 |
ベルトの上質さ | 低〜中。 メイカーによる。 |
低〜高。 職人のスキルによる。 |
価格 | 2,000円〜20,000円 | 5,000円〜50,000円 |
満足度 | 普通〜高い | 高い |
オーダーの方が良く見えるかもしれませんが、
市販ベルトでサイズ、革、品質に満足できるならオーダーの必要はありません。
よりフィット感を高めたい。好きな革を使ってみたいなど、オーダーならではの満足できるポイントがあるわけです。そこに価値を感じられるかどうかですね。
それではオーダーの特徴をご紹介しましょう。
オーダーの特徴
本章ではオーダーの特徴を、市販ベルトと比べながら解説します。
市販ベルトで納得できないからこそ、オーダーするわけですが・・・。
では、オーダーすることで本当に満足できるのか?ハッキリさせましょう。
好みの革を選ぶことができる
シュランケンカーフは、ドイツの高級レザーです。
市販ベルトではあまり採用されていませんが、オーダーならチョイスできる。
また、ベルトの裏面は見えないため、安価な素材が使われることが多い。
使っている革も、ほとんどの商品で解説されていません。
つまり、好きな革が使われたベルトに出会うのは難しいのです。
でも、オーダーなら、表・裏ともに革を選択できる。
たとえば、両面コードバンの組み合わせは、オーダーベルトでしかありえません。
好みの色を選ぶことができる
好きな色を組み合わせも、オーダーなら叶えることができます。
淡い色を合わせてみました。
オーソドックスだけど、落ち着きがあり、ラグジュアリーな装い。
普段は見えない裏面だから、コントラストを効かせた冒険もできる。お店では買えません。
ただ置いてあるときも、見て楽しめる。毎朝ワクワクする。だから手に取りたくなる。
ほとんどの人は革ベルトを着け外しして遊んだりしません。
「より多くの人がチョイスするだろう色」、たとえば黒、ブラウンなどの「ビジネスからカジュアルまで対応できるカラー」がお店に並ぶのは、たくさん売れるからです。だから、本当に自分が好きなベルトを見つけることすら難しい。見たことがないものを好きにはなれないのです。
ジャストサイズのベルト長にできる
手首のサイズはそれぞれ違う。細い人もいれば、太い人もいる。
だから、お店に並ぶ革ベルトは「ほぼすべての人が装着できるサイズ」で作られています。
長さは、75ミリと120ミリくらい。
誰でもフィットするように、たくさんの穴が空いています。
量産できるから生産コストが下がり、販売価格も安くなるため、悪いことではないですね。
ちなみに、NOMOSなどの一部ブランドは、ベルト長をS・M・Lとサイズ展開しています。もちろん、生産・管理コストは、価格に反映されているでしょう。
世界中で売るため、ほとんどのベルトが「世界標準のサイズ」で作られているわけです。
欧米人に比べて日本人は細腕だから、ベルト長が足りないことはほとんどないはず。言い換えると、ベルトが長く、見た目や使い勝手が犠牲になっているわけです。
ベルトが長いから、無理に曲げないと装着できない。革に負担がかかり、寿命が短くなる。
装着後も遊びができる。野暮ったく感じることがある。
オーダーベルトなら、こういった不満を解決できます。
「最低限の長さ」でオーダーできるから、無理に曲げずに装着できる。長く使える。
手首にジャストサイズのベルトは、スッキリとした見た目になります。
遊革を無くすことができる
この稼働するパーツを「遊革(ゆうかく)」といいます。
定革から出た剣先がプラつくし、モノとぶつかったときに反り返ることもある。
遊革に収めることで、ピタッと留めることがができます。
では、なぜ遊革が必要なのか?
ほとんどの人にとって「ベルトが長すぎる」からです。
ジャストサイズにオーダーすることで、遊革は不要になります。見た目もスッキリしますね。
デザインとして残すのは「あり」です。
「定革と遊革で違った色にする」などの遊びのあるオーダーに応えてくれるかもしれません。
素早く、着脱できるようになる
ベルトの長さに「遊び」が無くなるため、扱いやすくなる。剣先が短いから、着脱時にベルトをアレコレと触らなくて済む。よりスピーディーに装着できるようになります。
遊革がない場合は、金属ベルトとほぼ同じアクションで装着可能です。
Dバックルを利用する場合、より効果を実感できます。
市販品よりも高価なものが多い
市販の革ベルトは、2,000円〜20,000円ほどで手に入ります。
一方、オーダーベルトは5,000円〜50,000円くらいが相場。量販よりも、ずっと高価です。
価格は、オーダーする工房、革によって違います。実店舗を持つ工房なら、高くなる。
また、仕上げのレベルによっても値段が変わります。
腕時計のベルトは微細かつ、繊細な革製品です。細部の仕上げにコダワル職人さんほど時間をかけ、極めて美しいプロダクトに仕上げてくれる。だから高価になる。
どこで満足するかは、オーダーする人が決めること。正解などありません。
サイズが合えばいいだけなら、安価なオーダーでも満足できるはずです。
ほとんどのメーカーがオーダーを受け付けていないのは、手間も時間もかかるからでしょう。
たとえば、定革にきちんと収まるのか。など、「お客さんが間違えているかもしれない」リスクを考慮して、デザインしないといけない。気も使うし時間もかかる作業なのです。
オーダーの打ち合わせをしている時間は、モノづくりができない。アレコレと相談したうえで、オーダーが流れるリスクもある。割に合わないビジネスなのでしょう。
完成までに時間がかかる
3ヶ月待っても、完成しないかもしれません。
オーダー前に納期を確認しましょう。
「これまでに存在しない、世界にひとつの特別なベルト」を特注で作るわけです。
時間がかかって当たり前。待っている時間が長いほど、出来上がったときの喜びはひとしおです。待つほどに期待が膨らむのもオーダーの醍醐味ですね。
いくつかの工房でオーダーしましたが、完成期間はそれぞれ違いました。
- 2週間
- 1.5ヶ月
今オーダーをお願いしてる工房は、10ヶ月ほど待っていたりもする。
サイズを間違われることがある
5千円でオーダーしたベルトは、指定した穴の位置が10mmズレました。ちなみに、このレベルのミスは対応してもらえると思います。
安いから、オーダーが殺到する。ミスも増える。安価なオーダーは「サイズ合わせ用」と割り切ったほうが良いかもしれません。
仕上げの美しさは、価格に比例する
安価なオーダーベルトは、数日で完成します。
1ヶ月以上かけて作られたベルトと比べると、細部の仕上げが甘い。
たとえば、ステッチピッチの繊細さ、美しさがまったく違う。
剣先の美しさも。きちんとヘリが落とされていますね。
美しい仕上げのベルトは高いし、仕上げが甘いものは安い。
そういうものです。安くて高品質なベルトは存在しません。
正解はありません。「どこに価値を見出すか」でオーダーしましょう。
(サイズ感だけであれば、安価なオーダーだって満足できるはずです)
はじめてのオーダーで、最高のサイズ感は難しいかもしれない
サイズの調整は、もっともこだわりたいところ。
ただ、「はじめての革ベルトオーダー」で最高のフィット感は、難しいかもしれません。
完成品を装着してみると、ちょっと違和感を感じることがある。
剣先を10mm変えた2本のベルトをオーダーしてみました。
定革から15mm出るサイズ。
定革から25mm出るサイズ。
わずか10mmですが、かなり印象が変わる。
どちらを気にいるかは好みによるため、正解はありません。
個人的には10mm出るサイズの方がスッキリして気に入っています。
オーダーは、やり直しが効きません。
mm単位のジャストフィットを追求したいなら、はじめてのオーダーは安価な工房にお願いして、長さ、厚みなどの「あなたのお気に入り」を見定める。その後で、本当にオーダーしたい工房にお願いするのも手です。ヤフオクやメルカリで5,000円未満でオーダーを受けている職人さんもいますね。
満足感が高い
財布、手帳、ブックカバー、スマートフォンケース。
さまざまな革製品をオーダーしてきました。
「思い通りにオーダーできたときの満足感」は、腕時計の革ベルトがもっとも高い。仕事やプライベートで毎日使う、もっとも身近な革製品だからです。
また、素肌に装着する、唯一の革製品で、近くで見るアイテムです。
自分のコダワリを、小さなボディにギュッと詰め込んだ嗜好品。
自分の腕に合うように仕立てられた、世界でただ1つのプロダクトは格別です。
あとがき
市販品で、革、色、サイズなど満足できるなら、あえてオーダーする必要はないでしょう。ずっと安価ですしね。オーダーだけの満足ポイントがあるならば、オーダーすればいい。
まずは安価な市販品でサイズや色など自分の好みを押さえる。それからオーダーでも良いと思います。