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実践!シェルコードバンのクリームによるメンテナンス。光沢が無くなり、カサつきはじめたコードバンに輝きを取り戻す手順

30以上のシェルコードバンのアイテムを「美しい状態」をキープするためにメンテナンスを続けてきました。

本ページでは、「はじめてのメンテナンスでも失敗しない、シェルコードバンのメンテナンス」について分かりやすく解説します。

最後までお読みいただければ、以下がわかります。参考にしてみてください。

  • メンテナンスに必用な道具
  • コードバンの色を変えずに、ツヤを出す方法
  • 光沢や落ち、カサついた状態からツヤと潤いを取り戻す方法

メンテナンスするシェルコードバンについて

メンテナンス対象は、ホーウィン社シェルコードバンです。なお、本ページの手順にて、新喜皮革社、レーデルオガワ社のコードバンも同様にメンテナンス可能です。

シェルコードバンの魅力は、美しい光沢です。特にギュッと曲がったエッジ部のツヤがたまらない。これが新品のコードバン(油分を潤沢に含んだ状態のコードバン)。

この面はまだ油分が残っています。光沢は控えめですが、触れるとしなやかでカサつきもない。

コードバンから油分が抜けると光沢が落ちてしまいます。エッジのダメージが顕著ですね。カサカサとした手触りで、弾力も落ちた状態です。

ギュッと折れる部位は圧力がかかるため、油分が両サイドに移動してしまったのでしょう。

結論としては、光沢がなくなったコードバンにも、輝きを取り戻すことができます。

本ページのメンテナンス後の表情が以下です。

なお、本ページの手順は、ツヤを出したい人にもおすすめです。手間はかかりますが、コードバンの光沢が増す、楽しい作業です。

コードバンのメンテナンスに必用な道具

以下のアイテムを使います。

  • ブラシ
  • ★クリーム、またはワックス
  • ★磨き用の布
  • ★拭き取り用の布
  • レザーグローブ

※★マークは、必須アイテム。

以下、道具の選び方について。

ブラシ

馬、羊など、さまざまな動物の毛のブラシが販売されています。それぞれ、革に与える効果が異なるのですが、シェルコードバンのメンテナンスで特にこだわる必要はありません。ゴシゴシやるわけじゃないので。私は馬の毛を使っています。

なお、補色用クリーム(色の付いたクリーム)で使ったブラシは、使わないでください。コードバンへの色移りを避けるためです。

おすすめはコロニルのブラシ。持ち手が微妙にカーブしていて持ちやすい。毛足も長くてビッシリと生えていて硬すぎないため、革へのキズも少ない。そこそこ大きいからメンテナンス効率が良いです。あと、触っていて気持ちがいい。シェルコードバンに限らず、革製品のメンテナンスに使えます。ひとつ買っておけば良いでしょう。私は2014年に購入していて、8年以上愛用しています。

ワックス or クリーム

コードバンにも使えるワックスやクリームが、各社から出ています。

メジャーなのは、コロニルの「シュプリーム デラックスクリーム」。本ページではこちらを使ってメンテナンスします(詳細は後述)。どれかひとつ買うなら、これを選べば良いでしょう。コードバン以外のタンニン革でも使える万能選手です。

コードバンのアイテムをたくさんお持ちなら、長谷革屋もおすすめです。コードバンを作るプロがブレンドした「コードバン専門」のワックスです。新喜皮革、ホーウィン社、どちらのコードバンでも使えますし、バツグンの光沢を出すことができます。「ツヤ出し」したいなら、こちらの方が良いと思います。ちなみに、ブッテーロなどのさまざまなタンニン革でツヤが出ます。

ワックスが黄色いため、淡い色のコードバン(ナチュラルやウィスキー)に使うと色が変わってしまうかもしれません。黒、赤などの「濃い色のコードバン」に使うならほとんど影響ありません。

「色への影響」が心配だったので、白に近いヌメ革で実験してみました。明るい空間で目を凝らしてみると「わずかに色が乗るかな」といったところです。回数を重ねても、ほとんどわかりませんでした。ただ、ナチュラルのコードバンで試したわけではないため、絶対に色を変えたくないなら、コロニルのような、無色のクリームが無難です。

なお、「水に濡れてシミができてしまったシェルコードバン」を長谷革屋のワックスのみで、水シミを消すことができるし、艶出しも可能です(下記の検証動画を参考にしてみてください)。

濡れたシェルコードバンのシミを無くし、光沢を取り戻す方法

さて、ワックスに悩みだすとキリがありません。サフィールからも「コードバン専用」をウリにしたクリームが出ていますね。あとコロンブスも。

1つだけ選ぶなら、コロニルをおすすめします。コードバン以外のタンニン革にも使えるし。無色(乳白色)だから、革の色への影響も極めて少ない。繰り返しますが「革の色を変えたくないなら色のないワックス/クリーム」を推奨します。

※長谷革谷もブッテーロなどに使うとツヤツヤになることを検証済みです。しかし、コロニルほどたくさんの革で試していないので汎用性を断言できません。それと、ツヤがかなり出るため、ゆっくりと変化させたい人には向かないと思います。

なお、私はコードバンをメンテナンスする際は、コロニル、長谷革谷のどちらかを使っています。

または、レーデルオガワのコードバンワックスも。こちらは塗りやすいですが、光沢は控えめ。

参考:コードバンタンナー レーデルオガワから発売されたワックスの検証

さて、本ページでメンテナンスするのは、ホーウィン社 シェルコードバン。色はバーボンです。ナチュラルほどではないけれど、淡色だからワックス色の影響を受けやすい。(写真は、検証用のバーボンのハギレ)

では、バーボンにはどちらのワックスが良いのか?

結論は、どっちでも良いです。

バーボンのハギレ革を使って、両者を検証済み。少量であれば、どちらのワックスも「色が濃くなりすぎる」ということはありませんでした。長谷革屋の方がツヤが出るため、わずかに濃くなった気はしますが。

今回は、「色の変化」を早めたいわけではないので、コロニルのクリーム(カラーレス)を利用します。


クリーム/ワックスを塗ったり、拭き取るときに使います。

Tシャツより薄くて、白い生地のほうが良いです。本ページで利用しているのは、「無印良品のふきん」。12枚で500円ほどです。高価な布は必要ありません。

「指の腹」で塗っていきます。大きすぎず小さすぎずのサイズが作業しやすいです。とりあえず3cm×10cmくらいの長さで準備しておけば良いでしょう。「使いやすいサイズ」は人によって違います。使ってみて、長ければ短くカットすればいい。私は3×5cmほどが使いやすいと思います。

ワックスを塗る用と、拭き取る用。少なくとも2枚準備してください。

ちなみに、コードバンに限らず、革製品全般に使えるので、たくさん作っておくと便利。すぐにメンテナンスできますから。

さて、「薄くて、白い生地」をおすすめするのには、理由があります。

均等に塗ることができる

薄い生地には均等にワックスをなじませやすいため、「特定の箇所に塗りすぎる」ことを避けることができます。

指で塗るとコントロールが難しいし、Tシャツやタオルのように厚い生地だと、クリームの含み具合(後述)がよく分からないです。

力の入れ具合を、コントロールしやすい

薄い生地だと、コードバンに塗るときに「指の力加減」がわかりやすい。

タオルやTシャツのように厚みがある生地は、塗っているかどうかよく分からず、ギュッと押し込んでしまいがちになり、均等に塗るのが難しいです。

色落ちを確認できる

磨いているときに、生地をチェックしましょう。白い生地に色が移る可能性があります。以下はNGの例。白い生地でこするとこのように色落ちがわかります。

レーデルオガワ コードバンケアワックスの検証。レーデルオガワ、新喜皮革、ホーウィン社のコードバンでの効果

微妙に色が移っているのが分かるでしょうか。

白い生地だとチェックしやすく、力加減やワックスの量をコントロールしやすい。

指にワックスを乗せてコードバンに塗ったり、「白くない生地」を使うと、チェックできません。

クリームが無駄にならない

タオル地のように厚みがあると、タオル内に浸透したクリームは無駄になります。


まとめます。

「薄くて、白い生地に、均等にクリームをなじませる」ことで、作業効率を上げ、コードバンへの塗りムラが起こりにくくなる。さらにクリームを無駄なく使えます。

きめ細かな生地

仕上げその1で使います。

革製品を買ったときに付いてくる不織布が使えます。コードバンに限らず、あらゆる革製品のメンテナンスに使えます。捨てずに取っておきましょう。

レザーグローブ

仕上げ、その2で使います。必須じゃないけど、ひとつあると便利。私は5年以上愛用しています。

メンテナンス動画

本ページで解説するメンテナンス方法で、実践した結果です。文章で分かりにくいところがありましたら、動画を参考にしてみてください。

シェルコードバンのクリームによるメンテナンス方法。カサついて光沢が落ちた表情に、再びツヤを取り戻す動画

手順1.汚れを落とす

ブラッシングで汚れを払い落とします。

この工程で「目に見えないレベルのチリ」も除去したい。
この後、ワックスを乗せて磨いていくためです。ゴミが残っているとコードバンの中に入り込んでしまうため、なるべくキレイにします。目に見えるホコリは完全に取り除きましょう。

手順2.クリーム or ワックスを塗る

手順は以下のとおり。

1.クリーム or ワックスを生地に塗る
2.コードバンに少しずつ乗せていく

以下、手順の詳細です。

ワックスを生地に塗る

コロニルは柔らかいテクスチャです。

指で少量(小豆1粒弱ほど)取ります。

指の腹にこすり付けて、薄く伸ばして、

指を生地に乗せて、生地全体になじませます。

「ワックスを触れていない指」で生地に触ると、少し湿った感じがするはず。「ワックスが乗ったことがわかる」くらいでOK。ヌメッと手に付着するくらいだと付きすぎです。

ダイレクトに生地に付けないのは、付きすぎる可能性があるから。このまま塗り込むと、「ムラ」になりやすいです。

付きすぎた場合は、クリームの缶のへりに擦り付けて落とすとよいでしょう。

生地への乗せ方は、メンテナンスする人の感覚や好みによると思うので、お好みで。私はクリームの感触を指に覚えさせた方がコントロールしやすいので、前者の方法が多いです。

コードバンにワックスを乗せる

どれくらい塗るかは、コードバンの状況によります。

少し乾いてきた、光沢が無くなってきた。と、感じる程度であれば、ちょっとでいい。少量でもしっかりとツヤが出るからです。
乾燥してパサつきのある状態なら、コードバンの芯部にまで浸透させた方が良いです。

どちらのパターンでも、塗る手順は同じです。

生地をコードバンに当てて、円を描きながら「乗せていく」イメージ。
弱い力で、滑らせる感じ。

ここで力を入れて、高速に磨くと、コードバンの色が変わってしまいます。色への影響を与えたくないなら、力を込めず、乗せていきます。
※色を深めたい場合も、おすすめしません。コシが弱くなる恐れがあるからです。

シェルコードバンのハギレで、強めに塗り込む検証をした生地がこちら。これだと力を入れすぎです。

一度にたっぷり塗ると、浸透しすぎてしまう。色、コシが急激に変わってしまうリスクがあります。変化してしまった後では、もとに戻すことはできません。だから「少しずつ塗る」を繰り返して、ゴールを見極めます。

なお、本ページのように淡い色のコードバンに、水分の多いクリームを乗せると、一時的にコードバンの色が濃くなります。不安になるかもしれませんが、水分が蒸発し、元の色に近づきます。

生地にワックスを追加する目安は、感覚です。生地を手で触れて、ワックスが無くなってきたら(コードバンに移り終わったら)、少しずつ追加する。追加するときも、指の腹に広げてから、生地全体に広げます。

観察する

全体に塗り終わったら、10分ほど待つ。変化を観察して、さらにワックスを塗るのかを判断しましょう。

この時点で、エッジのカサつきが収まり、色味も均一になっていました。

色の変化

ナチュラルやバーボンなど、淡色のコードバンでは、色の変化を観察します。

水分を含んだクリームは少量でも影響を与えるリスクがあります。コロニルも水分が多めだから、一度で大量に塗り込んでいません。

黒、バーガンディなどの濃い色のコードバンをメンテナンスするときや、「ワックスで色出ししたい」が目的なら、気にする必要はないですね。

触り心地の変化

コードバンに触れて、クリームの浸透、ハリ感を確かめてみます。

メンテナンス前と比べると、わずかに潤っているのが分かるはずです。

指の腹で押してみて、ハリ感も弱まっているように感じたら、ここで辞めましょう。

個人的には「しなやかで、コシが残る」をゴールにしています。
質感は好みが分かれると思うので、ここはお好みで。

手順2.を繰り返す

色、ツヤ、コシ。これらの「自分の中でのゴール」を決めておきましょう。「自分がちょうど良い」と思うところ、その「一歩前」まで、上記を繰り返します。

繰り返す工程で、コードバンの状態や、使用するワックスよっては、ここでツヤが出てきます。(例えば、長谷革屋のワックスなら、この時点でかなりツヤが出ます。)

手順3. ワックス、クリームの除去

「ワックスを付けた生地とは別の生地」を使います。

円を描くように磨いていきます。表面のクリームを除去することを目的に。ギュッと押す必用はありません。「コードバンのハリ」を指先に感じるくらいの力で。

1〜2分で、ハッキリとツヤが出ててきます。

ひととおり磨いたら、さらに10分以上放置します。ワックスが浸透することで、ツヤ、コシが変化するからです。

ワックスの追加はいくらでもできます。しかし、除去は難しい。だから、少しずつ、丁寧に。ツヤ、コシに納得できたら、ここで終了。ワックスはもう使いません。

納得いかなければ(もっとツヤを出したいなど)、手順2.へ戻ります。

手順4. 仕上げ

仕上げ1

「磨きで使った生地よりも、細かい目の生地」で磨いて、光沢を出します。

おすすめは不織布。革財布などの革製品を買ったときに付いてくる袋です。サラリとした生地でつるりと滑る。

ゴシゴシする必要はありません。磨き上げた生地を使ったときよりも、優しく。全体になじませる感じ。

仕上げ2

レザーグローブで全体の磨き上げと、ステッチなどの細部に入ったクリームを除去してあげる。

このグローブも毛先に少しずつクリームが乗るので、普段のメンテンナンスに使えます。

完成。メンテナンス後のシェルコードバン

光沢が復活しました!

トロリとしたツヤ感。弾力もある。 

気になっていたエッジも、いい感じです。

コードバン、普段のメンテナンスについて

毎日利用しているコードバンなら、上記のメンテナンスをする必要はありません。

ブラッシングだけでOK。

ブラッシングで汚れ、ホコリを落とし、カビが発生しにくい状況を続ける。
手で触れることで、油分でコーティングされる状態になる(乾拭きが必要になるのは、手で触れない部位にも油分を循環させるときだけ)。

つまり、普段はワックスは必要ないのです。私が月に10日以上使っているシェルコードバンのアイテムは、ブラッシングしかしていませんが全く問題ありません。

あとがき

「コードバンがカサつく」のは、日頃のメンテナンスが上手くいっていない。または良くない環境(湿度の低すぎる空間での保管)が要因です。

しばらく手に触れない場合も、乾燥しやすいですね。複数のコードバンを持っているなら、たまに取り出して触れてみてください。乾きを感じるなら、ケアをした方がよいです。ひどくなる前に、ちょっとずつメンテナンスしてあげましょう。

以下はコードバンに限らず、スムースな表情の革(ブッテーロやミネルバなど)全般に使えます。何年も愛用しているオススメのメンテナンスアイテムです。