各ブランドから、コードバンのメンテナンス用ワックスが販売されています。
では、どのワックスが最適なのか?
本ページでは、各社のワックスをシェルコードバンで試してみての効果を検証します。
コードバン用のメンテナンスワックスを検討中の方は、参考にしてみてください。
検証対象のシェルコードバン
ホーウィン社 シェルコードバンの光沢がなくなり、乾燥してカサついてきました。
対象のカラーは、バーボン。ツヤがあるところは、以下のとおり。全然違う・・・。
ツヤを復活させ、光沢を取り戻したかった。さらに、ワックスによる色の急激な変化は避けたかった(使っていくうちに「少しずつ変化する楽しみ」を味わいたい)。
そこで、ワックスによる、シェルコードバンへの効果・影響を確認したくなったわけです。
検証内容
準備
以下のアイテムを準備
- ワックス
- シェルコードバンのハギレ
- 磨き用の生地
方法
シェルコードバンに、コードバン用のワックスを薄く塗る。
時間の経過とともに、変化を観察。
生地で、磨いて仕上げる。
観察対象
色、ツヤ、コシの変化を確認します。
結論
色の変化はコロニルが少なめ。ツヤも出る。
長谷革谷は(長期的に使い続けるなら)色が濃くなるリスクがある。ツヤはバツグンに出る。
詳細は後述します。
動画
ワックスの解説
検証したワックスの特徴を分かりやすく解説します。
概要
コロニル | 長谷革屋 | |
---|---|---|
テクスチャ | やわらかめ | 少し固め |
色味 | 乳白色(カラーレス) | 黄色っぽい |
塗りやすさ | ぬりやすく、浸透しやすい | 少し塗りにくい |
価格 | 2,000円くらい | 2,500円くらい |
コロニル
『シュプリームクリームデラックス』です。
「クリーム」と名付けられているとおり、柔らかい。プッチンプリンよりも少し柔らかく、「デリケートクリーム」よりも硬い。
乳白色だから、革の色への影響も極めて少ないです。
ベタつかないから、指で触れても嫌な感じがしない。
「香りが強くないこと」も、コードバンマニアには嬉しいポイント。
ホーウィンシェルコードバン独特の香りが大好きなので、メンテナンス後に香りが楽しめなくなってしまうのは残念です。でも、クリームの香りが控えめならば、問題ない(もちろん、塗り込む量にもよるのだけど)。
水分を多く含むため、コードバンへの浸透スピードも速い。
シェルコードバンは水に弱いと言われるのは事実です。急速に給水し、色やツヤが失われてしまうのです。
だから、一度に大量には塗らない。指に取って、コードバンへ直接塗りこむよりも、生地に乗せたほうが、塗りムラも防げます。
コロニルは、「コードバン専用」ではありません。
事実、コードバン以外にも使える万能アイテムです(私はミネルバやブッテーロにも使ったことがあります)。
長谷革屋
『プロ仕様コードバン用ワックス』です。
コードバン専用をウリにするワックス。コードバンのなめし職人がブレンドした、メイドインジャパンのワックス。「自信たっぷり」を感じられたからこそ、購入しました。
テクスチャは、コロニルよりも固め。擦り付けなくても、生地に乗せることができます。わずかに乗るくらいでいい。
ベタっとするため、指で触れるには少し抵抗を感じると思います。指で手軽にメンテナンスしたい人には合わないかなと。
色は黄色っぽい。利用する「コードバンの色」によっては、長期的には影響が出るかもしれません。
白いヌメ革で試してみたところ、色は変わりませんでした。
メンテナンスを続けることで色味が付いていくかもしれません。
結果
左が長谷革屋を使った部分。右がコロニル。
結論は、どちらもツヤは出る。つまり、油分が補給されます。色の変化もそれほどないため、どちらも良いアイテムです。
しかし、微妙に効果が異なります。
コロニル
磨き出すとすぐに光沢が出てくるので、効果が分かりやすいです。クリームの浸透率が高く、ツルスベの肌になる。
色は、少しだけ濃くなりました。写真では表現できないほど、わずかに。
これは着色というより油分によるコーティングと、微量の水分補給によるものだと思います。バーボンだけでなく、「白いヌメ革」でも試してみたところ、まったく変化しませんでした。革によって水分の浸透率が異なるのも理由かもしれません。
ツヤをそれほど出したくないならコロニルが良いでしょう。
長谷革屋
少量でもかなり効果が出るので、大量に塗る必要はありません。
塗った直後は、うっすらと膜をはるだけ(ワックスがコードバンに乗っているだけの状態)。だから、光沢の変化がわかりにくいです。
長谷革屋のスゴイところは、磨けば磨くほどツヤが出ること。革靴の先端やヒールを光らせたりする磨きに近い楽しさがあります。
とにかくツヤを出したいなら、長谷革屋がいい。
ウィスキー、ネイビー、#8のシェルコードでも試してみましたが、同様にツヤがでます。
「ワックスの色」が気になりますが、#8やブラックなどの濃色に使うなら影響はないでしょう。こちらも白いヌメ革で試したのですが、色は付きませんでした。
ワックスの色や、革の色よりも「ワックスの使い方」による退色を気にしたほうが良いです。コードバンは染料で彩られた皮革のため、濡れた状態で強く擦ると生地に移ります。
あとがき
ワックスには、それぞれに特徴があり、効果も違います。
自分で育てたい。ワックスによるツヤ出しは必要最低限でいいなら、コロニルを選ぶ。
ずば抜けたツヤを出したいなら、長谷革屋を選ぶ。
シェルコードバンの育て方、エイジングの楽しみ方は人それぞれだと思うし、買った人の特権なわけです。どのワックスがNo1か、私が決めるのは野暮ですね。
どのワックスにも魅力があり、多くの人に愛用されている。だからこそ、販売が続いているわけですね。
お気に入りの育て方ができるワックスを選ぶのが良いでしょう。