男性に人気のある皮革、ブライドルレザー。
カッチリとした表情が醸し出す、上質さと品格はNo1。ビジネスシーンに添えるアイテムの素材として、人気があります。
本ページでは、ブライドルレザーの特徴について、ご紹介します。
ブライドルレザーのメリット・デメリット、気になるエイジングなどについて、ホントのところを分かりやすく解説します。
高価な革ですから、本ページをご覧になってからの購入でも遅くないはずです。
ぜひ参考にしてみてください。
上質なブライドルレザーの財布。その選び方とおすすめのブランド
目次
ブライドルレザーとは何か?
特徴
ブライドルレザーの特徴は以下のとおりです。
- ハリやコシが強い
- 丈夫で耐久性に優れる
- ブルームの浮き出た表情
- バツグンにスムース
- ツヤが大きく変化するエイジング
- 厚みがあり、所有欲が満たされる
カッチリとした堅牢な革
カッチリとしていて、ハリの強い質感。指で押してみると、確かな跳ね返りがあります。ブライドルレザーの厚みにもよりますが、指で弾くとカツンと音がするほどです
また、ギュッと握ると「ギュイギュイ」と音が鳴ります。時間をかけて、タンニンでなめされた革だけが奏でることができる音。繊維がギュッと詰まった、丈夫な革の証です。
ブライドルレザーは、半年以上かけてタンニンでなめしたあと、革にワックスをたっぷりと染み込ませた革です。厚みは3〜5mmほどあるため、元の厚みでは折り曲げたり塗ったりすることができません。そのため、製品作成時は薄くスライスして使用されます。そして、薄くなっても「しなやかさ」を持ちつつ、固くて丈夫です。
カッチリとしていて、ハリがあって、そして重みもあります。まさに「男の革」といったところでしょうか。「所有欲」を満たしてくれる革です。
逆に言うと、好みが分かれる革です。
革に求めることは人によって違うはず。「優しさ、やわらかさ、あたたかさ」を味わいたいなら、ブライドルレザーは合わないかもしれません。(ミネルバを選んだ方が幸せになれるでしょう)。
ブライドルレザーの表情
ブライドルレザーの表面に見える白い粉状のものは、「ブルーム」と呼ばれます。この正体は、革に染み込ませたワックスです。ブライドルレザーの象徴であり、「ウリ」です。
ワックスは革の芯まで浸透していて、時間の経過などで少しずつ表面ににじみ出てきます。浮き出た分が白く固まることで、独特の表情を見せてくれるんですね。このブルームは、タンナーやブライドルレザーの個体差があります。また、季節によっても変わります(冬の乾燥した時期のほうがブルームが濃く出る)。
ただし、ブルームが濃く浮き出た表情を楽しめるのは、最初だけ。
普通に使っているとブルームは薄くなっていきます。ポケットやカバンに入れたり、手で触れたりすることで、ブルームが少しずつ馴染んでいくからです。財布の内側がブライドルレザーの場合も、コインが擦れることでブルームが落ちていきます。
ブルームがなくなる代わりに、ツヤのある表情が現れてきます。この変化もまた、ブライドルレザーの醍醐味。
最終的に、毎日使うアイテムでは、ブルームはほとんど無くなります。擦れない部分に、わずかに残る程度。
お店では、ブルームが見えるものが、ガラスケース内でディスプレイされていることが多いですね。手に取りにくい環境で保管されているから、ブルームが残っているのです。
逆に、触ることができるブライドルレザーのアイテムには、ブルームがありません。たくさんの人が手に取ることで、ブルームが落ちた状態だからです。
水分に強い
ブライドルレザーは天候が安定しない、英国で作られた革です。
雨に降られても、革がへたらないようにワックスを浸透させているんですね。
オイル(ワックス)と水は混ざらないため、表面がオイルコーティングされた状態にある、ブライドルレザーは、革の芯部にまで水が浸透しにくい。つまり、一般的な革と比べて、水分に強い革といえます。
もともとは馬具の素材として作られた革ですから、外での長時間の利用に耐えられるだけの強靭さが求められたわけですね。
その他の革との違い
日本の革工房で採用されるスムースレザーは、20種類くらい。
ブライドルレザー、ブッテーロ、マレンマ、ミネルバリスシオ、サドルプルアップ、…。など、日本人が満足できる上質な革、いわゆる名革と呼ばれるものですね。
例として、ミネルバリスシオと比べてみましょう。
ミネルバリスシオは、やわらかく、しっとりと手に吸いつくような質感です。
革にはそれぞれ個性があります。「どちらかが良い」ということはありません。
使う人が、「どちらを気に入るか」ということなんですね。
カッチリとしていて、凛とした力強い風格を楽しみたいなら、ブライドルレザーの方が満足度は高いはず。(一方、優しい、やわらかな雰囲気を味わいたいなら、ミネルバの方がオススメです。)
ブライドルレザーの一番の特徴は、やはり堅牢さにあります。
革を引っ張るような負荷をかけたとき、耐えきれずに裂けたりしてしまいます。ブライドルレザーはこういった過酷な使用の耐性がダントツです。
そもそもブライドルレザーは、馬具の素材として作られた皮革です。求められることは、過酷な環境でも長く愛用できること。古くから過酷な環境下で使われる革には理由があるのです。
サドルレザーとの違い
カッチリとした牛革は他にもあります。サドルレザーはその代表です。名前が示す通り、サドルなどの馬具に使用される革のことです。
では、サドルレザーとは何が違うのでしょうか?
サドルレザーはなめし後に、特別な仕上げをしません。
一方、ブライドルレザーは、ロウや植物性油などを含むワックスで仕上げます。革の芯まで浸透したワックスは、革の密度を高め、しなやかさと強靭さが増した革に変化するのです。
つまり、ブライドルレザーの方が、丈夫で、固くて、長持ちする素材として優秀です。
ブルームを取り除く、ビフォアアフター
表面にはブライドルレザーの特徴である、ブルームがかなり濃く出ています。英国のタンナー、トーマスウェア社のブライドルレザーです。
びっしりとブルームが見えるのは、最初だけ。ふつうに使い続けることで、ブルームは落ちていきます。
無理やり落とす必要はありませんが、ご利用のシーンによってはこのブルームが「よろしくないこと」もあるはず。例えば、濃色のスーツに、強くこすれるとブルームが付着してしまいます(払えば落ちるのですが)。
また、ブルームが残っている表情は、個性が強すぎるかもしれません。
例えば、「名刺入れ」に浮き出ているブルーム。「見た相手がどう思うか」ということです。革に詳しくない人が見ると、強烈な印象を持ってしまうかもしれません。
ブルームが気になる場合、あらかじめ払ってみると、いい感じの表情に落ち着きます。
というわけで、「ブルーム落とし」を実践してみた動画が以下です。トーマスウェア社のブライドルレザーのブルームを、強制的に落としています。
以下は、写真での紹介。
柔らかい毛先のブラシで何度か払ってみましょう(馬の毛でできた、靴用のブラシでOKです)。ブラシである必要はないのですが、タオルでの乾拭きなどですと、あまりブルームは落ちないと思います(ブラシの方が効率良く落とせます)。
一方向に、傷つけないように。払うような力加減でブラッシングしましょう。
何度か繰り返すと、ブルームが薄くなっていき、次第にその表情に光沢が生まれてきます。
ブラッシングのbefore/afterで、濃淡がハッキリと分かれました。一目瞭然ですね。
全体的にブラシで払ってみました。
光を取り込んで、外観を映すほどの光沢が現れてきます。ブライドルレザーのブラックは、キリッとした表情が美しいですね。
ブルームを落とした状態で、触れてみましょう。
指で触れた部分に、くすみが出来たように見えるかもしれません。
人の指にはうっすらと油の膜がある。油分が移ることでくすんだように見えます。気になってしまうかもしれませんが、このくすみこそが、美しく変化するキモです。
手から移る油分と、ブルームの油分が混ざり、ブライドルレザーに馴染んでいきます。さらに光沢が増していきます。あまり気にせずガシガシ使ってあげましょう。
ブライドルレザーを使っていて幸せだと思うのは、表情の変化が見てとれたときですね。使えば使うほどにその様子が変わっていきますから、次第に愛着も増していきます。
あえてブルームを落とすことで、一気に、そしてハッキリと表情の変化を楽しめるわけです。これは新品のときにしか味わえないことですから、興味があればお試しください。
繰り返しますが、ブルームは自然に落ちます。それを早く落とすも、自然に落とすも、使う人次第。好きなように、ブルームを楽しんでみてください。
ブルームの復活
使用するにつれて、ブルームは無くなっていきます。しかし、しばらく放置するとブルームは復活します。ブライドルレザーの面白い特徴です。
革の中に浸透した油分が、表面に出てきて、再び固まった状態ですね。
ここでは、ブルームの復活について、見てみましょう。
こちらの写真は1/15に撮影したもの。ブルームを落とした状態です。(右半分のブルームも、落とした状態で放置しました)。
そして、6ヶ月、ほぼ使わずにおいたものがこちら。ブルームが復活していますね。
全体を見ると、さらによく分かります。
1/15のもの。
半年後。
毎日使っていれば、ブルームの復活は、見ることができません。手で触れたりすることで、つねにブルームが落とされ、油分が馴染んだ状態が続くからです。
このブルームの復活から、ブライドルレザーのケアはほとんど不要なことがわかります。
表面の油分が無くなれば、その乾きを潤すように、革の芯部からワックスがにじみ出てきます。そのため、普通に使うことで、革の表面がオイルでコーティングされた状態でキープされます。
ブライドルレザーのワックスと、人の手から移る油分で、適度にうるおった状態にあるわけですから、オイルやクリームなどは基本的に必要ありません。むしろ、ブライドルレザーのハリ・コシが弱まってしまいます。
ブライドルレザーをつくるタンナー
「ブライドルレザー」とは総称です。複数のタンナーがブライドルレザーを作っています。
英国発祥の革だけあって、イギリスにはブライドルレザーを作るタンナーがひしめいしています。以下のタンナーが有名ですね。
100年以上続く老舗タンナーです。伝統的な製法で作られるブライドルレザーは、耐久性やツヤ感、キリッとした表情に定評があり、日本有数の革工房で採用されています。
それぞれ独自の製法でブライドルレザーを作っています。タンナーによって、革の表情や色合い、ハリ・コシ、ブルームの現れ方などが異なります。
ブライドルレザーのエイジング
ブライドルレザーは使用することで変化します。ブライドルレザーのタンナー、色によってエイジングは異なるのですが、「ツヤが出ることで深みが増す」エイジングを楽しめます。
以下はトーマスウェア社のブライドルレザー。カラーはグリーン。新品の状態。
以下は9ヶ月使用です。ブルームが落ち、光沢が出るようになりました。
色の変化は控えめです。ミネルバやブッテーロと比べて「色が濃くなるエイジング」は目立ちません。色の変化を楽しみたいなら、他の革を選んだ方が幸せになれるはずです。(ちなみに、色がグングン変化するのがミネルバですね。)
1年間、ほぼ毎日持ち歩いてブライドルレザーのエイジングを検証しました。少しずつ変化する様子をご覧いただけます。新品のブライドルレザーと比較していますので、参考にしてみてください。
なお、キャメルなどの淡い色のブライドルレザーは、色の変化もわかりやすいです。
季節によって違いがあるレザー
ほとんどの革は、一定の表情です。季節によって見た目が変わることはありません。
一方、ブライドルレザーは、季節によって違った表情を見せてくれます。
夏は高温多湿になりやすい。ブライドルレザーはしっとりとした質感になります。
一方、気温が低く乾燥しやすい冬は、再びブルームが表れてさらっとした風合いになります。
ブライドルレザーのお手入れ
ブライドルレザー用のワックス、クリームが販売されていますが、毎日使うなら購入する必要はありません。過度なメンテナンスは不要です。
ブルームが革に馴染んで消えるまでは、何もしなくてもOK。ワックスでコーティングされている状態だからです。そして、ブルームがなくなったあとも、日々のメンテナンスは、乾拭きで十分です。
手で触れることで油分が伝わりますし、持ち歩くときにカバンやポケットの中で自然と乾拭きされます。つまり、適度にオイルコーティングされた状態がキープされています。
だから、ワックスやクリーム追加のメンテナンスは必要ありません。ブライドルレザーのコシが弱まってしまうため、避けたほうが良いです。
事実、ワックスを使わずに1年間使い続けたブライドルレザーは、油分の不足、ひび割れなどが起きませんでした。
だから乾拭きで良い。それと、掃除はしてあげましょう。隙間にホコリやゴミなどがたまるのは避けられません。ブラシを使って払ってあげましょう。乾燥予防ではなくダニなどから守るためです。
おすすめがこちら。本当は革靴ようのアイテムなのだけど、カーブしたフォルムが持ちやすくて便利です。1つ持っておけば、ブライドルレザーだけでなく様々な革製品に使える万能選手ですね。
ワックスが必要かどうかは、触れてみて判断します。カサつきがないなら、油分のメンテナンスは必要ありません。
使い方によっては、油分がなくなりカサつきがでてくることがあるかもしれません。たとえば、ブルームが出きった状態。ブライドルレザーに浸透した油分がすべてなくなったまま、乾燥した場所で保管したときなどですね。
ブライドルレザーは固硬いため、油分がなくなるとひび割れが起きやすくなってしまいます。割れてしまうと完全に修復することはできません。「ちょっとカサついてきたな」と感じた時は、ケアをしてあげてください。
ブライドルレザー専用のケアクリームを使用するのがオススメです。クリームは付け過ぎず、優しく円を描くように刷り込ませていくと効果的です。
冒頭でお伝えしたとおり、財布のように全体を手で触れるアイテムなら、適度に指から油分が移りますから、あまり気にする必要はないと思います。毎日使ってあげることが、革にとって最高のメンテナンスです。
ブライドルレザーの歴史
ブライドレザーの起源はイギリスです。
古くからイギリスではポロ競技が盛んで、当時の馬具には通常のレザーが使用されたそう。
しかし、革を酷使する競技ですから、耐えきれなくなり、手綱(たづな)が切れてしまうことが多かったと言われています。
手綱などの馬具は、人と馬をつなぎ、命にかかわる重要な道具。長く使えて、壊れたり、切れたりしないことが最優先で求められたのです。そのため、丈夫さと、しなやかさ。この2つの性質を持つ革が必要だったんですね。
そこで、ある貴族が強度なレザーを作らせました。これが、ブライドルレザーの誕生といわれています。
ちなみに bridle(ブライドル)とは、「たづな」「くつわ」といった意味。名前からも、馬具を由来としていることが分かります。
海外のブライドルレザーが使われる理由
ブライドルレザーは日本国内でも生産されていますが、あまり目にすることはありません。
日本有数の革工房がラインナップするブライドルレザーのアイテムには、海外のものが使われることが多いのです。
革のプロが、なぜ海外のブライドルレザーを採用するのか聞いたことがあるのですが、「ブライドルレザー」としての特徴、たとえばハリや、丈夫さなどにおいて優れているからだそう。
100年以上にわたって作られてきた歴史あるブライドルレザーのほうが、やはり良いのでしょう。
ブライドルレザーの作り方
ベジタブルタンニンなめしで作られた革へ、何度もワックス(ロウや植物オイルが主原料)をぬり重ねることで、固く、丈夫な革に仕上げていきます。
ブライドルレザーは油分を革の表面に与えるため、しなやかさを保ちつつ耐久性を持たせることができます。
最後に表面をこすって磨きをかけます。やり過ぎると起毛したレザーになってしまうので、調整が難しい分手間がかかります。ここに職人の技術が活きてくるのです。
同じタンナーで作られたレザーでも、その時の気候条件やなめす際に使われる水の温度・染料の濃さなどで仕上がりが大きく変わってきます。そのため、個体によってかなりばらつきがあるレザーといえます。
手作業でいくつもの工程を経て作られているからこその、風合いとも言えますね。
あとがき
強度のあるレザーなので、気負わずに扱えるのもブライドルレザーの魅力です。
だからこそ、使い込んだ時にだけ出る「渋さ」に魅かれ、シンプルなブライドルレザーに魅力を感じるのかもしれませんね。
最後に、ブライドルレザーの特徴をまとめます。
- 固めでしなやかな革
- 厚みがあり、無骨さ、力強さを感じる
- 水分に比較的強い
- 色の変化は控えめ