革財布は、3年以上、毎日持ち歩いて使うアイテムです。「美しい財布」をセレクトしたいはず。
有名ブランドの財布なら、デパートに行けばすぐに見つかります。しかし、売っているのはブランド品ばかり。ブランドにこだわらず、色、素材、フォルム、クオリティなどの美しさに優れた財布を探そうとすると、なかなか難しい。
本ページでは100以上の財布を利用してきた財布マニアの私が、見て、触れて、使ってきたなかで、以下を条件に「美しい財布」をまとめました。
- 色が美しい
- フォルムが美しい
- 仕立てが美しい
- 日本の上質な革財布
参考にしてみてください。
色・表情が美しい財布
ここで紹介するのは、独特の「色」、「表情」を持つもの。
神秘的な美しさを持つ財布をセレクトしてみました。
Crevaleathco(クレバレスコ)の財布
Crevaleathcoは職人 西森氏がデザインから制作まで一貫して行う個人工房です。
まず、素材が凄い。世界最高峰のコードバンをはじめ、リザードやクロコダイルなど、上質なレザーを採用しています。
素材だけじゃない。細部まで極めて精密に、美しく仕上げられています。内側のポケットまで、ステッチや捻が美しい。
コバも丁寧に磨かれています。
YUHAKU(ユハク)の財布
YUHAKUは、独自の染色技術を得意とする革工房です。
ほぼすべてのブランドは「革の染色」をすることはなく、入荷した革をそのまま使って財布をつくります。そのため、複数のブランドで同じ革・同じ色の財布がラインナップされるわけです。
しかし、YUHAKUは違います。色を付けていない素の革(ヌメ)に、YUHAKUが彩りを加えています。
数種類の染料を重ねているのです。色あいを見ながら手染めすることで濃淡をコントロールしてるんです。奥行きのある透明感は、YUHAKUの独自技術です。
光を取り込んで、異なる表情が現れる。どんなシーンでも色気を作り出してくれます。
他のブランドが同じ表現を作り出すことはできないんですね。
YUHAKUは多くのシリーズを出していますが、私のおすすめは2つ。
ベラトゥーラと、コードバンです。
二つ折りもありますが、美しさを最大限味わえる長財布がおすすめです。
ベラトゥーラ 束入れ
ベラトゥーラは、色の濃淡がハッキリとした絵画的な色味が特徴。財布の中心から外に向けて、深みを増していくグラデーションがとても美しいお財布です。
カラーラインナップも豊富ですから、お気に入りが見つかるはず。
コードバン 束入れ
コードバンは、素材そのものが持つツヤ、光沢が素晴らしい、革の王様。さらに、YUHAKUの染色が施されることで、透明感と色気がグッと増します。
光沢のある財布はたくさんありますが、美しいグラーデーションが楽しめるのはYUHAKUの財布だけです。
フォルムが美しい財布
財布は、「ありきたりなカタチ」になってしまいがちです。
ここでピックアップするのは、仕立てを工夫して、独特のフォルムに仕上げた財布。
見て楽しめ、触って気持ちいい財布たちです。
safuji 長財布
safujiは日本の革工房。
ご夫婦で立ち上げた、比較的新しいブランドです。
特徴は、フォルムが美しいこと。
なんというか、やわらかさや温かみを感じる、ふんわりとした美しさです。
そう感じるのは、財布の外側にほとんどステッチが無いから。safujiは手縫いにこだわっていて、なるべくステッチを見せないつくりになっているんですね。(ほとんどの財布はミシン縫いのため、ステッチが表面に見えるものです。)
そのため、革の風合いを最大限楽しめるのです。
見た目だけでなく、触れたときも気持ち良いんです。丸みをおびたフォルムだから、どこに触れても、革のやわらかく、吸いつくような手触りを楽しめます。
フォルムが美しいだけではなく、「使いやすさ」もポイント。
「小銭の使いやすさ」では、本作を超える財布は無いと思います。ガバッと大きく開くため、コインを探しやすく、取り出しやすいんですね。
所作 ロングウォレット
袱紗(ふくさ)をモチーフにしてデザインされた財布です。
独特のフォルムが目を引きます。
凛とした印象を受けるデザインといえば、本作を超えるものはありません。
一般的な財布は20を超えるパーツで作られています。
一方、本作は1枚の革とボルト、ナットの3つのみ。
上質な日本の一枚革を折りたたみ、留めるだめのシンプルなつくり。
縫い目がまったくない表情は、革そのものの美しさを最大限楽しめます。
桶(おけ)に漬け込むことで色を付ける染料仕上げのため、革の芯までしっかりと色が浸透しています。
表面をベタ塗りするもの(顔料仕上げ)には無いメリットがあります。
革が呼吸できるため、カビが発生しにくいんですね。
結果として、割れや剥がれといったダメージが起こりにくいのです。
革はタンニンなめし、かつ染料仕上げされたもの。
使い込むことによる表情の変化、いわゆる「エイジング」もしっかりと楽しめます。
この財布の一番の特徴は、財布を取り扱う所作がとても丁寧になること。
お会計をするシーンで、お金を大切に扱っているように見えるのは、所作だけの特徴でしょう。
WILDSWANS SURFS
WILDSWANSは丈夫で長持ちする財布で有名です。
WILDSWANSの財布は、耐久性を大事にしているため、革が厚めでボリュームを感じるものばかり。男らしく、無骨な印象を受けるものが多いんですね。
そんな中で、スリムで美しいと感じるのがSURFS(サーフス)です。
ゆるやかなカーブを描いた美しいラインが特徴。
カジュアルになりすぎず、フォーマルでも使えるバランスが見事です。
ちょっとした遊び心を感じるデザインで、どんなシーンでも活躍しそうです。
このデザインは使い勝手にも活かされています。
指のはらで触れたときのアタリがとても優しく、開けやすいんですね。
まさに、造形美と機能美をもつデザインです。
また、薄いのも特徴の1つです。
スーツの内ポケットに収納できるもの。
というコンセプト作られているため、厚み15mmとスリムな仕上がり。
一般的な財布と比べて5〜10mmほど薄く作られています。
内ポケットだけでなく、さまざまなポケットで快適に収まるんですね。
スリムながらも、コバの美しさや、丈夫さといったWILDSWANSの特徴はしっかりと活かされています。
コバ磨きには、一般的な磨きの2倍の時間をかけているとのこと。
WILDSWANSのコバを見てみると、革を縫製しているのに、一枚革のように見えます。
定評があるのも納得の美しさですね。
SURFSは丈夫で長持ちします。
使われている革は、ベルギーのマシュア社の「サドルアップ」。
ハリがあり、丈夫な革。
長く使うことでしっかりとツヤが生まれてきます。
使用して10年以上になるサドルアップのエイジングが公開されていることは、丈夫さの裏付けとして十分です。
薄くても重厚な存在感があるため、ビジネスシーンでも力強さを発揮してくれます。
PELLE MORBIDA ラウンドファスナー
PELLE MORBIDA(ペッレモルビダ)は「LEON」や「OCEANS」をヒットさせた干場義雅氏がディレクターを務めてるブランド。
メンズ用の長財布は、スタイリッシュだったり、無骨なものはたくさんあります。
ビジネスユースでの力強さを演出するため、存在感を主張するデザインのものが多いんですね。
一方、ペッレモルビダの財布からは、無骨な印象をいっさい感じません。
優雅さ、品の良さを感じます。
「船」をモチーフにしたという曲線は、ペッレモルビダの代表的な意匠です。
内装のカードポケットにもこのデザインが施されていて、取り出しもスムーズ。
財布は2種類の革でラインナップされていて、異なる印象を与えてくれます。
1つはシボが施されたシュリンクレザー。
姫路で作られた、ペッレモルビダのオリジナルレザーです。
シュリンクレザーのメリットはキズが目立ちにくいこと。引っかきキズならシボにかくれてしまいます。日本に流通する革の90%は、2〜3日で作られる量産品。一方、こちらは40日もの時間をかけて作られています。
もう1つはサフィアーノ。
細かい格子状の型押しによって、クールでスマートな印象です。
こちらもキズに強く、目立ちにくい特徴があります。
ブライドルレザーやコードバンでできた、力強さやツヤ感とは違った美しさです。
こういった素材の美しさとは違う、デザインによる美しさが感じられる逸品です。
上品さ、やわらかさ、優雅さ。
これらの演出がとても上手な財布といえます。
美しい素材を楽しめる財布
BAHARI ガルーシャ ラウンドファスナー
BAHARIは、ガルーシャ(エイ革)を使ったアイテムをラインナップしています。
ビーズ状の粒とパールのようにキラキラと輝く光沢が特徴。パールのような白い水玉模様から、海の宝石と呼ばれれています。
この輝きはコーティングしているわけではなく、ポリッシュすることで生まれるもの。
人工的なものではなく、素材そのものの美しさです。
立体的でありながら、触れるととてもサラサラすべすべなのに驚きます。
また、素材の強度もずば抜けています。
一般的なレザーよりも、カッチリと固く、耐久性にも優れている。さらに水やキズに強いため、美しい表情を長く楽しめます。たとえば、ペットボトルと一緒に入れて水滴がついても、問題ありません。シミにならないからです。
古くは武具に使われていたことからも、過酷な状況に耐える素材ということが分かります。
正倉院に1000年前のものが今も展示されていることは、丈夫さの裏付けとして十分でしょう。
エイの革は、ぐにゃりと柔軟に曲がるのに、固くて凸凹があり、加工が難しいもの。ミシンの針も折れる職人泣かせのレザーのため、市場に出回る数が圧倒的に少ないんですね。とても希少なアイテムなのです。
中央に見える大きめの斑点は「天眼」、「スターマーク」と呼ばれるもの。エイがラッキーフィッシュとも呼ばれているのは、この神秘的な特徴が理由なのかもしれません。
もともと高級な素材なうえに、このスターマークは、1匹につき1つしか取れない希少な部分。つまり、BAHARIの財布ではまるまる一匹のエイを使っているわけです。
それを丁寧にポリッシュ(研磨)することで宝石のような美しさと滑らかさを作りだしています。
このポリッシュの度合いによって光沢と色が変わり、デザインに活かされています。
均一な表情ではこんな感じ。ガルーシャの特徴である粒感をそのまま活かた仕上げです。
一方、ポリッシュをかけたものがこちら。
光沢が増し、ツルツルとしたさわり心地になります。
スターマークがより映えるデザインになっていますね。
牛革とは異なる表情を楽しめるのは、エキゾチックレザーならでは。
希少なものですが手が出しやすいプライスなのも嬉しいところ。
美しい素材はたくさんありますが、ガルーシャからは妖艶な美しさや、神秘性を感じます。
人と違う、美しい財布をセレクトしたい人は、候補として考えてみてはいかがでしょうか。
もっと知りたい方はこちらをどうぞ。
キプリス 長財布 藍 -AI-
藍いろは「JAPAN BLUE」とも評される色。
「青は藍より出でて藍より青し」という言葉が古くからあるように日本の伝統色です。
世界を見てもこれほど深く鮮やかな青はありません。
藍染の染料である「蒅(すくも)」は徳島で作られたもの。
それを京都の伝統職人の手で、定着させたものです。
ストレートなラインが見た目の印象をグッと引き締めていますね。
参考 素材の持つ美しさでセレクトするならこちら
革を作るタンナー。
その数だけ、表情があります。
コードバンやミネルバといった銘革が親しまれているのは、
素材そのものが素晴らしいからです。
それぞれの革を使った財布をまとめていますので、革からセレクトしたい方はご覧ください。
あとがき
素材、縫製、カラー。工夫をこらした財布は、独自の美しさを楽しめます。
人と違う、美しい財布を持ちたい方におすすめの逸品を厳選してみました。あまり見たことなが無いものばかりだったと思います。まわりに使っている人はほとんどいないでしょう。
ルイビィトンといった高価なブランドにも良いところはあります(塩化ビニールで出来ていて丈夫。5年以上使えます)。
ただ、「珍しい」、「美しい」をたいせつにする人には、日本の上質な革財布をセレクトしてほしいと思います。