WILDSWANSの定番の皮革、サドルアップやフルグレインブライドルレザーは堅牢で厚みがあります。「革のカタマリ感」がバツグンで力強い印象。
そこに「美しさ」をプラスしてくれるのが、コードバンを使ったモデルです。
本ページでご紹介する財布は、WILDSWANSの代表作、グラウンダーのコードバンモデル。コードバンの財布を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
グラウンダーの特徴について
左:サドルアップ 右:フルグレイン
グラウンダーは、WILDSWANSの顔ともいえる、定番の二つ折り財布。10年以上続く、ロングセラーです。
WILDSWANSの得意とする皮革、サドルアップとフルグレインブライドルレザーで仕立てられたものがラインナップされています。それぞれの特徴についてはこちらをご覧ください。
参考:サドルアップのグラウンダーのレビュー
参考:フルグレインブライドルレザーとは何か
では、これらの定番モデルと比べて、コードバンモデルはどういった特徴があるのでしょうか?
これはとてもシンプルです。使われている素材がコードバンになっています。
札入れ、カード入れ、コインポケット。いずれも同じつくり、サイズも一緒です。つまり、財布としての機能においては、違いはありません。
そこで、本ページでは、「コードバンだからこその特徴」にフォーカスして紹介していきます。
WILDSWANSのコードバンとは何か
コードバンの真髄は、そのバツグンに美しい表情にあります。
だからこそ、WILDSWANSに限らず、日本有数の革工房がコードバンの財布をラインナップしているわけです。
では、WILDSWANSのコードバンとは何なのでしょうか。
ここではその特徴を押さえてみましょう。
世界最高峰のコードバン
コードバンとは馬のお尻の皮から、ごくわずかだけ採取できる「コードバン層」と呼ばれる部位のこと。とても密度の高い線維(コラーゲン)の集合です。
削り出したときは、線維が毛羽立った状態です。こんな感じですね。みなさんがイメージするコードバンとは大きく違っているのではないでしょうか。
この繊維をガラス玉でプレスしながら磨きあげることで、圧倒的にスムースで、輝く表情に仕上げているわけです。蓄積した経験によってなせる、職人の業です。
コードバンの作成期間は、6ヶ月以上にも及びます。
技術も時間も必要となるため、馬の原皮から仕上げまで一貫し、「上質なコードバン」を作ることができる会社(タンナー)は、世界に2社しかありません。
1. アメリカ ホーウィン社
2. 日本 姫路市 新喜皮革
そして、WILDSWANSのコードバン財布では、この2社のコードバンが採用されています。
この2社のコードバンは、美しさ、質感、ハリにおいて世界最高峰。世界中のトップメゾンが採用しています。例えば、もっともメジャーなコードバンアイテムの1つ、ALDENの革靴にはホーウィン社のコードバンが使われています。
WILDSWANSのコードバンモデルは、世界最高峰のコードバンを使って、ジャパンメイドで仕立てた財布です。言うまでもなく上質です。
WILDSWANSのコードバン財布の特徴
私が手に入れたのは、新喜皮革のコードバンモデルです。
新喜皮革のコードバンモデル
ここ数年のWILDSWANSの財布を見ると、外装にコードバン、内装は別の革(サドルアップやブッテーロ)の仕立てとなっています。(ちなみに、本ページでご紹介するのも、そのパターン。)
外装は新喜皮革のコードバン。継ぎ目の無い、一枚革で仕立てられています。
内装は、マシュア社のサドルアップです。
さて、新喜皮革のコードバンについて、押さえてみましょう。
コードバンの基になるのは、馬のお尻の皮、その中間層にある「コードバン層」と呼ばれる部分だけです。「シェル」とは皮の内側にある線維のこと。皮の表も裏も使わず、その中間だけを削り出して使っています。そのため、海外では「シェルコードバン」とも呼ばれます(「シェル」とは外層の内側にある細胞のことです)。
もともとコードバンには色が付いていないため、染色する必要があります。
これもWILDSWANSなどの革工房が行うのではなく、新喜皮革などのタンナーが行います。(WILDSWANSのコードバンは、染色などの仕上げを専門とする「レーデルオガワ社」が染色したものです)
染色にはいくつかの方法があるのですが、WILDSWANSのコードバンでは「水染め(アリニン仕上げ)」という手法が採られています。水に溶けやすい染料で色彩を加えることで、コードバンの魅力である、風合い、スムースさ、輝きを活かしつつ、美しい色に染め上げることができるのです。
新喜皮革×レーデルオガワ。
この組み合わせで仕立てられたコードバンは、GANZOなども採用しています。日本有数の革工房で使われる、最高のコードバンなのです。
世の中には数千円で手に入る「コードバン風」の財布もあります。そのほとんどは、そもそもコードバン層を使っていません。革の表面をペンキで塗るように色を添える「顔料仕上げ」で「コードバンのように」仕立てられているのです。
こういった「コードバン風」のアイテムは、エイジングによる美しい変化を楽しむことはできません。買ったときが最高潮、あとは下降していくだけなのです。
長く使うアイテムだからこそ、最高のコードバンをセレクトしましょう。きっと長く愛用できるはずです。
コードバンとフルグレインモデルとの比較
さて、定番のフルグレインブライドルレザーとの違いを見てみましょう。
こちらが、フルグレインブライドルレザー。
こちらがコードバンです。
フルグレインブライドルレザーはシボがある表情です。一方、コードバンは飛び抜けてスムースなのが伝わるでしょうか。キレイに磨かれたコードバンには、目に見える凹凸は存在しません。結果として、景色を映し出すほどの表情になるわけです。
フルグレインブライドルレザーがこちら。
コードバンがこちら。
「指のカタチ」が、よりハッキリと映し出されているのが伝わるでしょうか。
反射率がとても高く、「指の色」も映るほど。これもまた、コードバンの醍醐味です。
レーデルオガワのコードバンはマットな表情なのですが、これは最初だけ。使い込むことで、線維が自然に寝ていくのと、オイルが表面をカバーしていくため、ギラリとした光沢が現れてきます。
WILDSWANSのコードバン財布を手に入れる方法
WILDSWANSのコードバン財布を手に入れる方法は3つあります。
1.公式サイトで買う
WEBショップで販売されています。
また、たまに数量限定でレアなコードバンが使われることも。ただし、争奪戦になりがちです。
コードバンの財布が出るかどうかは、事前に公式サイトで告知されますから、チェックしておくと良いでしょう。
2.オーダーする
WILDSWANSの財布は、オーダーメイド可能です。
オーダーできるコードバンは、ホーウィン社のみ。
価格は、時価です。サドルアップやブッテーロを使ったオーダーなら、1.2倍になります。例えば、10,000円のアイテムなら12,000円ですね(2018年1月時点)。
コードバンはその時々によって値段が変わるそう。ホーウィン社はアメリカ シカゴに居を構えるタンナーですから、円安のときは高くなるのでしょう。
完成までの期間は6ヶ月ほど(モノによって変わるとのこと)。ちなみに、WILDSWANSに限らず、革製品のオーダーは時間がかかるものです。
なお、オーダーは実店舗でしかできません。遠方の方は、京都や東京に遊びに行ったときに足を運んでみてください。例えオーダーしなくても、メンテナンスなど実店舗ならではのサービスを受けることができます。
3.ネットで買う
ご紹介したとおり、WILDSWANSのコードバン財布は、そのすべてが限定モデルと言えます。そのため、買い逃すと手に入れることは難しくなってしまいます。
そういったときに、使えるのがヤフオクですね。
WILDSWANSのアイテムはコレクションとして購入される方も多いようです(私も人のことを言えないのですが…)。そのためか、新品のコードバン財布が出品されることがあります。落札価格は定価程度、ものによっては定価を超えます。
個人的には、皮革製品をショップ以外で手に入れるのはリスキーかと思うのですが、どうしても欲しいならしかたないでしょう。
ヤフオクで買うなら、新品を購入されることをおすすめします。新品から育てたコードバンの方が、愛着が生まれて、長く使えるからです。
あとがき
WILDSWANSの定番皮革といえば、サドルアップとフルグレインブライドルレザーです。その特徴は、これまでご紹介してきましたが、どちらをセレクトしても革マニアが満足できる仕上がりです。
では、定番皮革ではなく、コードバンをセレクトする価値はどこにあるのでしょうか?
個人的には、その美しい表情にあると思っています。艷やかにエイジングしていくのも醍醐味ですね。
正直、「はじめてのWILDSWANS」なら、あえてコードバンをセレクトする必要は無いと思います。定番の皮革よりも、飛び抜けて高価ですし、キズ付きやすいのです。コードバンが総てにおいて優秀とは言えないんですね。
また、WILDSWANSの財布は、正直クセがあります。
ですから、まずは定番のサドルアップかフルグレインのものを使ってみて、気に入ったらコードバンにシフトしてみるのがオススメです。どんなにルックスに惚れこんでも、結局のところ財布は道具です。みなさんの利用スタイルに合わなければ、長く使うことは難しいでしょう。
サドルアップ(またはフルグレインレザー)→ コードバン。
といったように、WILDSWANSのアイテムをセレクトするのがおすすめです。というか、私自身がまさにこのケースでした。まず、サドルアップのグラウンダーを使ってみて、気に入ったため、コードバンモデルを購入しています。