「一革」はコードバン製品をラインナップする、日本の革工房です。
オーダーした『ブックカバー シェルコードバンモデル』が届きました。本日は、そのご紹介。
特徴は以下のとおりです。
- 差し込み式のブックカバー
- 素材はホーウィン社シェルコードバン
- シェルコードバンの色、糸の色を選べる
- 厚みなど、カスタムオーダーの相談ができる
- サイズラインナップが豊富(文庫本/ 新書 / A5)
様々なブックカバーを購入してきましたが、もっとも高級感のある(事実、もっとも高価なのだけど・・・)ブックカバーです。
本ページでは使い勝手や特徴、メリット・デメリットについて分かりやすく解説します。
動画
シェルコードバンの色・ツヤ、質感などが伝わるよう、動画にしてみました。
カタチ、構造
ブックカバーにも様々なタイプがあるのですが、本作はオーソドックスな「差し込み式」。
表表紙と裏表紙を差し込んで使う、シンプルで使いやすいタイプです。
文庫本サイズです。
素材は、ホーウィン社 シェルコードバン。
色は#4(number four)をチョイス(詳細は後述)。
ハリと弾力があるため、裏張りしなくても十分耐久性がある。長く使えそう。
コードバンは裏面もスムースです。
一般的な革の裏面のように毛羽立っていないから、スルリと本を入れやすい。ブックカバーに適した素材です。
使い勝手
装着方法
表紙を差しこむだけ。
差し込みスペースは余裕がなく、ジャストサイズ。ギュッギュと入れていく感じです。ちょっと手間がかかるフィット感ですが、使っているうちに馴染んでいくでしょう。
反対側も同じように。
以上。シンプルですね。
使用感
とにかく弾力がすごい。
ハリが強くて、机に置いても片面が上がってくる。
両サイドに引っ張られて、中央部がカーブを描くほどです。
本作に限らず、「本にピタッとフィットしない」のは「革のブックカバー」の特徴です。
だけど、これは最初だけ。次第に馴染んで、ピタリとスリムになっていくでしょう。
糸は太め。触れると糸目を感じます。
縫い合わせる糸もさまざまな太さがあり、ブランドや作品によって異なります。ここは好みが分かれるところだと思います。力強いホーウィンシェルコードバンだから、太めの糸でもマッチしてるかなと。
対応ページ数
文庫本の厚みは、一般的な小説なら、全く問題ありません。
ただし、410ページある文庫本は収納できませんでした。折りたたむと表紙にシワがよるのです。使い込むことで多少伸びたりする革もあるのだけど、本作の素材はホーウィン社シェルコードバンです。繊維密度が高くほとんど伸びないため、将来的にも難しいかなと思います。
お気に入りの分厚い本、例えば「有限と微小のパン」は、本作は使えないんですよね・・。ちょっと残念ですが仕方ない。本作に限らず、「差し込みタイプ」のブックカバーは「本の厚みの上限」があります。オールマイティなブックカバーには原理的になりえない。標準的なページ数の文庫本を想定して、「ジャストフィットの気持ち良さ」にデザインされている。そういうブックカバーなのです。
ちなみに、薄い〜厚い本を収納できるオールマイティさを求めるなら、以下のような構造のブックカバーをチョイスする必要があります。
残念ながら、上記のコードバンのブックカバーは、存在しません。
柔軟に曲がる革でないと実現できないからです。コードバンはハリが強いから難しいはず。1mm以下に薄くすればいけそうだけど、ハリ・弾力も弱まるし、耐久性が落ちるでしょう。革もたくさん使うため、かなり高価になるはずです。フルオーダーメイド以外ではありえないかな(オーダーでも、嫌がられそうですが・・・)。
特徴
ホーウィン シェルコードバンだけで作られたブックカバー
本作の特徴はやはり素材。世界最高級のスムースレザー、ホーウィンシェルコードバンを使っていることにあります。
外装はシェルコードバンの一枚革。シェルコードバンの手触りを堪能できる、贅沢なつくり。
モッチリとした弾力をダイレクトに味わえます。
本個体は、最初からバツグンのツヤがありました。
さて、表情です。
毛穴がある。「ラフな表情」もまたホーウィンシェルコードバンの特徴です。
表紙を挟む裏面もコードバン。コードバンだけで作られた、唯一のブックカバーです。
色は#4でオーダーしました。
#8より明るい。赤と茶が混じったような色合い。
ホーウィンシェルコードバンは、色ツヤの個体差がある革です。
#4同士を比べても微妙に色合いが違う。本作は、より茶色が強く、赤みは控えめです。
やはり大きな製品ほどコードバンの美しさが堪能できる。贅沢ですね。
ホーウィンシェルコードバンの裏面は、染料がバチャッとかかっていることもあります。これはこれで、マニア向けで好き。
一方、本作はかなりキレイでした。血筋があるくらい。
裏面にも個体差があります。二度と同じものは手に入らないのです。
エイジングを楽しめるブックカバー
表情に透明感があり、濃淡もある。染料仕上げの証です。
つまり、色ツヤが変化するエイジングを楽しめる革なのです。
美しい姿がずっと続くわけではありません。曇ったりもする。触れるたびに変わる素材です。
カバンの中で擦れ、手で長時間触れ、汗も付着するプロダクト。どのように変化するのか。これも本作の楽しみです。
新品の今はフラット。シェルコードバンをそのまま切り出したようなブックカバー。
つまり、カタチの変化も楽しめる。折りたたまれ、開け締めを繰り返されることで中央に「クセ」が付き、スリムになり、パタンと閉じるように変化してく。これもまたエイジングのひとつです。
ハンドメイド、総手縫い
断裁から縫いまで、すべて手作業。職人さんによるオールハンドメイドです。
力強さを感じるステッチは、2つの針を交互に通す平縫い。糸が切れてもほつれてこない。
コバは染料で磨かれているのかな。断層が見えるので、染料も使っていないのかもしれない。3mm弱のコバも丸みを帯びるように仕上げられています。美しい。
オーダーでできること
本作は「カスタムオーダー」可能。
カスタムオーダーとは、製品のカタチは決まっていて、素材や糸などを変更するオーダーです。フルオーダーと比べると手が出やすいオーダー。
本作では価格変更なく、以下をカスタムオーダーができます。
- シェルコードバンの色を変更
- 糸の色を変更
シェルコードバンの色
シェルコードバンのカラーラインナップは、7色。
- ブラック
- #8
- バーボン
- コニャック
ここまでは定番ですね。
さらに、以下のカラーもチョイスできます。日本の革工房ではあまり採用されていないレアカラーですね。
- #4
- グリーン
- ネイビー
糸の色
糸のカラーバリエーションは12色。
「糸の色をコードバンと合わせたときにどんな感じになるか?」イメージできないかもしれません。写真で雰囲気を見せてもらえると助かるのですが、コードバンの色×糸の色で100弱の組み合わせになるため、悩ましくもあります。
ただ、心配無用。イメージがあるなら、購入時に「備考」に入力してお伝えしたら良い感じの糸をチョイスしてもらえます。私は「シェルコードバンだけを堪能したい。#4の色を際立たせたい」イメージがあったので、「ステッチワークが目立たず、コードバンの表情を際立たせたい」とお伝えして、オーダーしました。結果、糸の色はマロンになりました。満足です。
その他のカスタムオーダー
その他、大幅な変更でなければ、相談できます。
- 厚みを抑えるために、薄くする
- 裏ポケットの幅を狭くする
当然ながら、「コードバンの面積を大きくする」などのオーダーは、価格はプラスになるでしょう。
完成までの期間
ブックカバーはオーダーによる受注生産です。
本作はオーダーしてから到着まで1ヶ月ほど。
シェルコードバンのリバース仕立て
シェルコードバンにはホーウィン社のスタンプが押されています。このスタンプは基本的に1枚に1つ(押されていないものもあります)。貴重な部位です。
さて、今回は運良くスタンプが取れるとのことで「スタンプをどう見せるのか」を相談させていただきました。
- 大きめに裁断して、ブックカバー表面にリバースで使う。
- ブックカバー裏面の中央に覗かせる。
- 裏ポケットにリバースでスタンプを出す。
裏ポケットに、ホーウィン スタンプを配置する裁断で、オーダーしました。
読書中にもチラリとスタンプが見える。満足です。
ラインナップ
サイズは以下の3つ。
新書はビジネス書などで多く使われるタイプ。文庫本より背が高いため、コードバンの使用面積も大きくなる。当然、価格も上がります。
A5はハードカバーのサイズ。ほぼ1枚コードバンを使うため、高価ですね。こちらも欲しかったけど、まずは文庫本をチョイスしました。
あとがき
シェルコードバンのブックカバーは、一革だけがラインナップしています。
オーダー時、いろいろと相談に乗ってもらったので満足のいくブックカバーになりました。
どのように変化していくのか、楽しみな一品。大切にします。