革には天然素材だからこその、メリットとデメリットがあります。
その基本を知ることで、適切な扱いができ、長く愛用できるはずです。
本ページでは、革の特徴や、メリットとデメリットを紹介していきます。お読みいただければ、革と長く付き合っていく術を身につけることができるはず。
ぜひ参考にしてみてください。
革とは何か
動物の「皮」。人間でいえば皮膚ですね。
この「皮」を、道具として長く利用できる状態にしたものを「革」といいます。
「皮」は生きていた状態のナマモノですから、時間が経てば腐ってしまいます。
そこで、さまざまな加工を施すことで「革」へ作り変えるのです。この工程を「鞣し(なめし)」といいます。読んで字のごとく「柔らかい革」へと姿を変えるんですね。
なめしについては、書き出すと長くなるので割愛します。
興味が有る方はこちらを参照ください。
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革のメリット
手触りの良さ
触れた時の触り心地の良さ、吸いつくような感触。
これらは天然素材だからこそ味わえるメリットです。
人が触れたり、身に付ける素材として非常に優秀です。
上質感、美しさを感じられる
革ごとのさまざま個性が見て取れます。
動物の種類だったり鞣し方によって異なる表情。
いずれにしても、上質で、気品を感じられるのが特徴です。
経年変化(エイジング)を楽しめる
使い続けること、時間が経つこと。
これらによって革は表情を変えていきます。
特に淡色の革は、その変化が顕著。
だんだん色味が深くなり、艶が生まれてきます。
革が好きになる最大の性質といえます。
湿度を吸い、逃す
革は呼吸をすると効いたことはないでしょうか。
これは、吸湿性、放湿度といった性質が革にあるからです。
高価な革靴は、ソールが革で作られています。
これは、蒸れやすい靴の内部から、外に湿度を放出できるメリットがあるからです。
良い匂いがする
私が特殊かもしれませんが、革の匂いが大好きです。
この匂いは、鞣しの際の、油分や染料が元になっています。
これは趣味嗜好によりますので、人によってはデメリットになるかもしれません。
長く使える
革の上質感を安価に実現する、ポリウレタンを利用したフェイクレザーがあります。こういった素材は、数年で表面がボロボロになり、みすぼらしい姿に変わってしまいます。
上質感なものを長く使うなら、革以上の素材はありません。
丈夫、熱にも強い
多少の引っかき傷なら、指で揉むように均せば目立たなくなります。
また、財布を砂利道に落としても多少傷が付く程度で、溶けたりしません。石油を主原料とする化学繊維は、表面を滑ったときの熱で融解してしまいます。
デメリット
水分に弱い
水に濡れることで、色落ち、形状の変化が生じます。
特に水ぶくれが生じてしまうと、元の姿に戻すのは極めて困難です。
多くの革工房で、防水スプレーを推奨しているのはこういった性質があるからです。
考えてみれば当然です。
生きている私たちが持つ「皮」でさえ、長い時間、プールやお風呂に入っているとふやけてしまいますよね。
水分を含みやすい性質を持つため、基本的に水を避けてください。
温度変化に弱い
高温な夏の車内に放置することは避けてください。
革は温度の変化に対する耐性が強くないため、変形を引き起こしてしまいます。
大量生産できない
天然素材である革の元の姿は、動物です。
希少性が高いものはたくさん作ることはできません。
エキゾチックレザーと呼ばれるものや、コードバンなどですね。
革自体がとても貴重なため、数を作れないのです。
また、伝統的な鞣し(ベジタブルタンニン鞣し)で作られる革も大量に流通せず、時期も決まっています。
有名なタンナーを例にすると、イタリアのバダラッシカルロ社のミネルバシリーズ。
時間がかかるうえに、ヨーロッパ特有のバケーションに差し掛かると数ヶ月革が出まわらないことも珍しくありません。
同じものを作れない
革の表情は一つ一つが違います。
そのため、厳密には同じものは存在しません。
人が使っている革製品の表情が気に入って、同じものを買ったとしても、全く同じ表情のものは手に入らないのです。
(これは考えようによってはメリットといえますね)
色落ちする
退色ともいいます。
鞣し方法にもよるのですが、革は新品のときの色味を維持することができません。
極端な例ですが、濡れた布などでゴシゴシすると、その布に色が移ります。
新品当時の色を使い続けたければ、顔料染(顔料仕上げ)された革をセレクトするしかありません。ただし、革の魅力であるエイジングを楽しむことはできません。
エイジングを楽しむなら、染料染め(染料仕上げ)された革を選ぶとよいでしょう。
カビが発生しやすい
革靴でカビが出たという方は多いのではないでしょうか。
天然素材の革は、繊維間にすきまがあり、均一ではありません。
そこに、湿気がこもりやすいため、菌が繁殖しやすくカビが生まれてしまいます。
革靴は数足そろえて履き替える。といった使い方をするのは、革が吸い込んだ湿気を逃すことで、カビの繁殖を抑えるためです。
長年使わずに箱に入れておく、水分にあたるといったことが無い限り気にすることはないでしょう。
例えば、毎日つかうカバンや財布がカビることはまずありません。
「良い革」の見分け方
素材としての革の良さとは
元が生きていた動物の皮ですから、キズや虫刺され、シワなど個体によって見え方が違うの当たり前。1つひとつが、違った表情を見せるのが普通です。
一般的には敬遠されてしまうのですが、実は、キズがある革ほど、革製品の素材としては最高のものともいえます。よく動いた動物の皮は繊維が密で、丈夫さとしなやかさを兼ね備えているため、長く使うアイテムの素材としてはバツグンなわけです。
新品の革でも、毛穴やトラ、血管が見えたりするのですが、良識な皮革の裏付けとも言えるわけですね。
日本人が好む「キズやシワが無い革」は、革自体の性質は良いとは言えません。
キズが少ないとは、自然のものではなく、乳牛や食用といった「美味しいお肉」を作るために育てられた動物です。なるべく運動をさせず、油が乗った動物の皮は、傷は少ないのですが、繊維密度が低いため、伸びやすく堅牢性が低い「革」となってしまいます。
たとえば、こういった革でベルトを作ると、すぐに伸びてしまうため、10年使うことができないんですね。
ですから、一般的には、よく運動させた、ある程度キズが付いた動物の革が、長く使うための革としては最適なわけです。
ところが、キズが多い商品は売れません。そこで、革に「仕上げ」を施すんですね。
- シュリンク加工(シボ加工)
- 型押し加工
- 顔料を使っての、水に溶けない染色で、キズを隠す
- プリント
- 起毛。(ヌバックやスエードといったように革を毛羽立たせる)
例えばシュリンクレザーでNo1と呼ばれる、ドイツのシュランケンカーフは、大変美しい色合いと柔らかな手触りで人気があります。
こういった加工をすると、革本来の風味や表情は失われてしまうのですが、その代わりに、「売れる革」に姿を変えます。いずれも革の滑らかな表情を楽しめなくなってしまいます。
趣味嗜好の話ですから、こういった仕上げを好む人もいるでしょう。それは悪いことではありません。
ただ、革本来の風合いを楽しみたいなら、いわゆる「ヌメ革」が良い革といえます。
キズやシワといった「生きていたときの証」を残してでも、「素材として最高」だからこそ、そのままの姿で使われるわけです。
良いなめしとは
動物の皮を、腐らないように、長く使えるように加工する「なめし」。
この手法も大きく2つあって、良い革とは、タンニンなめしされた革といえます。
タンニンなめし
植物に含まれる「渋(しぶ)」を使って、なめす、伝統手法。
時間、スペース、手間、いずれもかかるため、今日では少ない方法です。
革の特徴である、色の変化を最も楽しめるのがこのタンニンなめしされた革。
時間が経つにつれ、タンニン成分が酸化し、色に深みが生まれてくるんですね。
クロムなめし
クロム金属を使ったなめしで、圧倒的に早くできます。(タンニンなめしが数十日かかるのに対し、クロムなめしは1日で完了する)。
伸縮性が有り、キズや変形に強いのですが、革としての育ちを楽しむことができません。
趣味嗜好によるのですが、タンニンなめしされた革は、何年も愛着をもって使うことができます。しっかりと使い手とともに育ち、変化していく様を楽しめるからです。
革好きであれば、エイジングは魅力の1つでしょう。
塩化ビニールの製品や、プラスチックのお茶碗は、丈夫さではピカイチです。ですが、そういった製品には、なんとなく「美」や「品」、「気持ちよさ」を感じることができませんよね。
革のなめしについてもっと知りたい方はこちらをどうぞ。
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良い染色とは
多くの革製品には、色が加えられています。
この作業は、「染色」といい、この作業を行うことで、革製品に色を定着させています。
この染色においても、良い革を見極めるポイントがあります。
それは、染料仕上げ(水染め)された革を選ぶということです。
染料を入れた桶(プール)に、革を浸けこむことで、革の芯まで色を浸透させる方法です。時間も手間もかかりますし、桶を置くスペースも必要です。さらに革は部位によって厚みが異なるため、均一な色を付けるのが難しいんですね。
ただ、染色仕上げされた革は、革本来の風味がのこり、革が呼吸できるため、吸湿、放湿にも優れています。水に弱いという欠点はありますが、いわゆる「エイジング」による色の変化を楽しめる革です。
一方、顔料仕上げは、革の表面にペンキを塗るような着色。
鮮やかなカラーの製品はほとんどがこれ。キズを隠すこともできるため、日本に並ぶ9割の革製品は顔料仕上げとなっています。
まとめます。
時間とともに育つ、革の風合いを感じられる革とは、「染色仕上げ」された革です。
染色については、もっと細かくご紹介できるのですが、ここでは割愛。
興味があるかたはこちらをどうぞ。
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まとめ
「良い革」を見分ける方法を書きましたが、実際にお店で見分けるのは大変だと思います。
中でもカンタンな方法としては、こんな感じでしょうか。
- あまりにも鮮やかな革は避ける(顔料仕上げを避ける)
- 色に透明感を感じられ、革の風合いが残っている(染色仕上げ)
- 多少のシワや、薄いキズはあって当たり前
なかなか、一目で見ぬくのは難しいと思いますが、いくつも商品を見ていれば感覚的に分かるようになります。
一番の方法は、ショップ店員に聞くことですね。
- タンニンなめしですか?
- 染料仕上げですか?
この質問にYesと答えられたなら、良い革といえます。
あとがき
今日、布や科学繊維といったさまざまな素材があります。
それらと比べて、革が優れているかどうかは、活躍するシーンによると考えた方が良いでしょう。
結局のところ、適材適所だということです。
例えば登山用途で、レザーリュックをチョイスすることはありませんよね。
どんなに革の風合いが好きでも、重量の面では科学繊維には勝てません。
革は変化していきます。デリケートな面もあります。
革を選ぶことで手に入るのは、共に生きていく中での変化。
結果として、素晴らしい経年変化をあなたに見せてくれる作品になります。
そういったストーリーを作る相棒として、革はベストな素材だと思います。
だからこそ、優れた人工素材がカンタンに入手できる今日においても、愛され、第一線で利用されるのでしょう。
以上、革だけの性質や特徴は何?革のメリットデメリットの紹介‥‥でした。