本ページでは、以下のコードバンを対象に、光沢を復活させる方法をご紹介します。
- 曇った(光沢が無くなった)
- 水に濡れて染みができた
結論からいうと、コードバンに光沢を取り戻すことができます。
Before。
After。
新品のときの鏡面のようなルックスに戻すことができます。
いくつか検証した中で、もっともツヤ出しに成功した方法・手順について、わかりやすく解説しますす。
コードバンのツヤを復活させましょう!
動画
本ページで解説した内容のとおり、メンテナンスしている動画です。シミの消え具合、光沢の復活は、動画の方が伝わりやすいと思います。お急ぎの方は2倍速で再生してみてください。
メンテナンス対象のコードバン
ホーウィン社のシェルコードバン #8。染料仕上げの革です。
雨により、ホーウィン社シェルコードバンが濡れました。
水滴が付いていた時間は1分未満。水じみができ、濡れた箇所は光沢が失われています(くもってしまう)。
メンテナンスの目標
- シミをなくす
- 光沢を取り戻す
- カサつきをなくす
使う道具
以下を利用します。コードバンに限らず、一般的なレザーメンテナンスで使えるので揃えておくことをおすすめします。
- ブラシ
- 長谷革屋 コードバンワックス
- 荒い目の生地(無印の台拭きを使っています)
- 細かい目の生地(財布に付いてくる、不織布。ストッキングでも可)
- レザーグローブ
濡れたコードバンの応急処置
拭き取る
まずは、コードバンに付いた水滴を拭き取ります。
シェルコードバンは染料染めのため、強くこすると色がおちます。ゴシゴシこすらず、布やテッシュを軽く当てるようにして拭き取りましょう。
写真はシェルコードバンのハギレを濡らして、強めに擦った結果です。色が移っていますね。これはやりすぎ。強くこするのはNGです。
少し白っぽいところが、濡れた部分です。すぐに拭き取っても、スジ状に曇ることがあります。
乾燥
水分が浸透している場合、自然乾燥させます。
ポイントは濡れたコードバンの表層に「風の流れ」作ること。表層の水分を空気が吸い込み、早く乾きます。扇風機やドライヤーの冷風を使っても良いでしょう。
ドライヤーの熱風を使うと、早く乾かすことができるけど推奨しません。
シェルコードバンはタンニンなめし革のため、熱に反応して変色・変形する特性があるからです(#8のように黒いコードバンなら変化しにくいかもしれません)。
濡れたら、なるべく早く乾かすことが大切です。
理由は、以下のとおり。
- 水を含んだ状態だと、カビが繁殖しやすい。
- 水が浸透することで、「水ブク」になりやすい。
- 濡れた箇所は色艶が失われる。この影響を最小にしたい。
ホーウィンシェルコードバンは、水が浸透しやすい革です。
水滴が付いてから5分ほど放置すると、浸透して色が変わり、ツヤも失われてしまいます。
だから、なるべく濡らさない。濡れたら、すぐに拭く。これがキモになります。
コードバンの艶出しメンテナンス
1.ブラッシング
完全に乾いてからブラッシングです。濡れた状態でブラッシングするのは避けましょう。
濡れたコードバンは柔らかくなっているため、ブラシでキズがつきやすくなっているからです。
ゴシゴシと力を込める必要はありません。払う感じ。丁寧に、何度も。
ブラッシングの目的は、表面に付着した汚れを取ることです。
水と一緒に、ホコリなどがコードバンに付着しているかもしれない。
このあとワックスを使うときに、微細なホコリが革の中に入り込んでしまうリスクがある。コードバンの中に入り込むと、汚れが目立つし、ホコリだったらカビの好物になる。だから予めブラッシングで排除してあげるのです。
ステッチもゴミが混入しやすい部分。角度を変えて数回ブラッシング。
2.ワックスを塗る
革製品をメンテナンスするワックス(クリーム)はいくつか所有しているのだけど。
コードバンなら、以下のいずれかを使っています。
- 長谷革屋
- コロニル
今回は、長谷革屋を使います。黄色いワックスです。
理由は以下のとおり。
- 光沢が落ちた
- カサついており、油分も補給したい
- #8は濃いため、色の変化はほとんどない
(長谷革屋は黄色いため、淡い色のコードバンでは避けたい)
テクスチャは固めだけど、人肌で溶けるくらい。
指で取って、直接コードバンに塗ることもできるけど、塗り込む量のコントロールが難しいです。
シェルコードバンのハギレで検証してみたのだけど、たっぷりと塗ると2,3回拭き取ったあともベタベタした質感が残ります。このまま使うのはちょっと気になります(検証済み)。べたつきが気にならないほどに、拭き取る作業がちょっと面倒です。
なるべく効率的に、無駄なく塗りたい。小さく切った生地に均等に乗せていきます。
ちなみに、生地に直接乗せるのは最初は避けたほうがいいかも。これは取りすぎです。このまま使うと油分が乗りすぎてしまう。
少しずつワックスを生地に乗せて、触れていない方の指で、生地を触ってみる。わずかに湿っているくらいでいい。
さて、コードバンに塗っていきましょう。
極めてスムースなため、スルスルと滑らせるようにワックスを乗せることができます。力は必要ないです。表層にワックスが乗れば、浸透するからです。
全体に、満遍なく、薄く乗せるかんじ。スルスルスルと滑らせるだけでいい。
力を込めると、染料が落ちてしまうことがあります。白い生地を使っているのは、染料が落ちていないか、確認しやすいからです。#8なら、赤っぽくなりますね。これは力を込めすぎ。
ダメージの少ない部分(雨による被害が少ない部分)は光沢が増してきます。表情を見ながら、どれくらい塗るかを決めましょう。
生地とコードバンに触れて、まだ乾いている。まだカサつきがあると感じたらワックスを乗せる。
これを繰り返します。
補足:ワックスを塗る量
どれくらいワックスを塗るのが正解か?
これはコードバンの状態や、好みの表情によって変わるため、断定することはできません。
ポイントはひとつ。
「少しずつ塗る」ことです。
効率的に無駄なくコントロールでき、あなたの期待するコードバンの表情に仕上げやすくなるからです。
コードバンの状態による
今回のケア対象のコードバンは、部位によって濡れたり、濡れていなかったり。3つの状態に分かれています。
- 光沢がある
- 濡れて、光沢が落ちた
- かさつきがある
このような異なる状態のコードバンを、均一に、キレイに仕上げるのは難しい。
でも、コントロールはできる。
状態を見ながら、かさつきのあるところを重点的に塗る。
光沢が復活したところにはこれ以上塗らない。とか。
だから、少しずつ、見極めながら塗っていきます。
本ページの写真や動画を見ても「あなたのコードバンに塗り込む適切な量」の参考にはならないと思います(どれくらい塗ったら、どれくらい変化するかは参考になるけど)。
経験がモノを言うとこだと思うので、身体で覚えるのが良いでしょう。
少しずつ濡れば、塗りすぎることはない。失敗も少ないです。
仕上げの好みによる
コードバンの表情にも、好みがあるはずです。
ギラつくようなツヤを出したいのか、少しでも光沢がでれば良いのか。
人によるところですから、正解は存在しないでしょう。
だから、少しずつ磨いて、光沢をコントロールします。
3.放置する
表層にワックスがついた状態です。しばらく放置することで、コードバンの内部に油分を補給できる。
「最適な放置時間」は、コードバンの状態、仕上げの好み。見て、触って判断します。
例えば、ツヤを出したいだけなら、放置する必要はありません。薄く塗って、磨けばツヤが出ます。
今回は、ツヤ出しと油分の補給(カサつきがあるため)が目的でしたので、
48時間放置 → 一部、シミが取れないためワックス追加 → 24時間放置 → 完了。としました。
なお、長谷革屋のワックスを塗った後、ハリ・コシが弱まった感じはしませんでした。放置しすぎることによるデメリットは無いかもしれません(コードバンの厚み、状態によって変わるかもしれないので、断言できません。やわらかくなるのを避けるためにも、少量ずつ塗ったほうが良いです)。
4.生地で拭き取る
ワックスを拭き取ります。使っていない、新しい生地を使いましょう。
触れてみて、ベタベタが気にならないほどに拭き取ります。
この工程で、みるみるツヤが出てきます。楽しい。
シミの度合いによっては、この工程で、シミがなくなる。
シミが残る場合、ワックスを付与して、少し強めに磨きます。シミの原因が、水に濡れたことによる繊維解けなら、コードバンを圧迫することで、繊維を寝かしつけることでシミがなくなるからです。最初は優しくワックスをつけ、それでもシミが消えない場合、ちょっと強めに。と段階的に行います。
5.仕上げ
きめの細かい生地で磨く
今回は不織布を使用(革財布とかが包まれている生地です)。力はいらない。撫でるように。
コードバンらしい濡れたようなツヤ感が復活します。楽しい。
仕上げ2
レザーグローブで磨きます。
これはレザーグローブを育てる効果もあります。
毛先にわずかに油分が移っていくので、レザーグローブだけで最低限の油分を与えることができるようになる。
あとがき
水に濡れて、光沢を失ったコードバンも、輝きを取り戻すことができます。ぜひ挑戦してみてください。