「コードバンは丈夫で、耐久性に優れる。」と、言われています。
では、実際はどうか。
コードバンの腕時計ベルトを使って、 検証してみました。
本ページではその検証結果を解説していきます。
検証方法
腕時計を2本準備し、コードバンのベルトA、Bを取り付ける。
それぞれのベルトの違いは以下のとおり。
条件 | ベルトA | ベルトB |
---|---|---|
表面の素材 | 新喜皮革コードバン | |
裏面の素材 | 新喜皮革コードバン | 栃木レザー |
色 | ブラウン | ブラック |
厚み | 2.5〜3mm | 2mm |
フォルム | 肉盛りあり | フラット |
バックル | SEIKO製 Dバックル | BAMBI製 Dバックル |
この2本を、毎日ローテションして利用する。
ほぼデスクワーク。力仕事はなし。
土日は気分で付け替える。
表面にクリームや染料は入れない。
会社、自宅に着いたあとは、ベルトの内側を乾拭きする。
そこそこフェアな条件で使い比べ、コードバンの経年変化、耐久性などを調べるのが目的です。
より早く結果を出すなら両腕に時計をした方が良いのだけど、流石にやめておくことに。
私にも、羞恥心はあるのです。
なお、同条件で行ったとしても同じ結果になる保証はしません。
サンプリングも取っていない。あくまででも上記条件の結果であり、再現性は保証できません。
6ヶ月の結果
2018年 10月スタート。
本ページでの写真は、それから2019年4月に撮ったもの。つまり、6ヶ月経過です。
革ベルトは、着脱時くらいしか手で触れる機会がないアイテムです。
一般的な革製品と比べると、手のひらからの油分の伝達などは少ないはず。
検証期間が冬だったため、ほぼ長袖。袖と擦れ合うことで乾拭きされていたはずで、エイジング環境としてはそこそこ良かったはず。
表情の変化
表面のツヤはほとんど変わらず(少し落ちたかも)。
色の変化は全くわかりません。ブラウンは少し濃くなっているのかもしれないけれど、体感できるほどの変化はありません。
新喜皮革のコードバンには、いくつかの仕上げがあって、それぞれ表情が異なります。
そして、検証対象のコードバンベルトは、最初から光沢のある個体でした。
※上記写真は新品
近年、新喜皮革コードバンを使った製品は、最初から光沢があり美しいものが多い。(ホーウィンと比べて)ハリも強いためキズにも強い。だからラフに扱える。これはこれで、いいのだけど。
最初から完成されすぎている。と、感じることがあります。
ホーウインシェルコードバンの人気が高すぎて、新喜皮革の中でも光沢のあるコードバンを採用することが多くなっているのかもしれません。デパートに行っても、マットなものはほとんどない。見栄えがいいからでしょうね。
※上記写真は新品
言い換えると、変化に乏しく面白みにかけると思うことがある。最初はマットなコードバンだって、コードバンならではのヌメッとした光沢をまとう変化を楽しめるのです。
最初から美しいのか。美しく変化していくのか。
これは好みが分かれると思います。
(私もまた、1年後には最初から美しいコードバンの方が良い。と、言うかもしれない。そのときの感性で記事を書いているし、それを大事にしたい。人の趣味嗜好は変わっていくもの。一貫性は保証できません。)
結果としては、「コードバンらしい」エイジングはほとんど見られません。
最初から美しく、6ヶ月後も美しい。
表面のキズ耐性
さて、キズを見ていきましょう。
ベルトはどうしてもテーブルに擦れる面があります。手首の下側です。
ブラウンは、色がところどころ剥げてしまった。0.5mm未満の小さな点が、点在する。これはブラウンだけに見られる変化でした。
ブラックは芯通しで染まっているのだと思います。
ブラックも実際には微細なキズがいくつも付いているのだけど、色の抜けはまったく見えません。
正直、見た目の良いエイジングとはいえないのだけど、時計ベルトの用途から、デスクと擦れるものだし仕方ないのかもしれません。
バックルによるキズ耐性
使っていたのはDバックル。
ピンバックルのようにギュッと折り曲げる必要がないため、表面の折り曲げ負荷は少なかったはず。
しかし、裏面にはどうしてもDバックルのエッジがあたる。
毎日長時間圧迫される部位は、色がはげてしまっています。
爪で引っ掻いたときにだって、キズは付く。
だからこれは想像どおり。ベルトに限らず、コードバンのアイテムはこうなる。
汗による影響
革ベルトは、素肌に取り付ける、唯一の革製品です。
ということで、「汗による変化」もコードバンで試したかったひとつ。
汗に含まれるアンモニアや鉄分は、革に悪いと言われています。この「言われている」を検証したかった。
さて、結果です。
まず表情は、表面に比べると明らかに光沢がなくなった。
また、手触りも、ザラリとした質感に変わりました。
裏面の「素肌に触れない部位」はつるりとした質感が残っています。明らかに違う。
遊革を比べてみましょう。
表と表。光沢がある。
表と裏。裏はマットな質感に。手触りもざらつく感じ。
※今、この画面を見ているディスプレイにもよるのだけど、わかりにくいかもしれません。すみません。動画のほうが分かるかもしれないです。
なかなか興味深い結果です。
染料仕上げのコードバンは通気性がよいため多少汗をかいても、乾拭きしてあげればそこまで劣化しないと考えていたのですが、見事に外れましたね。
もしかしたら、「ちゃんとした手入れ」をすると良かったのかもしれないけれど。今回の検証は「内側の乾拭きだけ」と決めていたので。これはこれで、一つの結果です。
黒いベルトの方は、内装が栃木レザー。
こちらの方が見た目はいい。キズも目立たず、色落ちほとんど見えない。
言うまでもなくコードバンの方が圧倒的に高価なのですが、結果はご紹介のとおり。
半年でこうなってしまうなら、内装をコードバンにするメリットは無いかなと思います。
あとがき
耐久性が高い。と言われている。を検証してみたかった。
なお、新喜皮革はさまざまな仕上げのコードバンを作っています。
本ページでご紹介したものと異なる仕上げ、ロットだと同じ結果にはならないかもしれません。