pat woodworking おあげのレビュー。サドルプルアップを使った、エイジングを楽しめる椅子

家具工房pat woodworkingへオーダーした革の椅子が届きました。
本日は『おあげ』をご紹介します。

特徴は以下のとおり。

  • スツールタイプの椅子
  • サッと座れて、サッと立ち上がる用途に最適
  • サドルプルアップなどのタンニン革を贅沢に使用
  • 革と木のエイジングを楽しめる

本ページでは、おあげの使い勝手、特徴などを分かりやすく解説します。

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動画

サイズ感、使ってみた様子。サドルプルアップの表情などが伝わるように、動画にしてみました。

カタチ、構造

リラックスするなら、ソファー。
長時間デスクワークするなら、オフィスチェア。
などなど。用途、効果によって椅子のカタチも変わるのです。

では、「おあげ」はどうか。

極めてシンプルな椅子です。ただ座るだけ。
いわゆる、「スツール」にカテゴライズされる椅子ですね。

背もたれも無いから、360度好きな位置から座ることができて、気軽に座れて、すぐに立ち上がる。サッと移動させることができる。取り回しの良い椅子です。

天板は少し反った、シンメトリなフォルム。

サドルプルアップの一枚革が贅沢に使われています(革の詳細は後述)。
本作の名前も、一枚の「おあげ」が乗ったようなルックスから決めたのかもしれません。

革のぷっくりとしたハリが、カチッとしすぎない雰囲気を作りあげています。

購入のきっかけ

「機能的な財布あります」の写真・動画は、中腰になったりして撮影しています。1つの記事で100枚ほど写真を取り、10分の動画も1時間ほど撮影したりするため、身体に負担がかかっていました。

だから、

さっと座れて、
さっと立ち上がることができて、
さっと移動させることができる。

そんな椅子が必要だったのです。

結論から言うと、「おあげ」は上記用途において優れています。

それと、タンニン革を使った椅子が欲しかった。
後述しますが、「エイジングを楽しめる上質な革」を使った椅子は、とても珍しい。「革の椅子」の変化する様を検証したかったのも理由です。

座り心地

おあげは、固めです。

例えば、無印良品のソファ。柔らかいソファと硬いソファがありますよね。
どちらが良い/悪いではない。用途が違うのです。

柔らかいソファはリラックスできるけど、沈み込むため立ち上がりにくい。
一方、硬いソファはすぐに立ち上がることができるけど、身体を預けてリラックスする使い方には最適ではない。

おあげは、後者です。
「すぐに座れて、すぐに立ち上がることができる」。この用途において、優れています。

2mm強の厚みのサドルプルアップは、革好きにはたまらないですね。

コシのある革。さらに中に芯材が入っているため、キチッとハリ感のあるルックス。

少しクッション性があります。

受け皿は、薄くスライスした木を重ねた構造。ミルフィーユのようになっています。
剛性が高く、たわみもほとんどありません。

天板までの高さは約40cm。リラックス用のソファより高めです。
この高さも「サッと使える」という用途にはピッタリだった。座ったときに膝を大きく曲げない姿勢になるので、立ち上がるときに膝への負担が少ない。ヨイショではなく、サッと立ち上がる事ができる。(座り心地は身長にも依存するはず。私は178cmくらいです)

素材、つくり、サイズ。
これらがあいまって、使い勝手の良い椅子に仕上がっています。

特徴

最高の素材

革と木。どちらも最高の素材です。
それぞれ解説しましょう。

サドルプルアップ

天板に貼られた革は、サドルプルアップ。私の好きな革のひとつです。

ベルギーのタンナー、マシュア社のオイルレザー。
日本ではWILDSWANSやLAST CROPSの製品に採用されています。

サラリとしたスムースレザーで、ハリがあり、ほど良い弾力もある。
世界の銘革と比べると、ミネルバ、アラスカより固く。ブライドルレザー、ルガトーより柔らかいといったところ。

牛のショルダーを使っているため、大きくトラが入ることもある。

好みが分かれる表情だと思います。
トラが嫌なら、顔料仕上げの革を選ぶと良いでしょう。
pat woodworkingの使う革(サドルプルアップとブッテーロ(後述))は、タンニンなめし、染料仕上げの革です。トラだけでなく、色の濃淡だってあるのです。

染料仕上げによる透明感のある肌に、トラのワイルドさがあいまったロットです。満足。

トラは天然素材の証です。動物の皮を、平坦になめす過程でトラはできる。
WILDSWANSの財布でも、トラが入ったものがありましたが、その個体を選んだことさえある。私はトラを含めてアジだと思うので、これはこれで好みなんですよね。

黒檀

おあげは、いくつかの木材の中から選んでオーダーできます(詳細は後述)。

私が選んだのは黒檀(エボニー)。
縞模様の入った、黒に近い茶色です。

エボニーは極めて丈夫な唐木(からき)です。
ウォールナットの1.4倍の硬度があり、キズや凹みに強い。

重くなってしまうのがデメリットですが、「おあげ」なら難なく持ち上げることができますね。

エボニーは熱帯雨林に近い地域の種。日本には存在しません。
本作もインドネシア産ではないか、とのこと。

今日では希少な素材です。
革の場合は、ワシントン条約で制限がかかっているものがありますね。
同じように、材木にも制限がかけられているようで、エボニーもそのひとつ。乱獲により少なくなり、輸入制限がかかっています。新品のエボニーは手に入りません。本作も、床柱として使われていたものを再利用しているとのこと。

人工的に作り出すことができない希少な素材は、時代が進むことで手に入りにくくなることがある。チークの家具も、今は作られていませんからね。

普段目にすることがない裏面も綺麗です。

美しく変化する椅子

「変化する」という点でも、おあげは特別です。

革の変化

革は、ふたつの製法に大別されます。

ひとつは、タンニンなめしの革です。
サドルプルアップや、ブッテーロ(後述)はこちら。色ツヤの変化を楽しめる革です。

クロムなめし、かつ顔料仕上げもある。
(タンニンとクロムを組み合わせた、コンビなめしもある)。

では、どちらの革が良いのか?
甲乙つけることはできません。それぞれ特徴が違うからです。

クロムなめしの方が、柔らかくしなやかで丈夫な革になる。
顔料の方が、色の濃淡がなく鮮やかな発色になり、色落ちも少ない。
水にも強いから、シミにもなりにくい。つまり、新品に近いルックスが長く続くのです。

一般的に椅子に使われる革は、クロム(もしくはコンビなめし)革が多いそうです。
「椅子」は座る道具です。肌に密着し、かつ数十kgの圧力がかかり続ける。しかも何年も使いつづけるわけですから、クロム革を使うのは理にかなっていますね。

一方、サドルプルアップは、水に濡れて放置すると染みになるし、キズだって付きやすい。
その代わり、エイジングを楽しむことができる。

新品のときはギラリとは光っていません。微細なシボがあるから、繊細な光沢がある表情。

ここから、色は深みを増し、さらに光沢があがってくる、ダイナミックな変化を楽しめる革です。言い換えると「新品のときの美しさがずっと続く」を希望するなら、おあげは合わない。
使い込むことで、使った人なりの変化こそ、おあげの醍醐味なのです。

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木の変化

エボニーも変化するようです。

内部に油分を多く含んでいるため、乾拭きすることでツヤが出てくるらしい。
なんだかオイルレザーみたい。ここも惹かれたポイントです。

美しい仕上げ

美しく磨かれたエボニーは、ツルリとした質感。
写真で伝わるかな。指のカタチが写り込むほどにスムースなんです。

天板に近い方は太く、足元は細く。なだらかに変化していく流麗なフォルム。

天板は、ミルフィーユのように数層の木の板を重ねられているのだけど、ササクレがなく、つるりと仕上げられています。

見た目が良いだけではない。移動させるときに手で触れるパーツだから、ツルリとした手触りも大切な機能なのです。

天板とサドルプルアップは、グルリとステッチされています。

コバは染色されていない、素磨きかな。磨けば光る。これもタンニン革の特徴です。

オーダー方法

革、木、ステッチ、足裏のシールの有無を決めてオーダーします。

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2種類の革から選ぶことできます。

  • サドルプルアップ
  • ブッテーロ

サドルプルアップ

本ページで紹介している革。

ハリ、さらりとした質感、エイジングを楽しめる、丈夫な素材です。

ブッテーロ

イタリアのタンナー、ワルピエ社のオイルレザー。
発色が良く、スムースな手触りです。新品のときはさらりとしたマットな質感です。

ショルダーを使っているため、トラがあったりもする。
さらに色もロット差による違いが大きい印象です。

ブッテーロも個人的に大好きな革のひとつ。
タンニンなめし、かつ染料仕上げの革だから、エイジングします。
色は深みを増し、ツヤもあがる。
だから、色ブレやキズがついても、気にせずガシガシ使えばいいんです。

左から、

  • ヤマザクラ
  • ウォールナット
  • ナラ
  • ケヤキ
  • メープル

この5木材が定番。
それぞれ色、木目、手触り、そしてエイジングが違います。
どの木材も、家具屋さんに行くと取り扱っています。見て・触って、お好みで選ばれると良いでしょう。

色が濃くなる変化を味わいたなら、サクラがいいみたいです。
「ヌメ革のエイジング」がお好きな方向けかな。

これ以外にも、ウェンジ、エボニーなどの木種で作ってもらえるかもしれません。

※私は、オーダーの相談をして、エボニーを選びました。木の種類によって価格は変わります。定番の木より、ずっと高価になります。

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ステッチ

ステッチは装飾としての役割もある。お好みで。
個人的には今回のように「革」を堪能できる製品では、革色と合わせたほうが良いと思っています。

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フェルト

フェルトの有無も選べます。

フローリングでキズを付けないように、付けてもらいました。

屋外で使うと、フェルトに小石が付くことがある。そのまま屋内で使うと、フローリングに傷がつくそうです。(私は屋内でのみ使うので、付けてもらいました。)

完成までの期間

在庫状況によって変わるそうです。
たとえば、パーツがある程度できている場合は、1ヶ月ほど。

パーツ作りから始めると3〜4ヶ月ほどかかるとのこと。

pat woodworkingは、職人である岡田氏が一人で運営されている日本の家具工房です。
オーダーして待っている時間が長いほど、楽しみも増します。

あとがき

おあげに初めて座ったのは、2015年だったかな。
WILDSWANSの店舗(京都、銀座)に行くたびに座らせてもらっていて、ずっと気になっていた製品でした。

ずっと使うし、使っていない時間も部屋に存在する。

だからこそ、機能的で美しい椅子が良かった。
使っていくうちに美しく変化していく椅子が良かった。

本作は、家具職人、岡田氏による一品生産です。
完成までに3〜4ヶ月かかるとのことだったし、実際それくらいかかりました。

待った甲斐があった。
とても満足できる製品です。大切にします。

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