革財布は、メンテナンスしていますか?
最初は美しかった財布も、長く使っていると色や艶が無くなり、上品さを感じられなくなったという経験はないでしょうか?
適切なメンテナンスをすることで、美しい状態を保つことができます。また、落ちてしまった「艶」や「しなやかさ」を復活させることもできます。
ただ、メンテナンスを面倒だと感じる人もいるでしょう。
そこで今回は、段階的に革財布のメンテナンスについてご紹介します。
カンタンで気軽にできる方法から、クリームを使った手順まで、革財布のメンテナンスに必要なことを分かりやすくお伝えします。
お読みいただければ、お持ちの革財布を長く、美しい姿で愛用できるようになるはずです。
結論。革財布のメンテナンスは必要です。
まず、結論です。以下のように財布をお使いなら、基本的にメンテナンスは必要ありません。
- 毎日触る
- オイルを含んだ革でできている
- カバンで持ち歩く(ポケットに突っ込んだりしない)
人の手には「適度な油分」があります。毎日財布を使ってあげることで、手から革へと油分が移り、革が潤った状態になるからです。
また、オイルレザー(ミネルバやブッテーロなど)は中にたっぷりとオイルが詰まっています。普通に使ってあげる、または乾拭きすることで、革の気孔からオイルが染み出てきて表面をコーティングしてくれます。このオイルがツヤを生み、防水してくれるんですね。
毎日手で触れるし、汗が付きにくいため、革は良い環境で使われるのです。(靴やカバンなどとは違う。)
そのため、革財布は、神経質にケアする必要はありません。
逆に、あまり使わなかったり、乾燥する部屋に長く放置したりすると必要になってきます。
また、負荷がかかるアイテムも必要です。たとえば、ベルトは汗を吸い込むし(革の苦手な塩分を含む)、引っ張られたりする負荷がかかります。ベルトはメンテナンスが必要なレザーアイテムの筆頭なのです。
シワが入る部分は、油分が逃げやすいところです。使われている革にもよりますが、酷いとひび割れが起きることがあります。
メンテナンスをサボると表面が割れてしまうこともあります(銀割れ)。こうなった革製品は元には戻りません。
レベル1 汚れ落とし
革の表面にはホコリなどが付着しています。長く使いたいなら、財布の表面を乾拭きするていどのメンテンナンスはしてあげた方が良いです。
こちらは、ほとんどカバンで持ち歩いている財布です。一見するとキレイですが・・・
折込マチの部分には、ホコリが付いています。
この汚れを除去することが最も簡単なメンテナンスです。
ホコリや汚れがついていると、革の呼吸が妨げられて湿気が溜まりやすくなる。また、ホコリが革の油分を吸い取ってしまうため、乾燥してしまう。湿気が溜まるくせに、油分は奪う。これが長く続くと、乾燥→ツヤの減少→ひび割れ。と、悪いリズムが生まれる。
また、ホコリは、カビが好む有機物を多く含んでいるため、カビが繁殖しやすい栄養源になってしまう。ホコリを取り除くことで、カビが繁殖しにくい環境にできるわけです。ちなみに、カビは一度発生すると、完全に除去するのは難しいです。
で、一番カンタンなのが、布を使った乾拭き。
布は何でも良いです。それこそTシャツでも。財布がコードバンなどのスムースタイプの皮革の場合、傷つく恐れがあるため、なるべく柔らかい、線維の細かい生地のものが良いでしょう。無印良品のふきんとかでもいい。ただ、そのままではメンテナンスしにくく、適当なサイズにカットしないといけませんし、ずっとは使えません。
おすすめは、ドイツ ペダック社のレザーグローブです。
特徴は、表面をびっしりと覆う、きめ細やかな羊毛。まるで、贅沢な絨毯のようです。
スリットに手を入れて、準備完了。これで財布を優しく拭いてあげるだけでOK。
ぐにゃりと柔軟に曲がるので、丸みのあるフォルムの財布も、カンタンに乾拭きできます。本来の用途は靴磨き用ですので、面積も大きく短時間で乾拭きできます。
手元に置いておいて、テレビでも見ながら撫でてあげる、といった使い方が気楽で良いです。財布だけでなく、革の道具全般に使える便利なアイテムです。
自分でメンテナンスするのであれば、これは買ったほうが良いです。購入してから5年ほど使っていますが、現役です。使い込んで行くと毛先に革から油分が移るため、グローブ自体が進化するのです。十分に育ったレザーグローブで拭いてあげるだけで軽く油分を補給できるようになります。
ただし、レザーグローブは、「細かい部分のホコリ出し」は苦手です。
細かいパーツのホコリ取りに、時間をかけたくないなら、ブラシを1つ持っておくことをおすすめします。
わずかに弧を描いているため持ちやすいです。サイズも丁度良くて、ササッと汚れを落とすことができるとても便利なアイテム。財布だけでなく、あらゆる革製品に使えるオールラウンダーですね。
ちなみに、もっと小さなブラシでメジャーなものが、ペネトレィトブラシです。細かいところの掃除は便利なのですが、私はコロニルのブラシしか使っていません。男性の手には、大きいブラシの方が持ちやすいですし、面が広いため時間をかけずにできるからです。
基本はここまででOK。革が十分に呼吸でき、カビが繁殖しにくい状態になります。美しくエイジングさせるための最適な状態をキープできます。
レベル2 潤いを取り戻す
- 毎日使わない
- 乾燥する場所に保管していた
こういったケースでは、革から油分が抜けていき、潤いが無くなっていきます。このまま放置すると、シワ、割れが起きやすいため、補給してあげましょう。
おすすめは、M.MOWBRAYのデリケートクリーム。
とても柔らかなテクスチャです。水分が多め、油分は少なめですから、使いやすいクリームですね。
嫌な匂いがしないため、素手で触っても気になりません。私は軽く手にとって、指や手のひらで触れるようにして補給するように使っています。何より、手で塗る方が楽です。
塗った直後は、革が変色したように見えるかもしれませんが、すぐに革に浸透していって、元に戻ります。
水分が多いため、コードバンなどの「水に弱い革」にはベッタリと塗るのは避けた方が良いでしょう。
小さな容器で、60ml。少なくお感じになるかもしれませんが2年以上持ちます。お手頃な価格ですから、1つ持っておいても良いでしょう。コレ1つで、財布、ベルト、カバン、靴、あらゆる革製品に使える万能選手です。
ちなみに、アボガドオイルを主成分とした、リッチなクリームもあります。香りも良いとのこと。
レベル3 艶を取り戻す
さらに乾燥が続き、油分がなくなってくると、潤いやしなやかさが無くなります。
ひび割れなどが起きやすい状態ですから、けっこうヤバいです。早めに処置しましょう。
手で触れることが多い財布なら、レベル1のメンテナンスをしておけば、ここまで来ることはまずありません。
艶を出したいなら、おすすめはM.MOWBRAYのアニリンカーフクリーム。
先ほどご紹介した、「デリケートクリーム」よりも油分の配合量が多いため、革に艶を出すことができます。コードバンなどにも利用できる万能選手です。
革の受けるダメージと、ケアの方法
革は天然素材ゆえに、経年や環境によってさまざまな変化が現れてきます。
ここでは、革に起こりうる症状と、必要なケアをご紹介します。
オイル抜けによる乾燥
革のなめしには「仕上げ」工程があります。
仕上げでは、着色を含めて、革にさまざまな機能を付与する作業を行います。
この工程で、加脂を行うことがあります。なめした直後の革は、動物の脂肪がほとんどなくなっていますから、革のオイルを浸透させることで潤いを与える作業です。
この革が「オイルレザー」呼ばれるものですね。
ちなみに、加脂も着色もしない革がヌメ革です。
ヌメ革は乾燥しやすいため、革をたいせつに育てる決意がある人にオススメです。
革のオイルは、時間の経過や、革を押したりすることで、芯の方から表面ににじみ出てきます。これが艶となって革製品に光沢をもたらします。
浸透したオイルには限りがあるので、いつかは油分が無くなってしまいます。
見た目の変化としては、革に潤いや光沢を感じられなくなってきます。触った時にゴワゴワとした感じになり、しなやかさが少なくなっていきます。こういったときにケアが必要になります。
乾燥した革は、引っ張りや衝撃に弱いだけでなく、自然とヒビ割れという修復が難しい状態を引き起こす可能性が高くなります。(修理は可能ですが、高価ですし、完全には治りません)
この予防として革に潤いを与えるために、クリームを使います。
オススメは先程も紹介した、M.MOWBRAYの デリケートクリーム。ものぐさな私も愛用しています。
- 安い
- 嫌な匂いがせず、手で濡れる
- べたつかず、すぐに吸収されていく
カバンやベルトといった、手で触れることが少ない革製品はオイル抜けが顕著です。
ちょっと時間ができた時に、テレビでも見ながらサッと塗ることができるお気軽なアイテム。1つ持っていれば2,3年ほどは持ちます。
水分が主体の栄養クリームですから、革の芯まで浸透させやすいのが特徴。
効果は、柔軟性を高めたり、保湿力を向上させたりといったところです。ガシガシになった革ジャンなどに塗ると、グングン吸い込んで潤いが復活します。(光輝かせるためのものではありません。)
水分を多く含んでいるため、淡色の革へ使うときは、目立たないところで試してください。
水に弱い革、色落ちしやすい革のケア
アニリン染料を利用した革製品は、水に濡れると色落ちしやすいので注意が必要です。
先ほどご紹介したデリケートクリームは水分が多いため、避けたほうが良いです。
では、何がオススメかというと、アニリン用のM.MOWBRAYアニリンカーフクリームですね。
同じ会社が作っていて、成分が違います。
こちらは、デリケートクリームに比べると少し粘度のあるテクスチャ。水分の割合が少ないため、デリケートでシミができやすいアニリン染めやカーフにも使用できます。
ロウが配合されているため、光沢のベールに包まれる効果が生まれます。
革に輝きや艶といった質感を出したい時に使いましょう。コードバンのような、透明感と光沢を表現したい革にも最適です。
YUHAKUの革製品のグラデーションはアニリン染されているため、カーフクリームが最適です。HPでもデリケートクリームの使用はお控えくださいと書いてあるのは、水分によって色落ちが起こりやすいからです。
デリケートクリーム→アニリンカーフクリームと併用できます。
ちなみに、毎日手で触れる機会が多いアイテムではクリームの追加は不要です。手から適度に脂がアイテムに移るため、革から油分が無くなることはほとんどありません。
ベルトやカバンといった、手で触れない部分があるアイテムにはケアをした方が長く愛用できます。
湿気の吸い過ぎによるカビの発生
前述の乾燥とは逆のパターンです。
革は呼吸をする素材ですから、本来は吸湿、放湿に優れています。
ですが、密閉したクローゼットに長期間保管するような場合、吸湿が勝ってしまうとカビ菌が繁殖しやすくなります。
一度カビが発生すると、完全に取り切るのはかなり難しくなります。
長期間使わない場合は、湿気を溜めないように新聞紙で包んだりしましょう。
ビニール袋で密閉するようなことは避けてください。
革製品を購入したときに、不織布(ふしょくふ)に入った状態だったと思います。
これは、革が呼吸する特性を活かすための、通気性のある最適な入れ物だからです。
色落ち(退色)
本来、動物の皮には色味がほとんどありません。
なめした後に、着色仕上げをすることでさまざまなカラーの革に生まれ変わるのです。
この着色は天然素材に染み込ませるため、完全に革に定着するわけではありません。
雨にあたれば、他の製品に色移りをすることがありますし、紫外線が当たると色が濃くなります(人間の肌のように代謝しないため、元の色に戻ることはありません)。
この色の変化で、ケアを推奨するのが色落ちです。
革の着色が芯まで浸透していれば目立たないのですが、安物の革製品は表面にのみ着色されています。そのため、水濡れ、スレやキズによって地革の色が見えてしまい、それが製品カラーと異なる場合には見窄らしい印象を受けてしまうのです。
そうなってしまうと、革専用のクリームで着色ケアをする必要がでてきます。
予防は防水スプレーくらいです。
直射日光や高温による劣化
革は紫外線や高温を嫌います。
油分の酸化が早まることによる変色、日焼けが起きます。
目に見える影響としては、日に当たった部分だけが変色しますので、美しくありません。また、熱の影響で変形が起きてしまいます。
夏の暑い時期に、車の中に置きっぱなしにするのは、こういった症状を誘発するためできるだけ避けてください。
ケアが嫌なら、ケア不要な革を選びましょう
ここまでのメンテナンス方法、いかがでしょうか?
面倒でやってられないと感じた方に向けて、ケアをそもそもしなくても良いアイテムの選び方を紹介します。
参考:革財布との付き合いもシンプルに。メンテナンスを最小限にできる財布の特徴
顔料仕上げ
顔料仕上げとは、水に溶けない塗料で革への着色する方法のこと。
この仕上げは、色落ちやキズに大変強いです。覆い隠すように色を塗ってあるため、革の風合いを楽しめないのがデメリットですが、非常に丈夫ですし、メンテナンスもカンタンです。
一般的に安価な革に使われる技法です。あまりにも安い革は、2年ほどで顔料が剥がれてきてみすぼらしいものになってしまう恐れがあります。
おすすめは、ドイツ ペリンガー社のシュランケンカーフですね。(厳密には、染料と顔料で仕上げられているのですが)。エルメスなどのトップメゾンでも愛用される、最高級のものです。
オイルレザー
コードバン、ブッテーロ、ミネルバ・リスシオ、ミネルバ・ボックスといったオイルレザーを使った製品を買うようにしましょう。
メンテナンスをしないなら、ヌメ革の製品を買ってはいけません。
あとがき
予防やケアのためのアイテムをいくつか紹介しましたが、最初に1つだけ。ということであればデリケートクリームをオススメします。
フタをシッカリ閉めておくことで蒸発しません。私の場合は3年持ちました。1年あたり約300円。ひび割れを修理に出すと数千円はかかるためとても割安だと思います。
サッと塗りこむだけのカンタンケア。ファーストステップとしては敷居が低く、長く続けられる最適な一品かと思います。